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戦国ダンジョン ~現代人は信長の足元で、歴史支配の夢を見る~  作者: 斎藤 恋
第二章:千秋季光救済作戦

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第22話:化身



───ダンジョン第一層:早朝


『・・・ふむ。造形は完璧じゃな』


俺は、ダンジョンの機能で作り出した水鏡に、自分の新たな姿を映していた。


昨日、ついに実行した【化身創造】。

それによって生まれた、俺の肉体だ。


身長は六尺(約180cm)。

この時代の平均的な男よりも頭一つ抜けて大きい。


肌は、日焼けとは違う、生まれつき色素が濃いような薄い褐色。

そして、腰まで届く長い髪は、黒に近いが光の加減で赤く輝く濡羽色だ。



『ちと、作りすぎたか・・・?』


鏡の中の顔立ちは、あまりにも整いすぎていた。


左右完全対称シンメトリー


毛穴の一つ、シミの一つすらない陶磁器のような肌。

人間が持つ「揺らぎ」が一切ないその顔は、美しいというよりは、精巧に作られた能面や人形に近い不気味さを漂わせている。


そして、その瞳。

白目がなく、黄金一色に染まった眼球の中央に、爬虫類特有の縦に割れた瞳孔が鋭く光っている。


俺は自分の頬を撫でる。

指先に触れるのは、人間の皮膚の感触の中に混じる、極小の鱗の硬質な手触り。


頬から首筋にかけて、小さな穴──ピット器官(熱感知孔)が並んでいるのが分かる。


『よし、あとは・・・』


俺は袴の裾をまくり上げ、股間を確認する。

そこには、女性的な膨らみを持つ胸とは裏腹に、立派な"男の象徴"が存在感を放っていた。


『うむ。神といえば、女性の体に男の象徴じゃろ。ホトは要らぬの。ワシも元男じゃし。』


"完全なる生命"としての神の肉体からだ


俺は満足して袴を下ろし、一層の蛇像の前にそのままごろ寝した。


冷たい石床の感触が、体全体に伝わってくる


「(あぁ、感覚があるというのは素晴らしい)」





───数刻後



ザッ ザッ・・・

季光と四郎丸が、いつもの鍛錬にやってきた。



「・・・? 四郎丸、あれを見ろ。知っているか?」


「あ・・誰だろう? 女の人・・・?」


「お前も知らんか・・侵入者か?」


二人は、蛇像の前で眠る"異形"に気付き、足を止める。



俺はゆっくりと起き上がり、二人を見る。



180cmの長身。

薄褐色の肌。

そして、感情の読めない黄金の蛇目。



「貴様、何奴だ! 此処は神域ぞ!」

季光が即座に刀に手をかけ、四郎丸を背に庇う。


無理もない。

今の俺は、戦国時代の美意識──色白で小柄、お歯黒をしたような女性像──からは、あまりにもかけ離れている。


南蛮人とも違う、人外の気配。

だが、二人は同時に動けなくなっていた。


俺の全身から無意識に漏れ出る魔力と、生物としての"格"の違い。

そして何より、そのあまりにも整った顔の造形に、視線を逸らせないのだ。


「まさか・・御霊蛇様?」


四郎丸が、俺の正体に勘付いたらしい。


「え!?まさかこの方が?」


御霊蛇を"蛇"だと思い込んでいたということもあるのだろう。

季光は四郎丸のその反応に驚いていた。


そんな二人の様子を、両の目とピット器官を通して眺めながら、ニヤリと笑った。


「よぉ分かったの。確かにワシが御霊蛇じゃ!四郎丸、季光!この身体では初めてじゃの!」



「「っ!?」」


聞き覚えのある口調。

四郎丸の中で、脳内に直接響く念話の声と、空気を震わせる肉声が重なる。



「み、御霊蛇様・・・!?」


「神が・・人の姿をとられたというのか・・・!」



二人はその場に崩れ落ちるように平伏する。

その震える背中には、畏敬の念がありありと浮かんでいる。



「面を上げよ。堅苦しいのは好かん!そんなことより、飯はないか?長いこと肉の体では食っておらなんだからのぉ、早う何か食いたいのじゃ!」


俺は自分の腹をさする。

吸収ではなく、この肉の口で食事がしたくてたまらないのだ。


舌先で、喉で、あるいは鼻で。

味覚という全てを味わい尽くしたい。



「は、はい! 直ちに用意させます! 何かの肉に、白飯でよろしいでしょうか!」


「うむ、玄米でも良い、細かいことを気にするな。・・・それとじゃな」



俺は、平伏する季光の頭を見下ろしながら、重要な注文を付け加える。


しゃくをする女子おなごはおらんのか?」


「・・は?」

季光が呆けた顔を上げる。



「ほれ、むさ苦しい男だけでは、アレじゃろ?酌をするものがおった方が華があるじゃろ!

そうじゃのう・・・未婚の娘も悪くはないが、やはり所帯じみた“若妻”が良い。

家事に追われ、少し荒れた指先など最高じゃな。あの生活感のある柔らかさが、わしのこの硬い肌には心地よいのじゃ・・」



「・・・」


「あるいは、まだ無垢な童女わらめの、ふにふにした小さな手で酌をされるのも一興。

あの乳臭い匂いと、懸命に徳利を持つ姿・・・たまらんのう」



俺は自分おのれの"性癖"を早口で語りながら、恍惚の表情を浮かべた。


それを見て季光と四郎丸は、ポカンと口が開いたままになった。



「(・・・四郎丸。これ本当に御霊蛇様か?この方、かなり俗っぽいのだが・・・)」


「(え、えっと、話し方とお声の調子からして間違いない、とおもいます・・)」



ボソボソとなにやら二人の声が聞こえた気がしたが、俺は無視する。


神とは、欲望に忠実なものなのだ。




────────────────────────────


「お、おぉぉぉぉお!これじゃ、これじゃよ!」


あれから俺たちは、四郎丸たちが住む熱田の自宅の方に移動した。

今日は、訓練を中止することになったのだ。



その後、季光は下女たちに指示を出し、俺のための食事を用意する。

時間的に昼頃ではあったが、ここでは昼食というのはあまり食べないらしく、用意するのに多少時間がかかった。


そうして用意されたのが、玄米と味噌汁だったのだが。

その味だけで、俺は感動して箸が止まらなくなったのだ。



「・・・ぐすっ・・・すん」


涙が、涙が止まらない。

久しぶり、本当に久しぶりの味覚に、俺は涙が溢れ出した。


「み、御霊蛇様・・?」


「美味い・・。本当に美味いのじゃ・・。お主らにはわからぬかもしれぬがの。

こうして飯を食えるというのは、本当に有難いことなのじゃぞ?」


「は、はぁ・・」


「ワシはの、肉の体を失っておった。あのダンジョンで吸収しておったのも、ワシ自身というより"あの場所"が食っておったというのに近い。

じゃからの。吸収されて魔力が体に行き渡ることはわかっても、飯の味なんぞ欠片も分からんかったんじゃ・・・」


「・・・」


「無味乾燥なあの感覚。飯の楽しみなど皆無であった。もう何年かあの場所で閉じ込められておったなら、狂うておったやもしれぬ。いや、既に狂っておったのかもな・・。」


俺は、あの暗い暗い地獄での時を思い返す。


「そこをな、四郎丸が救ってくれたのじゃ。光を見せてくれよった。アレにワシがどれだけ感動したか感謝したか分かるか?

本心から、四郎丸には感謝しておる。契約して、お主らの運命さだめも多少見えたが、それ以上は分からぬ。

ワシが既にかなり変えてしもうたしの。」


俺は、一息吐き、四郎丸の頭を撫でる。


「四郎丸。幸せになれよ。主には幸せになってもらわねばならぬ。いや、ワシがお主を幸せにする。じゃからの、何かあれば言え。

何でもかんでもとはいかぬ。主のためにもならんからの。じゃが、ためになりそうなことであれば何でも叶えてやろう。

ワシにできる範囲で、じゃがの。」


「ははははは」と笑いながら、俺は四郎丸にそう告げた。



本当に、感謝している。嘘偽りなく感謝しているのだ。

俺をあの土の下の地獄から救い出してくれた。


あの暗闇から救ってくれたお前には、心の底から感謝しているんだよ、四郎丸。



それから半刻ほど、泣きながら飯を食った俺は、季光や四郎丸と話し、日間賀島ひまかじまへと向かうことにした。






───熱田湊への道中


食事を終えた俺は、早速仕事に取り掛かる。



目的地は、日間賀島

季光に告げたのは、「日間賀島に“くさび”を打ち込む」ということだけだ。


それが、季光たちにとっても利になることだとしっかり伝えた上で、向かうことになったのだ。



恐らく、サブダンジョンを設営することで何かしらの恩恵があると思う。

サブダンジョン設営はゲームタスクのような要素を持っている気がするのだ。



それと、サブダンジョンと本ダンジョンは、多分繋げられると思う。

これは、ダンジョンが現実とリンクしていないという予測からそう考えている。



ワープのようなものも機能にはあるし、転移門のようなものもありそうな気がするんだよな・・・

この辺りは設営してからでないと分からない。


そして、やはり設営するなら最近領地にした"日間賀島"だろうな、ということで、行くことに決まったのだ。



「(こんな理由だと知ったら、季光のやつはキレるかもしれんな・・)」


熱田湊に向かう途中では、一応、容姿を隠すために頭から厚手の布を被っている。


だが、六尺(180cm)の長身を隠し切るには無理があった。

この当時の男女の平均身長は155cmほど。


現代でさえ、六尺(180cm)といえばなかなかの高身長なのに、この時代では身長差25cmだ。

どう考えても目立つ。


すれ違う熱田の者たちは、俺の姿を見ると、ギョッとして道を空けた。



「おい、見ろよあれ・・・」

「でけぇ・・・」

「・・男か?」



「キャン!」


道端の野良犬と目が合った瞬間、野良犬はいきなり逃げ出した。

屋根に止まるカラスは既に失せた。


足元を這いずる虫さえ、俺の周囲から逃げている様子だ。


「(ふむ・・魔力を感知しているのか?それとも別の何かを・・?)」


どうも、野生の残っている者らには俺のことが強大な何かにでも見えるらしい。



俺は布の隙間から、金色の蛇目で周囲を観察する。


ピット器官が、周囲の熱源を色とりどりのサーモグラフィーのように捉える。

そして、鋭敏になった嗅覚には、様々な"匂い"が飛び込んできた。



すん、すんと俺は鼻を鳴らす


「・・・ほう、あそこの商家の娘、なかなか良い匂いじゃな。椿油か?」


「・・御霊蛇様、あまり見ないでください。怖がられます」



季光が小声で注意してくる。


「む、見ろ季光。あそこの赤子を抱いた母親・・・あの胸の肉付き、たまらんのぉ・・良い。この魔羅で食いたくなるわ。」


御霊蛇みむすび様、頼むから静かにしてください・・・!」





「(若妻、良いのじゃがなぁ・・。男に疲れた女をこの体で癒してやる。たまらんのだが・・)」


俺の“趣味”は、どうやらこの時代の武人には理解され難いらしい。




「(一応言うておくが、幸せな家庭に手出しはせんぞ?不幸せなものを幸福にするから寝取りは許されるのじゃ。)」



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ご読了ありがとうございます。

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