第15話:織田信長という男
───ダンジョン内
【LUC50】
ステータス画面に表示されたその数値を見て、私が抱いたのは焦りではなく、奇妙なほどの納得だった。
史実の織田信長のことを思えば、この数値は至極当然と言えるだろう。
天下まであと一歩というところまで登り詰めた点や、杉谷前住坊からの射撃を悠々と潜り抜けたところからも彼の運の良さが伺える。
そのことを思えば、このくらいは当然といってもいいだろう。
・・・それに、現代でも友人にいたのだ。
異様なまでに運のいい人間というやつが。
ブラックジャックでは21を連発し、20が出てもカードを引き、"A"を引き当てる。
トレーディングカードでは、一袋に一枚しか入っていないはずのレアカードが2枚出るなんて当たり前、
アイスを買えば当たり棒が出るし、宝くじを買えば必ず何等かは当たっている。
こんなやつがリアルにだっているのだ(実話です)。
織田信長もその類だろう。
そう考えれば、この程度どうってことはない。
それにその友人だって、人生の節目節目ではつまづいてたしな。
そう考えると、織田信長という人物も普通に優秀で運のいい人間というだけ・・・いや、その時点ですごいな。
まぁ、普通の人間だ。
別に特別じゃない。
そもそも、織田信長は史実で、明智に裏切られて亡くなっているし、戦場でも足を撃たれて死にかけたことだってある。
そう考えると、本当に普通に優秀なだけの人間だろう。
・・・・なんか、むりやり納得しようといているような?
まぁ、特別な人間じゃないってことは確かだ。
特別だったなら、あんなふうに裏切られることもなかっただろうし、もっと先見性のあることだってやっていただろうしな。
どれほど運のパラメータが高かろうと、絶対的な安全など存在しない。
運などという不確定な要素は、あくまで確率の偏りに過ぎないのだ。
LUCが100であろうと、背後から刺されれば死ぬ。それが現実であり、歴史だ。
「・・・ふん、どうした四郎丸。妙に静かだな」
私の思考の海に、少年特有の少し高めの、しかし芯のある声が響く。
───吉法師
後の"第六天魔王"織田信長
まだ十歳だというのに、その瞳にはすでに爛々とした知性の光が宿っている。
彼はこちらを、妖のような邪なものではなく、"神"として扱い、敬意を払ってくれていた。
「若さま・・その・・・あの」
言いづらそうに四郎丸が吉法師に質問する。
「なんだ?」
「若さまは、この場所を報告・・・するんですよね?じゃあ「いやしないぞ?」え?」
吉法師が、ダンジョンのことを父親に報告しない?
「(マジか・・・)言わんのか?お主に見つかった時点で覚悟はしておったのだがな」
俺は、信長(吉法師)にそう言う。
実際、この時代の人間に秘密を秘密のまま抱えさせるのは困難だと俺は認識していた。
だから、ここがばれた時の対処法もいくつか考えてはいたのだが・・・
「あぁ、言わん。親父殿は戦上手だが、どうにも目先の利に囚われすぎる。」
「目先の?」
俺からすると、この評価は少し意外だった。
なぜなら、織田信秀はこの頃まだ脂の乗った時期で、負け知らず。
熱田や津島からの運上金で裕福なこともある上、那古野城を奪取の手際などを見れば、ずっと計画的な人間だと考えていたからだ。
「親父には、戦術眼・・・とでもいうべきものには長けている。これは確かだ。
しかし、戦略というものが見えておらん。清洲の連中に踊らされとるのもそれが原因だと平手も言っておった。」
「平手?織田家の重鎮のか?」
「知っておるのか?あぁ、そうだ。だが、はっきり言っておったわけではないぞ?
平手からの教育を噛み砕けばそうなる、というだけのことだ」
信長は、自分の父親を冷徹に分析し始めた。
平手政秀などの教育もあるのだろうが、十歳の子供が父親に向ける感情としては、あまりに客観的で正確だった。
「親父殿は、目先の利に敏い。銭の匂いには敏感で、それは爺様譲りだそうだが・・。
その銭を生かす気がない。もし、この熱田の地下に無限の富を生むダンジョンがあると知れば・・・」
「欲のまま搾り取るか」
吉法師(信長)は、俺の言葉に首肯した。
「だから、俺の立場と名を使う。」
吉法師(信長)は、言う
"織田家次期当主としての立場を利用し、この場所を信長の直轄地にするのだ"、と。
「無理じゃな。」
余りにも甘いその想定に、俺はそう返さざるを得なかった。
そもそも、信長がこの土地を「自分のものだ」などと宣言すれば、他の国人衆からの批判は必須だ。
ましてや宗教施設。
有力な信者たちも認めはしないだろう。
だから、俺は彼にどうすればいいのかを教えてやることにした
「そもそも、お主の名を使ってここを支配すればどうなると思う?
簡単じゃ、謀反が多発する」
「なぜだ?!」
無断で居座っているだけならば、別に問題はない。
しかし、そこを支配するとなると問題が跳ね上がるのだ。
「織田家が家臣の領地を奪いに来たとも捉えられかねん。
それに、この辺りだけをお主の領地になどしてみよ、即座に何かあるのだと勘付かれるぞ?」
「む・・・」
俺の言葉で、吉法師(信長)は食い下がろうとして諦めた。
自分の言葉の問題点にいくつか見当がついたのだろう。
「だが、守ってくれるというお主の気概は無駄にせん」
そうして俺は、ここまで言ってくれている吉法師(信長)を利用することを決める。
「お主、季光と協力し、信秀らを欺け。」
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