第77話『焼け野原の巨大都市』
再び訪れた都市《レゼル=ファーレ》。
かつて災厄に焼かれたその街は、信じられないほど整備され、美しく“再建”されていた。
だが、シンたちは知っている。
この街は一度、完全に滅んだのだと。
1,幻想の街
スイ:「なんかさぁ……ここ、ほんとに前と同じ街?」
ユイナ:「建物の配置も、匂いも、一緒。でも……違和感がすごい」
レイ:「時の魔法……クロノの“時間逆流”で戻したんだろうね。この街の“記憶”ごと」
シン:「いや....時間魔法だけじゃ...記憶を変えることはできない...........」
スイ:「っ!!てことは.......」
シン:「あぁ......他にも強大な魔法を持ってる.....」
彼らは、《ルーンの紋章》が刻まれたゲートを抜け、街の中心部へ足を踏み入れる。 2,路地裏の異変
祭りのように賑わう街とは対照的に、裏路地は静まり返っていた。
ふと、細道の奥で何かが倒れている。
シン:「あれ……誰か倒れてる!」
レイとスイが素早く駆け寄る。
倒れていたのは老人。傷だらけで息も絶え絶えだ。
老人:「ま……まに……あわない……“あの方”は……もう……人ではない……」
スイ:「あの方って……クロノのこと?」
老人の目がかすかに動く。
老人:「にげ……ろ……“あれ”は、クロノじゃ、ない……んだ……」
ユイナ:「待って、それってどうい―」
直後、老人の体は魔素に包まれ、黒灰のように崩れて消えていった。
シン:「ちぃ.....口封じか.......」
3,シンの葛藤
レイ:「クロノが乗っ取られてること……街の人たちに伝えた方がいいんじゃ」
シン:「……ダメだ。混乱を招くだけだ」
ユイナ:「でも……このままじゃ……」
シン:「わかってる。……けど、今言えば、王国の信頼も、希望も全部崩れる。 だから……戦いの準備が整うまで、クロノが“アイン=ゼロ”に支配されてることは伏せる。 それが、今の最善だ」
シンの拳が震える。
レイはその拳にそっと手を添えた。
レイ:「……優しいな、あんたは」
スイ:「それが……シンでしょ」
4,地下の情報屋
かつての仲間に会うため、シンたちは地下通路の奥―
重たい鉄扉の前で足を止めた。
スイ:「なつかしいな……ここ、前にも来たよね。」
レイ:「ロッシュさん、まだここにいるのかな?」
シン:「あいつがそう簡単に死ぬとは思えない。」
―ドアを三回ノック。間をおいて、二回。昔決めた合図。
ガチャリ、とゆっくり扉が開く。
そこに現れたのは―くたびれた革のコートを羽織り、肩に黒猫を乗せた男。
ロッシュ:「まったく……焼けた街に戻ってくるなんて、物好きにもほどがあるぜ、シン坊。」
ユイナ:《……この人が、情報屋……?》
シン:「お前、相変わらず猫と一緒なんだな。」
ロッシュ:「あぁ...こいつが俺を守ってくれるからな....」
スイ:「相棒ってわけ?」
黒猫:「“相棒”だと?こっちはお前らの相手をしてるだけで退屈なんだが?」
ユイナ:「しゃ、喋った!?この猫、喋ったよ!?」
ロッシュ:「あー……こいつは“ニャルス”。オレの相棒さ。ま、悪魔なんだけどな」 スイ:「は!? 悪魔!? ……嘘でしょ」
ニャルス:「“猫”言うな。ニャルス様と呼べ、小娘。」
シン:「……千里眼だろ、相変わらず。あの高層塔、見えてるか?」
ニャルス:「あぁ。塔の上には一匹、いや……もう“クロノ”とは呼べない何かがいる。」
ロッシュ:「こいつがいなきゃ、今頃俺の商売も吹っ飛んでたよ。……ま、案外役立つんだ、 悪魔ってのもな。」
スイ:「ロッシュさん、元気そうでよかった!」
レイ:「私たちのこと、覚えててくれてるよね?」
ロッシュ:「忘れるわけないだろ。伝説の“問題児カルテット”が来りゃ、街が何度燃えても印象は焼き付いてる。」
シン:「紹介する。ユイナ、彼はロッシュ。昔の仲間で、今はこの街一番の情報屋だ。」
ロッシュ:「初めまして、お嬢さん。俺が“腐っても噂のロッシュさん”さ。」
ユイナ:「……なんか信用していいのか不安になる自己紹介ですね。」
場に微笑ましい空気が流れつつも、すぐに真剣な空気に戻る
シン:「ロッシュ。街のことだ。元は焼け野原だったはずの“レゼル=ファーレ”が、完全に元通りになってる。」
ロッシュ:「あぁ、噂になってるよ。『時間が戻った』―ってな。」
シン:「それだけじゃ説明がつかない。“記憶”ごと戻ってるんだ。人々は、“焼けた記憶”を 持っていない。まるで最初から、何も起きなかったみたいに。」
ユイナ:「でも、そんなことって……」
ロッシュ:「あぁ、わかってる。“時間魔法”だけじゃ無理だ。……それに、“クロノ”が何か隠してる。俺も追ってるが、手がかりは薄い。」
スイ:「何か掴んでるの?」
ロッシュ:「情報はある。だが―ひとつだけ忠告しておく。クロノが“本当にクロノかどうか” ―そこには触れるな。市民の前では、口を滑らせるなよ?この街の“平穏”を壊したくないんだろ?」
レイ:「……っ。じゃあ、本当に―」
シン:「……あぁ、やっぱり。“あのクロノ”は、もう……」
そんなやりとりの背後―高層塔の最上階。
王の間に、“クロノ”の姿があった。
その目は、以前と同じ色をしていたが―そこにあったのは、冷たく歪んだ知性。
アイン=ゼロ:「もうすぐだよ……私が完全体になるのは........」
クロノ:《や....めろ........》
次回―
シンたちは、偽りの平穏が包む都市《レゼル=ファーレ》の奥へと踏み込む。
“真実の扉”の前で、何を目にするのか。




