第87話『絶望』
シンたちは、アイン=ゼロの創り出した空間。
《虚領》に取り込まれていた。
闇に包まれた石の広間に、禍々しい魔法陣が蠢いている。
レイは、その中心に立っていた。
その背後に浮かぶのは、歪んだ笑みを浮かべるアイン=ゼロ。
アイン=ゼロ:「そろそろ“証明”してもらおうか、レイ。“忠誠”を。」
扉が軋みながら開き―
シンたちが駆け込んでくる。
シン:「レイッ!!やめろ……!!」
レイの手には、雷・炎・影・空間がまとわりついている。
その手は、誰か一人に向けられていた。
―それは、捕らえられ、膝をつかされたシンの母・アリアだった。
血まみれの姿。それでも瞳は優しく―レイを見ていた。
アリア:「……レイちゃん。迷っているのね。」
レイ:「やめて……優しくしないで。私は……あなたを……」
アリアの目は、どこまでも静かだった。
アリア:「いいの。あなたが、この手で私を終わらせるのなら―それは、あなたが“まだ人間”である証よ。」
スイ:「そんなの、おかしいよ……っ!!」
ユイナ:「レイ!!やめて!!」
だが―その時、アイン=ゼロが命じる。
アイン=ゼロ:「刈り取れ。さもなくば、あの“男”の意識を、完全に消すぞ?」
レイの瞳が震える。
クロノの意識が、まだどこかにある。
その命を守るために、彼女はアイン=ゼロに従っていたのだ。
―ズッ。
拳が、深く、アリアの胸に突き立つ。
レイ:「……ごめんなさい……シン……ッ……!!」
シン:「……ッああああああああああああああああああッッ!!!」
その瞬間、時が止まったようだった。
アリアの体が崩れ落ちる―
その口元が、最後に動いた。
アリア:「レイちゃんを、……救ってあげて……私の、自慢の……息子……」
光が散る。
魂が、魔法陣に吸い込まれるように消えていった。
シン:「母さん!!!!!!!!!!!!!!!!!」
レイは涙を流しながら、後ずさる。―そのままアイン=ゼロと共に姿を消す。
アイン=ゼロ:「ふふ……完璧な、“絶望”だね」
―静寂。空間には、ただアリアの残した温もりだけが、まだそこにあった。
次回―
シン!立ち上がれ!




