第72話『封じられた旋律』
《虚無の心臓》第三の修行空間―。
そこは音のない世界だった。
声も、音も、何もかもが吸い取られるような静寂。
ユイナは独り、暗闇の空間に立っていた。
1,響かない旋律
ユイナ:《……声が、出ない……? 音が、ない……》
いつもは彼女の魔力と共鳴していた旋律《響律魔法》が、
この世界ではまったく通用しない。
空間が、“音そのもの”を拒絶している。
ユイナ:《……これじゃ、響律魔法が使えない。魔法すら……封じられてる……》
だがその時、微かに聞こえた。
「……なぜ……歌わないの?」
2,幻の精霊との出会い
薄明かりの中、ゆっくりと姿を現す“影”のような存在。
その姿は、半透明の人影―美しい楽器を抱え、白銀の仮面をつけている。
???:「私を、見つけたのか。ずっとここで待っていた。私の旋律を、聴いてくれる者を」
ユイナ:「……あなた、誰?」
???:「我は、“幻創魔法”の幻創の精霊・リェン”。存在しない音の精霊。真に“心”から生 まれた旋律にしか、私は応じない」
その言葉とともに、空間にわずかな“音”が戻り始めた。
リェン:「ただし―私と契約するには、君自身の“偽りの音”を断ち切らねばならない」
3,試される旋律
突然、空間に響く“かつての音”―
それは、ユイナが過去に歌った旋律、過去に口にした“誰かのための嘘”。
母に愛されようとした歌。
誰かに必要とされたくて奏でた旋律。
自分をよく見せようとした、作られた声―。
幻影が次々に現れ、ユイナの耳を責め立てる。
幻影:「本当は、誰のために歌っているの?」
ユイナ:「私は……みんなのために……!」
幻影:「本当に? あなたは“見捨てられるのが怖くて”、歌っているんじゃないの?」 ユイナ:「……っ!」
全身が重くなる。音が消えていく。
―だが。
4,本音
ユイナ:「……たしかに、私は怖かった。認めてもらえないのが、必要とされないのが……」
ユイナ:「でも……今は違う!」
ユイナ:「私は、シンやレイちゃん、スイちゃんと並んで戦いたいの! 本当の自分の“音” で!」
その瞬間、彼女の魔力が共鳴しはじめた。
音のない空間に、一音だけ、美しいピアノのような響きが鳴る。
ユイナ:「響律魔法.....光音..!!」
仮面の精霊・リェンが驚いたように目を見開く。
リェン:「……この音……“自分だけの旋律”……!」
5,契約と覚醒
空間が広がり、色彩が戻ってくる。
音とともに、世界が呼吸を取り戻す。
リェン:「……認めよう。私は、お前の中に宿ることを。これは、幻の音ではない」 ユイナの背後に、透き通るような“幻光の羽”が出現する。
《幻創の精霊リェン・契約》
ユイナの響律魔法が覚醒する。
幻の旋律で敵の精神を惑わす《幻歌》。
共鳴によって仲間の力を高める《共振の詩》。
そして―
極・響律+幻創精霊魔法《赫響封奏》。
音すら封じる“無音”の領域をつくり、あらゆる魔法を沈黙させる究極の音魔法。
6,次の一歩へ
ユイナ:「……ようやく、本当の自分の音を……見つけた気がする」
静かに微笑み、彼女は仲間たちの元へ歩き出す。
《虚無の心臓》の奥へ―
新たな音色が、未来を奏でるために。
次回―
シンの試練




