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戦国ダンジョン ~現代人は信長の足元で、歴史支配の夢を見る~  作者: 斎藤 恋
第二章:千秋季光救済作戦

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第19話:蛇船《へびふね》



───ダンジョン第一層:応接


ダンジョン第一層。

そこは、大きな穴で外と繋がる空間でありながら、外とは全く異なる空間を維持している。


例えば、気温。

例え外が氷点下以下であろうとも、内部は20℃の気温を保つ。

ダンジョンの層によっては、それ以上の場所やそれ以下の空間も作れるようだが、第一層は常に20℃の気温が維持されていた。


そんな快適な空間で、四郎丸・季光・吉法師(信長)たちと、先日協力関係を結んだ商人の二人と話し込んでいた。



「・・・御霊蛇様、千秋殿。」


挨拶と共に多少の談笑していた彼らだが、ふと真顔に戻り、低い声で切り出した。


「あれらの商品。硝石に炻器、ギヤマン・・いえガラスでしたか。それに塩。これらが堺で販売されれば間違いなく"銭の匂い"というやつを嗅ぎつけてくる輩が出ます。」


「"銭の匂い"、な。」


「えぇ。周辺国、特に駿河の商人あたりも嗅ぎつけるやもしれませんが、それはまだまだ先でしょう。しかし」


「しかし、なんだ?」



彼は、横にいる生駒家宗に向かって黙ってうなづく。

すると、生駒も承知していたように、地図を卓上へと広げた。


「こことここ。この辺りの海賊鵜どもが邪魔になります。」


生駒は、その地図から二つの島を指さし言った。


「ここ日間賀島ひまかじま。そして、こちらの神島かみしま。今はまだ小商い故に、大した艘別銭《通行料》も払ってはおりません。

ですが、いずれ艘別銭の吊り上げを企むでしょう。できれば、そうなる前に押さえたい。」


「海賊、な。」


「えぇ、そうです。日間賀島の方は多くても300程度でしょう。漁民崩れのあぶれ者が住み着く場所です。」


「ふむ・・・。騒がれれば面倒になる、か。」


「その通りです。吊り上げも多少であれば仕方ありません。しかし、これだけの品です。確実に騒ぎになります。

その騒ぎの程度によっては、他の者らも動くでしょうな」


「金で黙らせる、ことは悪手だということだな?」


「えぇその通り。できれば、織田か熱田で制圧した方がよろしいでしょうな」


生駒はそういうと、用意されたお茶を飲む。


「親父に頼む・・・は、ないな。とすると、熱田で出したほうが良いだろう」


吉法師(信長)は、父親、織田信秀がこの件に感知していないことを、暗に伝える。


「信秀様は、やはり・・」


「あぁ、知らん。親父ではこれらを腐らせるしかできん。それも根本からな・・・」



ダンジョンで史実を遥かに超える"訓練"と雪崩や津波と言えるほどの洗練された"情報"の山。


吉法師(信長)は既に、史実の織田信長ではなかった。


史実の織田信長も、戦国の世では確かに秀でている存在だったが、ここにいる吉法師(信長)は、既にそれを軽く凌駕している。


ダンジョンでのステータスアップ効果もそうだが、それ以上に恋、いや、御霊蛇からの教育もかなりの効果を示していたのだ。



「では、熱田だけで行う、と?流石にそれは・・・」


「いや、問題なかろう。ただ、足は欲しいな」


「いえ、ですが・・・」


加藤と生駒は、織田の次期当主とはいえ、11の若僧の言葉だけでは素直にうなづけず、チラッっと季光の方を伺った。


「問題ないぞ。佐治殿に足を頼もう。荷運びと夜襲のための小舟だけ借りよう。それだけで問題ないだろう」


季光もこの件には吉法師(信長)と同意見で、今の自分たちであれば攻略は容易だろうなと認識していた。


「でしたら、神島の方は如何でしょう?」


「さてな・・・。その辺りは確か志摩海賊衆の拠点ではないか?詳しくは知らんが・・」


「いえ、確かにその通りです。志摩海賊が幅を利かしておりますな。北畠も手を伸ばしていると話には聞いております。」


「なるほどな・・。志摩海賊衆たちが跋扈しておる場所か。」


「そうなります。」


「若、流石に我らだけで伊勢と事を構えるのは問題になりませぬか?」


「むぅ・・・。少々案を練らねばならぬか・・。いや、どうせなら、未知の存在として確立してしまうか?

加藤、生駒。どうせなら、ここに津島や大湊のような街を作らぬか?」



そうやって、日間賀島や神島の攻略について話していると、吉法師(信長)がいきなりそんなことを言い出した。



「わ、若。ま、街ですか?流石にそれは規模が大きすぎるのでは・・?」


「いや、手順を踏めば問題なかろう。ただ、我らが攻めたということだけは気付かれてはならん。つまり、佐治に協力は頼めん。」


「吉法師(信長)様、それでは神島も・・?」


「あぁ、攻めとる。だが、船の手配だけして欲し・・・なんだ?四郎丸」


そうして、日間賀島だけでなく、神島の攻略についても話が進み出したころ、四郎丸が吉法師の袖を引っ張り俺の言葉を伝える。



「吉法師(信長)さま。御霊蛇様が、どうせなら船くらい作ってやろうか?と。木材さえあれば作れるそうです。」


「え、と、熱田の若様。その、御霊蛇様が、というのは・・・?」


生駒は、四郎丸の言葉に疑念の表情を浮かべた。曰く、「こいつは何を言ってるんだ?」と

彼らには、ここは熱田神宮の隠れた神地であり、その神の加護によって特別な品々が得られる。

そういったことしか聞いていなかったためだ。


よもや、神いう存在が直接我らに干渉してくるとは思いもよらなかったのである。



「ん?そういえば、伝えておらなんだか?四郎丸は、この御霊蛇様と契約を交わしておってな、羨ましいことに、こやつだけが御霊蛇様とやりとりできるのよ。」


「な、なるほど」


「材料は、木でいいのですかな?御霊蛇様。」


「いいそうです。乾燥なども必要ないと。」


「・・・素晴らしいですな。どのようなものができるは分かりませんが、木材の乾燥も要らぬとは・・・」


「だが、持ち出しはどうする?ここから運ぶとなれば流石に目立つと思うが?」


「若。それは我らが行います。夜間に少数で運び出せば問題ないでしょう。運び出しはこちらで。船の固定や移動は別の者らにさせます。」


「うむ。それなら易いか。四郎丸、御霊蛇様が用意して下さるのはどのような船だ?運べぬようなモノでは流石に、な・・・?」


「小舟だそうです。ここより遥か西の国で"ゔぁいきんぐ"と呼ばれる者たちが乗っていた船にする。そう仰っています。」


「"ゔぁいきんぐ"・・・聞いたことがないな。」


「神のお知恵だろう。早う見てみたいの」



吉法師(信長)は、未知の国の未知の船に興味があるようで、いつもよりウキウキした表情を浮かべていた。


「では、木材はどうなさいます?熱田の社領のモノを使うにしても、どの木にするか選んだほうがよいでしょうが・・・?」


「樫はあるか?と問われています。」


「社領にも、確かあったかと。」


「それと、魚のアラ・内臓・頭、それとオカラ。この辺りも使う故、持ってきて欲しい、と。」


「魚の・・・。そのようなものを何に・・・?いえ、分かりました。お持ちします。」





そうして、この時要求された品は即日で持ち込まれた。

当時の熱田神宮は、すぐそばが港であったし、樫の木も社領のものをダンジョン探索メンバーが直ぐに切り倒し、切り株どころか根まで持っていった。



それらを吸収後、ヴァイキングの"ロングシップ"は、2日で製作された。

ただ、このロングシップは、ヴァイキングが利用した船や、当時の関船などより遥かに早い船となる。


当時最速の船だったといってもいいだろう。



その原因となったのが、御霊蛇が受け取った"魚のアラやオカラ"である。

ここに含まれたアミノ酸(タンパク質)成分を、数μmの極細レベルの加工技術で分解・射出。


タンパク質繊維とコラーゲンが、μmレベルで綺麗に整列されることとなる。

さらに高圧によって内部の気泡が完全に潰されたこの繊維は、最終、熱を加えられ固定される。



こうして出来上がった繊維は、鋼鉄の数倍の引っ張り強度を誇り、重量や耐水性だけでなく、密度も高いために多少の耐火性さえ獲得していた。



この繊維はのちに"蛇布"や"蛇糸"などと呼ばれるようになる。


この繊維で作られた帆は、風を一切通さず。

雨に濡れることもなく(撥水性)。

絹以下の重量で半永久的に使用が可能だったという。


ただ、服などにするには問題も多かった。

だが、対斬性性能が極めて高かったため、熱田の者たちからは、最も軽い軽い防刃鎧として重宝されることとなる。



船上では"蛇帆"とだけ呼ばれ、熱田の隠匿された襲撃部隊では、このロングシップが長い間、影で使用されることとなる。


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