第82話『父と娘の距離』
舞台は再び《巨大都市レゼル=ファーレ》。
空には未だ“記憶の歯車”が回り続け、時間と空間が軋む異常状態。
王城の裏手―影と静寂が混じる回廊を、シンたちは慎重に進む。
スイ:「……結局、さっきの“レイ”って……」
ユイナ:「記憶の中の“存在”……なのに、まるで本物みたいだった」
シン:「“クロノ”が願った、もう一つの可能性。あの姿は……レイを“娘”として見ていた証だ」
レイ:「……ずっと、どこかで感じてたの。私とクロノ……血のつながりなんて、あるわけないって思ってたけど、 会うたびに“懐かしさ”を感じてた」
通信魔具からの声。
ニャルス:「魂が覚えてたんだよ。お前の身体じゃない、もっと奥の“記憶”が」
ロッシュ:「クロノが何を見て、何を捨てたのか……そろそろ俺たちも腹を括る頃だな」
1,完全体《アイン=ゼロ》
一行は、王城最奥の封印区画―《旧時の間》へと足を踏み入れる。
そこに待っていたのは、
荘厳な階段の上、黒と白の衣をまとった男。
クロノ―いや、完全体《アイン=ゼロ》。
アイン=ゼロ:「ようこそ、私の記憶へ」
レイは拳を握る
レイ:「……あのとき、あなたは私に何も言わなかった。 どうして“父”として名乗らなかったの……!?」
アイン=ゼロ:「それは、君にとって“不要な真実”だからだよ。私はかつて、未来を壊した。“あの時代”の人間に過ぎない。だから私は決めたんだ。娘に、“新しい時代”を残すと」
シン:「そのために、人を記憶ごと塗り替えるのか? 街を……世界を!!」
アイン=ゼロ:「過去を変えなければ、未来は救えない。私はそれを証明してみせた。“記 憶”も、“時間”も、“万象”も―もう私の中にある」
ロッシュ:「やばいぞ。完全に“理性”の皮を被ったまま、“神”になってやがる」
ニャルス:「あの瞳……感情を捨てた“光”。このままだと……戻ってこないぞ、クロノは」
レイ:「それでも!! 私は、あなたを止める!!父親として何を選んだのか―その結末を、私の手で壊す!!」
アイン=ゼロ:「……ならば、見せてごらん。“娘”としての意志を」
2,娘の意思
そして、空間が“反転”する。
光と闇が反転し、時の歯車が空間全体に浮かぶ。
アイン=ゼロ:「最終試練だよ。過去も未来も超えて、“選ぶ”戦いをしよう」
空間が、かつてのクロノとレイが過ごした幻影の家に変わる。
だがその中で、レイの足が止まる。
レイ:「……ここ、知ってる。夢の中で……何度も来た……」
アイン=ゼロ:「そう。君が幼かった頃の“記憶”だ。……私は、忘れてなどいないよ。あの手のぬくもりも、君の笑顔も」
一瞬、クロノの顔が“父”としての優しさを取り戻す―だが、
シン:「レイ、惑わされるな!!」
その声で、レイの目が覚める。
アイン=ゼロ:「余計なことを..........」
レイ:「あなたは……もう、父じゃない。だから―私はあなたを越える!」
拳が交わる。
父と娘の、記憶と選択をかけた一撃。
父を越えるために、娘は拳を振るう。
過去を打ち壊し、未来を掴む戦いが、今―始まる。
次回―
揺らぐ。




