第11話:家臣団とステータスの開眼
───翌日
「・・・来たか」
俺はダンジョンの中から社領を覗き込んでいた。
魔力の最大値が急上昇してから、どうにも見える範囲が熱田神宮の社領全てにまで広がっていたのだ。
俺がぼぉっと眺めていると、本殿からウチのダンジョンへと続く道を10人程の集団が歩いてきていた。
先頭を歩くのは、千秋季光と四郎丸。
どうやら、昨日言った様に家臣たちを早速連れてきたらしい。
「これで千秋家の強化は問題なさそうだな。あとは・・」
あとは、外交問題か。
俺は、千秋家と織田家との関係性に思いを馳せる。
"織田信長"
今はまだ元服前だが、彼は歴史好きにとって神様みたいなものだ。
実態は違ったらしいが、それでもこの時代の寵児であり、天才であったことに変わりはない。
その織田信長の父親、信秀が当主なわけだ。
正直、俺はほとんど評価してない人物だし、歴史家の視点で見ても優秀だったのは若い頃だけで、晩年はかなり酷い。
別人にすり替わったと言われても不思議はないレベルだが、実際には、成長しなかったというだけだろうな。
若い頃の成功体験に固執し、そのまま歳を食って行った老害だとも言える。
若い頃は信長の優秀さを見抜いて、嫡子のままにしていたのに、晩年にあっさり廃嫡しているんだからなおのこと無能だろう。
翌年の加納口の戦いは、ちょうどその変わり目の時期だろう。
ここから、信秀の凋落は始まっていくのだから。
千秋には悪いが、そんな織田家の庇護下でい続けることに意味はあるのだろうか?
ダンジョンの力で彼らが成長を続ければ、織田の傘下で居続けることも難しくなることは明白だ。
季光も今は気づいていない様だが、このまま成長を続ければきっと気づくだろう。
そうなった時に、季光や四郎丸がどういう反応をするのかが少し怖い。
俺が知っているのは、目の前の2人と史実の2人の両方だ。
しかし、この親子は死ぬまで織田に仕え尽くしているのだ。
そんな2人が、織田の傘下から離れることに納得するだろうか・・・?
「するわけないな・・・。
とすれば、織田をここに引き摺り込むだろうが・・・」
ほぼ確実に織田がダンジョンに入ってくるだろう。
織田信長が、史実通りであれば問題が・・・・・?
「(史実通りだと問題・・?いや、待て。今は何年だ?そう、天文12年1543年。
四郎丸が10歳なら、信長も10歳だ。今なら俺が教育すれば変えられるんじゃないか・・・?)」
織田信長が史実通りの性格であれば、天下統一に尽力し、多くの敵を作り出し多くの資金を各地から絞るだろう。
それだけ、京都を支配するというのが沼である証拠だが、織田信長は、天才であったとは言っても現代人と違いとてもとても無垢だ。
田舎者といってもいい。
ここで俺が、情報の奔流で織田信長の性格そのものを変えて仕舞えば、未来も変えられるんじゃないだろうか?
まぁ、俺がいる時点で大きく変わってはいるわけだが。
今のままのルートだと、千秋も織田も不必要に敵を作る未来しか見えないのだ。
それは俺の望むところじゃない。
無論、天下統一はしてもらってもいいのだが、俺の体、というかダンジョン運営が千秋の手を離れるのは望ましくない。
意思疎通ができるとはいっても、それは四郎丸を通してだけ、それ以外のアプローチはまだ何もできないままなのだ。
分霊創造とか化身創造とかいう項目もあるから、
いずれは肉体ができて意思疎通ができるのだろうが、いつになるかはわからない。
だから、千秋家の手を離れるというのは本当に望ましくない結果なのだ。
「御霊蛇様、本日も鍛錬に参りました。
仰られた通り、信頼の置ける家臣たちも連れて参りました。」
季光は入り口付近でそう告げてからダンジョンへと入ってくる。
「なっ・・・!?」「こ、これは・・・」「すごい・・・!」
千秋親子以外のメンバーは、このダンジョンの第一層の光景に言葉もない様子だ。
200m四方、高さは50m以上あるという広大な空間。
穴の中だというのに、光る壁に天井。
それらは、彼らの常識から完全に逸脱したものだった。
名も知らぬ千秋の家臣団は、開いた口が塞がらぬままひたすら周囲に目をやっていた。
「ここは一体・・・」「以前来た時とはまるで別物だ・・・」
「季光様、一体これは・・・?」
「御霊蛇様の御力よ。この地には熱田大神と共に古き蛇神であらせられる、御霊蛇様という神がおってな。
そのお方の御力でここはできておるのよ」
騒めく家臣たちに、季光はさらに続ける
「そうして、ついこの間。四郎丸がこの方の声を聞いてな。御霊蛇様と四郎丸の間で契約を交わすことになったのよ。・・・四郎丸」
その呼びかけと共に四郎丸はみんなの前へと出る。そして
「『よく来たな千秋の者らよ。我は、御霊蛇などと呼ばれておる蛇よ。見知りおくといい』と申しております。」
俺は、その言葉に合わせて内部の魔力を強めてみる。
「うっ!」「くっ!」「な!」
魔力のある季光らとは異なり、家臣たちには、魔圧が強すぎたらしい。
そのまま膝をつき、平伏した。
その圧は、まさに神の威光。
神の存在を示すものと映ったのだろう。
四郎丸や季光の言葉が嘘偽りでないことを実感した様子だった。
「『面を上げよ。・・・皆にここへ来てもらったのは他でもない。
千秋の家、熱田の地を守るため、お主らに"力"を得る機会を与えようと思うたからじゃ』と申されております」
季光がそれに言葉を続ける。
「このこと、織田弾正忠(信秀)様にも伏せておる。
他言すれば、熱田の神が敵に回るのだと思え!よいな!!」
「は、ははっ!! 誓って!!」
神への畏敬の念とその恐怖が、彼らの心を千秋に、そしてこのダンジョンに縛り付けられたのが目に見える様だった。
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そうして、一通りの話が終わり、皆が落ち着いた頃。
「では、武具を渡しておくかの。・・・・・ほれ、11人分の太刀じゃ」
俺はそう言って、季光以外の分の太刀を創造し、宝箱として出現させる。
10人の千秋家家臣と四郎丸の分の太刀だ。
家臣団の者も落ち着いたのか、口々に入っていた太刀のことを口にしだす
「・・・変わった太刀だな」「刃紋がないぞ?」「・・斬れるのか?」
そのままガヤガヤと千秋の家臣たちが騒ぎだし
「おい、静かにしろ。ここはもう御霊蛇様の御前だぞ。」
季光の一喝で全員がまた静かになる。
「では、御霊蛇様。鍛錬を始めたいと思いますがよろしいでしょうか?」
「うむ、最初はマッドスケルトンを10体じゃ。倒したなら、魔石を拾わせ、食わせよ。」
「わかりました。よし、では戦闘体制!」
「「「!」」」
四郎丸を含めた集団は、季光の一言で空気を変え、一瞬で一組の陣形を取る。
俺はそれを確認すると、意識を集中させ、マッドスケルトン10体を彼らの前に召喚する。
ボコっボコっと、土が盛り上がり地面の下から泥でできた人間型の骨が出現する。
「「っ」」
それを見て、家臣団は一瞬の表情を変えたが、季光や四郎丸が心配していないこともあり、他の者たちも戦闘に集中していく。
そして、彼らが完全に現れた頃
「今だ!足を崩せ!」
季光のこの一言で、家臣団たちは足を狙いに動きだす。
「うわっ!」「くっ!」「のっ!!」
全員がスケルトンの足に攻撃を加えるも、数人はマッドスケルトンの反撃を喰らってしまう。
「(マッドスケルトンでは強すぎたか・・・?)」
今までに戦わせたのは季光と四郎丸だが、四郎丸が最初に倒したのは、最弱のマッドスライム。
季光に至っては、魔力を得てからしか戦っていない。
「(もしかすると、魔力の有無は予想より大きな身体能力の差を生み出すのかもしれないな)」
だが、反撃を受けた3人も、2度目の攻撃で足をへし折ることに成功し、そのまま足で頭部を踏みぬきマッドスケルトンを撃破した。
────────────────────────────
「見事だ。では、それぞれ倒した"まっど・すけるとん"のところにある赤い石を拾え。」
季光がそういうと、家臣団の者たちが土に埋まった魔石を拾い集める。
「それは、"魔石"
御霊蛇様の御力が宿りし石だ。それを飲め」
「「「は?」」」
家臣らがとんでもないことを言われたかのように声をあげる。
いきなり、拾った石ころを食えと言われたのだから、無理もない。
「いいから飲め。
そうすればわかる。早くしろ」
季光は、そんな家臣たちの反応を察していたように圧をかけていく。
家臣たちも、それに押し切られたのか、1人また1人と飲んでいく。
そして
「お!」「・・・なんだ、こりゃ」「は?」「・・・おいおい」
彼らの前にステータス画面が出現する。
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◻︎基本構成と状態
・名称:浅井 権六
・種族:人間
・年齢:42歳
・ランク:G
・状態:魔力中毒(小)・覚醒
◻︎ステータス
・HP(耐久力):24/24
・MP(魔力):1/1
・STR(攻撃力):9
・DEF(防御力):10
・RES(魔法耐性):1
・SPD(速さ):8
・LUC(運):5
◻︎保有スキル
・スキル:槍術(Lv.2)
・スキル:統率(Lv.1)
・スキル:魔力感知(Lv.0)
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◻︎基本構成と状態
・名称:林 弥七郎
・種族:人間
・年齢:28歳
・ランク:G
・状態:魔力中毒(小)・覚醒
◻︎ステータス
・HP(耐久力):22/22
・MP(魔力):1/1
・STR(攻撃力):8
・DEF(防御力):9
・RES(魔法耐性):1
・SPD(速さ):10
・LUC(運):6
◻︎保有スキル
・スキル:熱田流剣術(Lv.1)
・スキル:乗馬(Lv.1)
・スキル:魔力感知(Lv.0)
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◻︎基本構成と状態
・名称:加藤 孫兵衛
・種族:人間
・年齢:30歳
・ランク:G
・状態:魔力中毒(小)・覚醒
◻︎ステータス
・HP(耐久力):26/26
・MP(魔力):1/1
・STR(攻撃力):10
・DEF(防御力):11
・RES(魔法耐性):0
・SPD(速さ):6
・LUC(運):4
◻︎保有スキル
・スキル:斧術(Lv.1)
・スキル:剛腕(Lv.1)
・スキル:魔力感知(Lv.0)
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◻︎基本構成と状態
・名称:鈴木 惣右衛門
・種族:人間
・年齢:35歳
・ランク:G
・状態:魔力中毒(小)・覚醒
◻︎ステータス
・HP(耐久力):18/18
・MP(魔力):2/2
・STR(攻撃力):7
・DEF(防御力):6
・RES(魔法耐性):2
・SPD(速さ):11
・LUC(運):8
◻︎保有スキル
・スキル:弓術(Lv.2)
・スキル:遠目(Lv.1)
・スキル:魔力感知(Lv.0)
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◻︎基本構成と状態
・名称:山田 新次郎
・種族:人間
・年齢:19歳
・ランク:G
・状態:魔力中毒(小)・覚醒
◻︎ステータス
・HP(耐久力):19/19
・MP(魔力):1/1
・STR(攻撃力):8
・DEF(防御力):7
・RES(魔法耐性):1
・SPD(速さ):13
・LUC(運):9
◻︎保有スキル
・スキル:小太刀術(Lv.1)
・スキル:疾走(Lv.1)
・スキル:魔力感知(Lv.0)
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◻︎基本構成と状態
・名称:高田 甚五郎
・種族:人間
・年齢:32歳
・ランク:G
・状態:魔力中毒(小)・覚醒
◻︎ステータス
・HP(耐久力):25/25
・MP(魔力):1/1
・STR(攻撃力):8
・DEF(防御力):11
・RES(魔法耐性):1
・SPD(速さ):7
・LUC(運):5
◻︎保有スキル
・スキル:剣術(Lv.1)
・スキル:盾術(Lv.1)
・スキル:魔力感知(Lv.0)
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◻︎基本構成と状態
・名称:大野 平太
・種族:人間
・年齢:25歳
・ランク:G
・状態:魔力中毒(小)・覚醒
◻︎ステータス
・HP(耐久力):20/20
・MP(魔力):1/1
・STR(攻撃力):7
・DEF(防御力):8
・RES(魔法耐性):1
・SPD(速さ):9
・LUC(運):7
◻︎保有スキル
・スキル:剣術(Lv.1)
・スキル:解体(Lv.0)
・スキル:魔力感知(Lv.0)
====================
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◻︎基本構成と状態
・名称:中島 藤次
・種族:人間
・年齢:27歳
・ランク:G
・状態:魔力中毒(小)・覚醒
◻︎ステータス
・HP(耐久力):18/18
・MP(魔力):1/1
・STR(攻撃力):7
・DEF(防御力):7
・RES(魔法耐性):2
・SPD(速さ):12
・LUC(運):6
◻︎保有スキル
・スキル:短剣術(Lv.1)
・スキル:忍び足(Lv.0)
・スキル:魔力感知(Lv.0)
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◻︎基本構成と状態
・名称:小川 佐助
・種族:人間
・年齢:15歳
・ランク:G
・状態:魔力中毒(小)・覚醒
◻︎ステータス
・HP(耐久力):16/16
・MP(魔力):2/2
・STR(攻撃力):5
・DEF(防御力):5
・RES(魔法耐性):2
・SPD(速さ):11
・LUC(運):10
◻︎保有スキル
・スキル:剣術(Lv.0)
・スキル:回避(Lv.1)
・スキル:魔力感知(Lv.0)
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◻︎基本構成と状態
・名称:森 三郎兵衛
・種族:人間
・年齢:33歳
・ランク:G
・状態:魔力中毒(小)・覚醒
◻︎ステータス
・HP(耐久力):21/21
・MP(魔力):3/3
・STR(攻撃力):8
・DEF(防御力):8
・RES(魔法耐性):3
・SPD(速さ):9
・LUC(運):7
◻︎保有スキル
・スキル:剣術(Lv.1)
・スキル:算術(Lv.1)
・スキル:魔力感知(Lv.0)
====================
やはり、覚醒と魔力中毒が項目にはあった。
どうにも、魔石を取り込んだ直後には、必ずこれが出るようだ。
「(しかし、魔力中毒(小)極小だった2人とは違うな。もしかしてマッドスケルトンだったからか?
とすると、あまり強いモンスターの魔石をステータスのないものに食わせるのは危険かもしれんな)」
(極小)と(小)
些細な違いだが、中毒症状だと出ているのだから、何かしら悪影響はあるのだろう。
いずれは試すこともあるかもしれないが、今ではない。
今後も、最初に食わせるのはマッド系のみにしておこうと俺は決めたのだった。
───そうして、本格的な鍛錬の時が始まる。
「みやこの『泥まみれ魔物図鑑』公開だよ!
魔物の弱点から、神さまの設計ミスまで全部書いちゃった。
"X"の固定ポストから見に来てね!」




