第90話『2つの願い』
レゼル・ファーレ 王都・崩壊前の中央広場。
光の破片のような魔力が、宙を舞っていた。
その中心で、レイが浮かんでいた。
背後には、アイン=ゼロの分体。だがもう口は出さない。
―今度は、レイ自身の意志だ。
1,レイの願い
レイ:「もう……引き返せないよ、シン。私は、たくさんの命を……母さんを……」 シン:「お前のせいじゃない。アイン=ゼロが―!」
レイ:「……違う。“私が選んだ”の」
足元に魔方陣が展開される。
漆黒の雷と、異空の断層を刻む刃。
《虚雷裂界》。
ニャルス:「あの小娘……今のはもう、“自分で魔法を編んでる”。完全に《魔法使い》だ」
ロッシュ:「くそっ……あのレイが、なんでこんな……!」
ユイナとスイも叫びたかった。だが今、言葉では止められない。
この戦いは、シンとレイ―二人だけの決着。
地を蹴るのは、シン。
空を裂くのは、レイ。
刃が交差する―!!
ガァンッ!!
衝撃が街路を吹き飛ばし、魔力の波動が城門まで届く。
レイ:「私は、クロノを守るために、ここまできた!あなたが、彼を殺すって言うなら―!」
シン:「そんなつもりじゃねぇ!! でも、俺は……お前が傷つくのを、見てられねぇんだよ!!」
その一言に、レイの瞳が揺れる。
だがすぐ、鋼の意志で瞼を閉じる。
レイ:「なら……私を倒して、止めてみせて」
2,友との戦い
雷鳴が地に落ち、黒い裂け目が王都の空を覆う。
異次元から這い出る魔導獣が、周囲の住民たちを脅かし始める。
ロッシュ:「やべぇ!このままじゃ一般人が……!」
だが、その時―
シンが叫ぶ。
シン:「お前だけを見てねぇよ、レイ……!だけど……! “お前も”俺の世界の一部なんだよ!!」
その言葉と同時に、シンの剣が変化する。
蒼き意志の刃、《断心》
それは、敵意を断ち、心を切り拓くという真魔法。
―斬撃は、レイの雷を切り裂き、刃先は彼女の首元に届く寸前で止まる。 静寂。
レイ:「……なんで、止めたの……?」
シン:「お前を.....切れるわけ.......ないだろ........」
その瞬間、裂けた空が再び崩れ、アイン=ゼロの“本体の声”が響く。
アイン=ゼロ:「―なるほど。感情で世界が救えるなら、面白い実験になりそうだ」
次の瞬間、レイの身体が急激に崩れ、アイン=ゼロの影に引き戻される。
レイ:「やだ……まだ……!」
シン:「レイッ!!」
レイは一瞬、涙を流しながら手を伸ばした。
だが届かない。彼女は、アイン=ゼロの影とともに空の裂け目へと消える。 シンは、その場に拳を打ちつける。
シン:「絶対に助ける……!今度こそ……!!」
仲間たちが、無言で彼の背に集まる。
戦いはまだ終わらない。
だが確かに、ひとつの“絆”が―揺らぎ始めていた。
次回
大地・断




