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戦国ダンジョン ~現代人は信長の足元で、歴史支配の夢を見る~  作者: 斎藤 恋
第二章:千秋季光救済作戦

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第36話:論功行賞

───尾張国:古渡城



戦勝の熱気が渦巻く大広間にて、織田信秀による論功行賞が行われていた。

とはいえ、得た領地は、ほとんどが千秋家のものであることが確定しており、恩賞もそう多くはならないのではあるが・・・



「季光、大儀であった!」

信秀の声が響き渡る。



平伏するのは、"熱田大宮司 千秋季光"と"信秀の嫡男 吉法師"である。



「其方が築いた『八剣砦』、そして持ち込んだ『連弩』。あれこそが勝利の要であった。

その功に報い・・・・我が嫡男 吉法師と、其方の娘 みやびとの婚約を申し渡す!」



その発表に、古渡城の大広間がどよめいた。



織田家の次期当主と熱田神官の娘の婚姻。

それは千秋家が織田の中枢に組み込まれることを意味する。


だが、その決定に噛み付く者がいた。



「殿! お待ちくだされ!」


林美作守通具。

筆頭家老・林秀貞の弟であり、古き良き武家の秩序を重んじる男だ。


「千秋家との縁組、断固反対にございます!

相手は由緒ある藤原の血筋とはいえ、所詮は『社家』風情!

織田の次期当主の正室に迎えるには、いささか釣り合いませぬ!」



美作の顔は、既に嫉妬で赤黒い。

が、彼の本当の狙いは千秋家ではなかった。


ほどほどの能力ながら、林家の次男という立ち位置を使い、筆頭家老の地位を狙っていたのだ。

そのためには、千秋家に上がられるのは、美作にとって困る事態なのだ。



「それに、今回のことで如何な功績をなしたのかは知りませぬ。しかしながら、千秋家の影響力が強うなりすぎまする。

それに、吉法師様についても、何を成したのかは知れませぬが、世間では未だ尾張うつけとさえ評される始末!今のまま婚姻というのは織田の評判に関わりまするぞ!」



美作は、ここぞとばかりに声を張り上げた。

敗戦後であれば、この声に同調する向きもあったかもしれない。


しかし、今回の戦は吉法師と千秋季光の功績によって成し得た様なもの。

それも、恩賞でさえ、千秋家の一存から出ると決まっているのだ。


信秀でさえ配慮しなければならない状況である。


如何に、千秋家が許しても、織田が許すことはできない状況であったのだ。



要は、やりすぎだった。



「美作、言いたいことはそれで全てか」



信秀の冷たい声が響く。

美作以外の周囲の者は、既に居住まいを正していた。


林秀貞も、弟がやらかしてしまったことに気付いたが、時すでに遅し。

周囲の視線も、どんどんと冷たいものへと変わっていく。



「・・な、なんだ・・・?お、いえ、私は言うべきことを言っただけにございますぞ!あの様な者に、織田家を任せるなど・・」


「もうよい。秀貞。」


「はっ」


「謹慎させよ。二度と外に出すな。出さなければ許そう」


「はっ・・」


林秀貞は、信秀からの冷たい怒りの声に冷や汗を流す。


「(あの馬鹿者め!私まで巻き込むな!!)某も、謹慎させていただきたく願います。」


「一月で良い。それ以上はいらぬ。主は、まだまだ役に立ってもらわねばならんのだ」


「あ、ありがたき幸せ・・・(首の皮一枚繋がったか・・・)」



「あ、兄上・・・!」


「弁えろ!愚か者が!!・・・皆々様、お騒がせして申し訳なく。某はひと足さきに失礼せていただきまする。それと、今回の評定にて決まることにはこの林、全面的に賛同とさせて頂きまする。・・・では、失礼を」



と、林秀貞は、弟の美作を引き連れて(文字通り)、そのまま城へと帰っていった。

以降、林美作を見た者はいない。


今回の戦に参戦していた将たちは、軒並み吉法師と千秋季光を認めており、彼の気前の良さに感謝すらしていた。


千秋家は、


・八剣砦周辺の砂鉄採掘権

・八剣砦そのもの

・八剣砦周辺の寺社を熱田のみとする


これらを条件に、それ以外の権益は全てを放棄したのだ。



つまり、


・周辺の年貢収入

・砂鉄以外の採掘権

・商人たちに掛ける運上金な


これらの権益は、織田信秀の差配一つで振り分けられることとなった。

このことは、諸将にも通達されており、千秋と吉法師の婚姻を妨げるような向きは、一切起きようがなかったのである。



そんなところに、林美作の発言だ。

信秀だけではなく、他の諸将も怒りを向けるに決まっていた。


なんせ、この婚姻が潰れれば、参加した諸将の恩賞も無くなっただろうし。




「あの愚か者め・・・。野心が顔に出過ぎなのだ」


「全くだな。あれで智者を気取っておったのだろう?馬鹿にするにも程があるわ」


「それに比べ、吉法師様はすごいのぉ・・」


「そうさな、ワシもあそこまでとは知らなんだわ。」


「そうじゃの、今も泰然と構えておるわ」


「うむ。大将としての風格が出てきておるのだろうよ」


などと、諸将たちは、先日までうつけだなんだと言っていたにも関わらず、既に手のひらを貸したように評価を一変させていた。



「(勝手な奴らよ・・)」


吉法師は、胸中ではそう考える。

表には出さないが、評価をコロコロと変じさせるこの者たちには、信をおけぬな、と最底辺の評価を下していたのだった。




「多少、騒ぎがあったが・・。吉法師と千秋雅との婚姻に反対の者はないな?」


「「「ありませぬ!」」」


「よし。では、また時期を見て婚姻を執り行う。今は婚約関係ということだ。時期は、吉法師の元服とともに行うこととしよう。」


「畏まりました」


「・・・」


季光と吉法師は、信秀のその言葉に頭を下げた。

そうして、織田家と千秋家の紐帯はさらに強く結びついたのであった。






────────────────────────────



───論功行賞の評定から、しばらく後



信秀は、津島の一室で、とある津島商人と向きあっていた。


彼は堀田道空ほった どうくう

津島を代表する商人にして、数寄者としても有名な文化人である。



湯の沸く音が、茶室内に鳴り響く。

茶室とはいえ、この当時はまだ、後世のように決まりきった形の茶室は存在しない。

単に、茶を飲む部屋というだけである。



「京の様子はどうだ?相変わらずかな?」


「ふむ・・・。まぁ荒れておるといえばそうでしょうなぁ。しかし・・・近頃はどうも、妙なことに・・・・」


道空は、少し首を傾げながら苦笑する。


「妙なこと?」


「へぇ。それがどうにも、近頃では京や堺の商人が"宝探し"に夢中になっとりましてな」


「宝探し、だと?堺の商人が?」


「えぇ。とはいっても、金銀財宝が埋まっとる島をーとか、そないなもんやあらせえへんのです。

どうも、最近市に出回っとった"雪のような塩"や"透き通るようなギヤマン"。後は、炻器せっきですな。

この様なもんの"原料"がまだ眠っとるんやないか、とそういうことらしいですわ。」



「原料、なぁ・・・。その塩やギヤマンの出所は分かってるのか?」


信秀のその問いに、道空は首を振る。


「いや、それがさっぱりで。堺だけやなく、ウチの津島や熱田の方も関わっとるらしいんですが・・・、イマイチ場所がはっきりしません。」


「ほぉ・・そうなのか?」


「えぇ。恐らく、とはつきますが、南蛮人か明人が持ってきたもんを、色々理由つけて売り捌いとるんやないかとみとります。」


「なるほどな。利権を取られぬように、商人たちも必死というわけか。」


「えぇ、そうですな」



話が進み、信秀と道空は一服する。



「で、ここからが少し面白い話なんで」


「ほぅ?どのような?」



すこし笑いながら、信秀も道空のノリに付き合う。



「実は、その騒ぎで、畿内の護衛料が高騰してますのや。それも、5年前からすると、既に5倍にはなってますな」


「5倍とは・・・凄いな。」


「えぇ、そのせいで、京の公家さんは、献金のための行脚にもマトモに行けぬそうでしてな。山科卿が難儀しとると聞き及びましたわ。」


「なるほどなぁ・・・。確かに貧乏公家に5倍の護衛料は厳しかろうな。」


「えぇ、そのようで。」


「しかし・・・」


信秀は、それだけ呟くとそのまま静かに黙り込む。

道空も、この仕草で、信秀が考え込んでいると分かっているために何も言わない。



「その山科卿だったか。・・・・会いたいな。手配できるか?」


「えぇ、それくらいなら構いませんが・・・。公家ですぞ?お会いになるんで?」


「あぁ、会う。今の当家には必要な方かもしれん」





「なるほど・・。まぁ、手配くらいなら容易いですわ。やっときます」


「うむ。感謝する。」





そうして、織田信秀は2年遅れで公家の山科言継と出会うことになる。

しかも、旅程そのものが織田家の配慮という最大の恩をかけた形で、だ。


このことがどのような変化をもたらすのかは、誰も知らない。




────────────────────────────



───御霊蛇



「ふむ・・・これはちと予想外じゃな・・」



御霊蛇は、ダンジョン産品を出したことで、既に影響が出ているということに驚愕していた。

影響は出るだろうとは割り切っていたが、思いの外大きい反応に、驚きを隠せなかったのだ。



「・・・今少し慎重にいかねば、制御できん様になるな・・・・・」


御霊蛇は、その活動をさらに戒め、隠匿の向きをさらに強めていくことに決める。

しかし、既にさまざまなものが表には出ており、御霊蛇の予想より遥かに早く、その手綱は手を離れることになる。



そのことは、御霊蛇さえもまだ知らなかった。



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