第57話『重力の鎌と、崩れる世界』
1,静寂を裂く足音
重い風が吹いた。
ネクロとの激戦が終わったばかりの、焦げた地表。
シンは息を荒げながら剣を納め、崩れ落ちるネクロの魔力を見つめていた。
その背後に―重力を歪ませる足音。
ザッ……ザッ……
スイ:「……誰?」
空気が急激に重くなる。誰も、動けなかった。
現れたのは、黒い羽を背に持ち、漆黒の鎌を構えた男。
グラヴィ=ルクシオ。
その美貌からは想像できない、異常な“死の気配”を纏っていた。
グラヴィ:「やあ、進化の申し子たち。死の王を超えた君たちに、ちょっとした“真実”を贈りにきたんだ」
シン:「……グラヴィ……っ!」
グラヴィは冷たく笑いながら、ネクロの灰が舞う空を見上げる。
グラヴィ:「ネクロが死ぬのは、想定通り。……まぁ、クリナがあそこまで“感情”に染まるの は誤算だったけどね。君たちには、いい時間稼ぎになってくれたよ」
レイ:「……時間稼ぎ?」
ユイナ:「全部……仕組まれてたの?」
グラヴィ:「もちろん。“Ω計画”に向けてね。進化には“絶望”と“再誕”が必要なんだ」
次の瞬間―周囲の地面が、沈んだ。
亀裂が走り、地面が落ちていく。
まるで空間そのものが引きずられ、重力に飲まれていくようだった。
グラヴィ:「重力魔法.....虚界崩落」
スイ:「くっ、動けない……!」
グラヴィ:「―さあ、“真実”の扉へようこそ」
鎌が宙を裂いた瞬間、シンたちの視界が、真っ黒に飲み込まれた。
2,真実の狭間
どこまでも黒い空間。だが、重力の圧力はここにもあった。
グラヴィ:「ここは、《ルクシオ家の記憶領域》」
空間が波打ち、映像のような魔法が浮かび上がる。
そこに映るのは一人の女性。
アリア=ルクシオ。
慈愛に満ちた眼差しを持つ。
アリア:「私はね、“進化”を“破壊”じゃなく“希望”に変えたかったの」
彼女と向き合うのは、白衣の男―
アラン=アークライド。
シンの父にして、細胞研究の第一人者。
アラン:「感情だけでは人は進化しない。だが、進化だけでも人は“人間”じゃなくなる。だか ら僕は、E細胞とΩ細胞を作った。君の理想に、かけてみたいんだ」
―その後、次々に生まれる子どもたち。
クロノ。
グラヴィ。
ネクロ。
クリナ。
そして最後に――赤ん坊が、さっきの女に抱かれて笑っていた。
そう―アリアは、シンの母である。
レイ:「……これって……」
ユイナ:「シンくん……ルクシオ家の……?」
グラヴィ:「ああ、僕たちは兄弟だ。全員―“進化の器”」
スイ:「……じゃあ、じゃあ……」
シンの体が震えた。
グラヴィ:「この世界の根源は、かつて宇宙から来た災厄、“オリジン核”と呼ばれる存在だ」
シン:「……!」
グラヴィ:「それがもたらしたのが“E細胞”、そして“魔印”だよ」
グラヴィ:「この星のすべての生命は“オリジン”から分化した。僕も、君も、ネクロも、クリナも ……」
グラヴィ:「我々は、“意図的に創られた進化体”なんだ」
スイ:「つまり……私たち、みんな“誰かに作られた”ってこと……?」
グラヴィ:「正確には、“選ばれた”ということだよ。進化の試験体としてね」 頭の中に、誰かの声が響く。
「シン、泣かないで。兄ちゃんがいるからな」
「シン!!いっしょに、魔法、練習するぞー」
「おい、シンまた泣いてるー」
「……大好きだよ、シン」
断片的な記憶が、シンの脳を突き刺す。
そして―
シン:「思い出した……俺……あいつらの……兄弟だ……」
3,現れた影
その時、空間の奥から音が響いた。
時計の針を刻むような、冷たい魔力。
???:「ようやく、出番か―」
現れたのは、機械仕掛けの時計を背負い、白と黒の衣を纏った男。
クロノ=スペース いや.....クロノ=ルクシオ
クロノ:「やあ、シン。弟よ。会えてうれしいよ。だが……」
グラヴィ:「“器”としての君に用がある」
クロノ:「君の中に眠る、“Ω細胞の核心”を回収する。それが、進化の完了だ」
シンは立ち上がる。
震えながらも、その目は曇っていなかった。
シン:「……ふざけんなよ」
スイ:「シン……?」
シン:「俺は、お前らの弟で......!……なのに、全部、利用して……クリナまで……!」
ユイナ:「シン、落ち着いて―!」
シン:「俺は……人間として、ここにいる。感情があって、泣いて、笑って、仲間がいて―それが、進化だってんなら……俺の進化は、止まらねぇよ!!!」
漆黒の空間が、静かに震え始める。
―運命は、いま大きく動き出した。
次回―
シンの家系が明らかに。




