第78話『黒い夜明け』
―巨大都市夜。
王都に灯る光はまばゆく、復興したかのような華やかさを見せていた。
だが、表通りの喧騒の裏で、静かに何かが動き出していた。
ロッシュの情報によって、一行は《旧王城の地下区域》に“禁区”と呼ばれる場所があること を知る。
スイ:「王城の地下……って、今は誰も入れないんでしょ?」
ロッシュ:「あぁ。けどな、実際は《影兵》って呼ばれる兵が常駐してるらしい」
ニャルス:「あいつら、魂がもう抜けてるんだよ。“記憶”を喰われてね」
ユイナ:「記憶を……?」
ロッシュは、机の上に古びた巻物を一つ置いた。
ロッシュ:「これだ。……“ゼロの神殿”跡地から見つけた巻物。中にはこうある。
“万有魔法”、記憶と時間の彼方より万象を操る”」
シン:「……やっぱりだ。クロノ……いや、“アイン=ゼロ”は、《時間魔法》、そして《万有魔法》を併せ持ってる」
ユイナ:「....万有魔法....聞いたことがある...なんか...宇宙の力?を操るとかなんとか.....」
レイ:「もう、常識じゃ測れないね。今のアイツは」
スイ:「でも、わたしたち……やるしかないんでしょ?」
シンは立ち上がり、言う。
シン:「行こう。《王城の地下》……真実を掴む」
夜更けの都市を、影のように移動する一行。
《王城の裏口》から忍び込み、地下への階段を発見する。
ニャルス:「この先、気をつけな。“影兵”は、目が見えなくても……気配で襲ってくる」
レイ:「……来る!」
影の中から、黒く濁った兵士たちが姿を現した。
その顔に表情はない。ただ命じられるまま、動く傀儡。
ロッシュはスッとユイナの前に出ると、軽く肩を叩いた。
ロッシュ:「心配すんな。俺たちは、こういうの慣れてんだ」
―カツン。
足元に現れた黒い影。歪んだ人型の傀儡たちが壁を這い、天井から、床から、忍び寄る。
ロッシュ:「やれ、ニャルス」
ニャルス:「了解!!!」
瞬間、ニャルスの周囲に淡く光る魔法陣。
その瞳が怪しく輝き、空間がひずむ―
ニャルス:「千眼魔法.....死視陣.....」
バシュッ―ッ!!
浮かび上がった“眼”の魔法陣から、鋭い光線と圧力が一斉に傀儡を貫く。
目標は魔力中枢。ブレず、無駄もない―精密な一点刺突。
同時に、ロッシュが飛び込み、風刃を使って別の傀儡を切断。
ロッシュ:「俺が動くと風が荒れるぞ……!」
傀儡:「……」
喋らない。ただ命令通りに動くだけの死体。
ニャルス:「後ろ。2秒後に襲撃くるぞ。対処する」
ロッシュ:「へへ、ありがとよ」
ロッシュが風を背に回転、傀儡の首を切り飛ばす。
ニャルスはその隙に再び魔法陣を展開―
ニャルス:「千眼魔法.......断視爪.......」
視線だけで斬る、“視界領域ごと”切断する千眼魔法。
半透明の“斬撃”が放たれ、最後の傀儡が崩れ落ちた。
―静寂。
ユイナ:「……え……すご……」
スイ:「あれが……ニャルスの本気……」
レイ:「的確に仕留めてる。……本物だね」
ニャルスは無言で尻尾を揺らし、ロッシュの隣に戻った。
ロッシュ:「見たか?これが俺とニャルスの“本職”だ」
シン:「……すごい。ニャルス、君の力―借りる日が来るかもしれない」
ニャルス:「応じるかは、お前次第。……それだけだ」
目を伏せず、冷ややかに言い放つその口調に、シンは自然と背筋を伸ばした。
だが次の瞬間―
レイ:「っ!“魔力封鎖”……!?」
床に刻まれていた魔法陣が、シンたちを包む。
その中央に浮かび上がったのは、あの名だった。
《アイン=ゼロ》
アイン=ゼロの幻影:「ようこそ、“記憶なき都”の真の中心へ。さぁ、真実を見せてあげよう」
次の瞬間、光が弾け、シンたちは《精神領域》に強制転送される。
薄暗い空間の中、彼らは“かつての世界”の断片を見る。
・シンの母・アリアが、クロノと語らう姿。
・クロノが、何かに“同化”されていく映像。
・そして、アイン=ゼロという存在が生まれた瞬間。
ユイナ:「これは……まさか……!!」
シン:「クロノは……最初から操られてたんじゃない……!自ら、アイン=ゼロを……選んだ!?」
レイ:「でも、なんで……そこまでして?」
そのとき、映像の中のクロノが、静かに口を開いた。
クロノ:【…私は…観てしまった.....未来はもう、壊れていたんだ。ならば、僕が全てを“巻き 戻す”。最初から、やり直す世界を―】
そして場面は、再び王城地下に戻る。
シンたちは、それぞれに動揺を抱えながらも、再び目を開けた。
スイ:「……今の……クロノの意思……?」
シン:「いや、もう……彼の中に、クロノはいないかもしれない」
だが、その時。
レイ:「……!!」
天井の壁が割れ、黒い腕が伸びる。
アイン=ゼロの分体が、地下に降臨した。
アイン=ゼの幻影:「“観た”ね。ならば、証明して。お前たちの選ぶ“未来”を」
圧倒的な魔力が地下全体を満たす。
シンの目が鋭く光った。
シン:「……なら、答えてやるよ。“俺たちの意志”ってやつをな!」
次回―
記憶の中へ。




