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戦国ダンジョン ~現代人は信長の足元で、歴史支配の夢を見る~  作者: 斎藤 恋
第二章:千秋季光救済作戦

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第29話:八剣砦建設



───天文13年(1544年)9月:夕方


美濃尾張国境:木曽川


夜の空気は冷たく、川の水面を渡る風が湿った土の匂いを運んでくる。

夕刻、木曽川の川面を、数艘の船が静かに滑るように進んでいた。



生駒家宗の手配したその船団に乗っているのは、千秋季光率いる数百の将兵と、大量の"建材"だ。

船首に立つ季光は、暗闇の向こうに広がる対岸、美濃国・八剣やつるぎの辻を凝視していた。



「・・・見えませぬな、敵影は」


「うむ。完成前に攻めて、こちらの心を折ろうとでも考えとるのだろうな。性格の悪いことだ」


季光の隣で、頭からすっぽりと厚手の布を被った長身の人物が答える。


御霊蛇みむすびだ。


彼女、いや、彼のその異様な気配を隠すため、そして正体を悟らせぬための布を被っている。

だが、その下にある金色の瞳は、夜闇など存在しないかのように周囲を見通していた。



「ここが主の正念場ぞ、季光。上陸さえしてしまえば、こちらの勝ちじゃ」


「はっ。・・・では手筈通りに」


「うむ。まずは、ダンジョンを建てる場所の制圧じゃ。」



船底が、砂を噛む微かな音を出した。

上陸し、木曽川向こうの湿地帯を進んでいく。


この辺りは、昔から洪水によって土砂が運ばれ堆積した湿地帯だ。

大小様々な湿地帯や池沼が広がっている。


そんな土地の中央に、私たちは城を、いや、砦を建設しようとしているのだ。


「急げよ、まずは準備だ。ダンジョンを建てるから囲いを作れ。誰からも見られぬように囲いを作るのだ。」



所持した最初の建材で、そんな湿地帯のひとつに囲いを立てていく。

湿地の中に砦を建設するなど、普通ではあり得ない。



地盤が弱すぎて、壁を立てることすら難渋するからだ。

実際、今も、壁を立てかけるのに苦労している。


しかし、それは結板を組み合わせることで回避。


広めの四角い囲いを組み上げて、それを周囲に配することで無理やりに壁を作る。

範囲は、おおよそ20m四方。大体80枚近い結板を繋ぎ合わせて、壁が完成する。



「よし、ではもう一段高くしろ!」


1m×2mの結板を繋ぎ合わせ、壁を作った後は、さらに縦にも結板を組んでいく。

これには、兵たちの身長が足りないので、御霊蛇が用意した大型の脚立も用意されていた。


これで、高さは4m。


ほとんどの周囲からは、覗き込めないような壁が完成した。



「監視班!動きはどうだ?!」



季光が、望遠鏡を用いた監視を命じていた者に、尋ねる。


「はっ!未だ、兵の動きはありません!」


「そうか・・・、やはり2日か3日後を狙うつもりだったか。」


「だろうな。利政のような者なら、それが一番効果的だと踏むだろう。しかし・・・くくく」


御霊蛇は、季光の独白を聴き、それに応える。

斎藤利政も、そんな自身の知将としての性格が仇になるとは思わないだろう、と笑った。


「いや、私が利政めでも、同じような失策をするでしょう。流石に一夜で建つとは誰も思いませんよ。」



墨俣一夜城ならぬ、『八剣一夜城』



現代(2025年)に匹敵、あるいは凌駕するような技術が、美濃の土地に砦を用意したのだ。

兵たちは、湿地帯へと飛び込み、瞬く間に壁を建造した。


このとき、この地に到着してから未だ四半刻ほど。

それだけの期間で、壁が完成する。


だが、遠くから見れば、単に囲いがしてあるようにしか見えないだろう。


実際に、それがちゃんとした頑丈な壁であると誰にわかるのか。



杭の打ち込みはまだ行われていない。

湿地の泥が、未だにそこらじゅうにあるからだ。




「ん、では始めるぞ。」



御霊蛇は、周囲の者たちに声をかける。

八剣ダンジョンの建設が始まる。


彼は、ダンジョンメニューを開き、その項目を選択する。



「サブダンジョン生成!」


その声と共に、新たなダンジョンが八剣の地に造られていく。

全てを建設するには、あと8時間は掛かる。


だから、御霊蛇は、第一層から四層までの枠と、第四層の転移の間とそこまでの通路だけを最初に作った。

これだけだと、完成までは四半刻(30分)ほどだ。



その間、泥が掘り進められて、集められていく。

これらの泥は、すべてダンジョンへと吸収される予定だ。


通路横には、泥を廃棄するための場所も用意されている。




───四半刻(30分)経過




「よし!最低限の部分はできたぞ。運搬班!」


御霊蛇は、最低限のダンジョン設備が完成したことを周囲に伝える。


通路と転移の間と泥の廃棄場所。

その最低限の建設が完成した。



予定していた時間通りの進行だ。

早くもなく遅くもない。



資材などの運搬を担う運搬班が集まり、「行ってまいります」の一言とともに、ダンジョンを経由して熱田の地にまで資材を取りに行く。

ここから、熱田神宮まではおおよそ8里(30km)ほどの道のりだ。


それを、数百mへと変える。

しかも、今は魔物も出ていないためにこの上なく安全な道のりだ。


そんな道を越え、運搬班は熱田の地から、食料や資材を次々に運んできた。

資材が届く頃には、一帯の泥は少しずつ減ってきている。



それもこれも、御霊蛇がもたらした、脚立・円匙えんぴ(シャベル)・猫車などの、新たな道具の効果も大きい。

無論、それ以外にもダンジョンでの訓練成果も大きく影響している。


この短時間で、砦周囲から、瞬く間に泥がなくなる程度には、砦建設が進んでいたのだ。



ダンジョンの周囲からも、ダンジョン建設と同時に湿地の泥が消失している。

これは、ダンジョンの吸収効果によるものだが、これによって、硬い地盤がどこなのかが判明したのは、地味に大きい成果だったと思う。



そうして、ダンジョン周囲からだけでなく、壁の内側からは、全ての泥が排出される。

ここまでで、到着からおおよそ一刻。


辺りは既に暗闇に覆われつつあるが、作業は止まらずに進んでいく。



「篝火をたけ!」



季光の掛け声と共に、灯が用意され、夜間の建設が続く。


「御霊蛇様!来ました!」



そんな声と共に、みやび率いる一行も、食事や資材を運んでここまでやってきた。


「うむ、今日も元気だな。では、おカネ、みやこたちを頼むぞ?・・・権六!浅井権六!」


俺は、みやこやおカネに声をかけると、浅井を呼び付ける。



「はっ!権六、参りました。御霊蛇様、いかがなされましたか?」


「うむ、お主には、こやつらの手伝いと警護を頼もう。あと、この子らは適当なところで切り上げさせよ。ダンジョン内に戻せばそれで良い。」


「はっ、畏まりました。・・・感謝いたします。」


浅井は、一言、御霊蛇に感謝を述べ、みやこやおカネたちと共に資材運びを行っていく。




外壁は筏で足場を組んで、少しずつ作られていく。

泥も排出されていき、外壁は結板を組み、ボルトで止めるだけの簡単な構造だ。


これだけで、外からは何もできない頑丈な壁が出来上がる。

軽いために持ち上げればいいと、知っていれば思うかもしれないが、それは泥の排出後に、各場所に杭を打って対応する。



こうして建設は進んでいき、翌朝には、高さ4m:横75m四方 全長300mの壁が完成した。


壁には狭間もあり、そこから矢を射ることも可能だ。

そして内部には、これまた御霊蛇が用意した重量級の連弩クロスボウと中量級の連弩クロスボウが用意されている。



中量級の有効射程は、およそ150m

和弓や鉄砲(火縄銃)の有効射程が、80m・200m


一見、和弓よりは優っていても、鉄砲から見れば劣っているように見えるだろう。

しかし、その連射性能が全く違う。


中級連弩クロスボウは、2〜3秒で次の発射が可能だ。

鉄砲、火縄銃は、熟練者でも20秒は必要になる。1分間で1、2発が限度なのだ。


和弓も、連射性という意味では匹敵するが、飛距離が及ばない。

最大射程は、400mはあると聞くが、実際には飛ぶというだけだ。

それに、山なりに飛ぶから、対応できる人間はなかなか多い。


それと比較すると、直線運動で飛んでくる鉄砲や連弩は、避ける躱わす盾などで受け止めるといったことが難しい。


凄まじい射速で飛んでくるそれらは、人の反射神経で対応するには速すぎるからだ。


さらに、重量級連弩は、さらに射程が上がる。


重量級は、ほぼ据え置き方ではあるが、有効射程300mだ。


これはもう、鉄砲より酷いと言える。

大砲クラス。

小さいバリスタといっても過言ではないだろう。




「これだけあれば、まず落ちんな。よし、では後は頼むぞ?季光。」



建設が完了し、防衛の為の兵器が各所に備え付けられたのを見た俺は、眠そうに目を擦っているみやこたちと共に、熱田ダンジョンへと帰っていった。


まだ、信秀に見つかるわけにはいかないからだ。



吉法師(信長)も、途中で見学に来ていたが、完成間近になると早々に立ち去っていた。


こうして、八剣の一夜城は、その姿を美濃との国境に現したのであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


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