第64話『神の眠る扉』
1,扉の先へ
重力が乱れ、空間が軋む。
シンたちは《虚無の心臓》の扉を前に、息を呑む。
ルチフェロ:「……ここから先は、“神を創った者”の記憶だ。現実ではないが、嘘でもない」
ユイナ:「記憶の中に入るってこと……?」
レイ:「ここで隠されてきた真実が、すべて明らかになるのかもしれないわね」
モルス:「ああ。“神”が魔法を生み、そして“虚無”を封じた真実―その痕跡だ」
シン:「……行こう。この世界を創ったものを、確かめたい」
扉がゆっくり開き、全ての色が剥がれ落ちる。
彼らは、白と黒の記憶世界へと吸い込まれていく―
2,始源の神
記憶の中、かつての世界に6柱の“神的存在”が立っていた。
その中心には、一人の青年がいた。
???:「魔法とは、“心”の写し。だが、心はやがて他者を壊す」
???:「ゆえに我らは、“神”としてそれを管理する。滅びを超えた秩序の柱として―」
シンはその存在に、なぜか懐かしさと嫌悪を同時に感じた。
ゼルグ:「あれが、原初の魔法神。全ての魔法は、あの者を起点に枝分かれした」
彼らは人類に魔法を与え、制御不能になり、神の肉体を捨て、概念存在となって地に還った。
だが、ある時その“断片”に触れた人間がいた。
3,侵食の始まり
記憶の終盤―
少年が“神の残渣”に触れ、その瞳が歪んでいく。
ユイナ:「この子……」
スイ:「だめ、近寄らないで……これは、クロノ……!?」
ゼルグ:「ああ。これが、アイン=ゼロの最初の侵食だ」
―《世界を壊すべきだ。母も父も、真実を隠していた。》
その声に、クロノは支配されていく。
アイン=ゼロは、すでに断片に寄生していたのだ。
記憶が砕けるように断ち切られ、空間が崩れた。
4,“選ばれた”家族
目の前に現れたのは、《虚無の心臓》。
紅黒に脈動する魔核―魔法の源。
ルチフェロ:「これを受け入れれば、君は全ての“原点”に繋がる。だが、それは“神”に近づくことでもある」
シンは一歩踏み出す。
だがその時、声が止まった。
クリナ:「……シン、やめて」
皆が振り返る。
クリナは揺れる瞳で言った。
クリナ:「……私は、クロノ兄ちゃんを信じてた。母さんと父さんが、私たちを捨てたんだって ……ずっと、そう思ってた」
ユイナ:「……それは、クロノに?」
クリナ:「うん……でも……この記憶を見て、わかったよ」
静かに、涙がこぼれる。
クリナ:「母さんと父さんは……悪いことなんてしてない……守ろうとしてたんだ……」
一歩、シンのそばに歩み寄る。
クリナ:「……兄ちゃん、間違ってる。クロノが……間違ってるんだよ……!」
沈黙の後、シンは静かにうなずいた。
シン:「……ありがとう、クリナ。ようやく、家族に戻れた気がする」
5,零神式
シンの体に浮かぶ、新たな紋章。
それは―《魔領域:零神式》。
ベルゼブブ:「……真魔法の進化形、“起源連結領域”だな」
カース:「すべての魔法属性を統合する存在……もはや“魔術師”ではなく、“概念そのもの”」
翼を広げるシン。背には紅と白の羽が混在していた。
スイ:「……それでも、私は信じる。あなたは、壊す神じゃない」
ユイナ:「シンくんは……“つなぐ”ために戦うんだよね」
レイ:「私も……あなたと一緒に戦う。」
シン:「ああ。たとえ兄弟が敵でも、全部―取り戻す」
その視線の先には、まだ遠くで響く、クロノの気配があった。
次回―
次なる兄弟・ネクロとの戦い。
そして“死”の意味を問う試練が始まる。




