第45話『動き出す者たち』
1,朝の異変
シンたちの滞在先。まだ陽が昇りきらぬ頃、
ユイナが目を覚ますと、シンは焚き火の傍に立っていた。
ユイナ:「シン……?」
シン:「…………」
その背には、黒くなった皮膚。
鋭くなった爪。
前夜よりも、変異の兆しが進んでいる。
ユイナ:「それ……E細胞の影響?」
シン:「……多分な。俺の身体、“人間”のままでいられる保証は……もう無いのかもしれない」
ユイナは、小さく首を振る。
ユイナ:「私は……あなたが人間じゃなくなっても、きっと、あなたを見つけられる」
その言葉に、シンは少しだけ目を見開いた。
だが直後―
彼の身体に、激しい痛みが走る。
シン:「……くそっ、また……!」
ユイナ:「シン!!!大丈夫!?」
シンは深呼吸をする
シン:「ふぅぅ.....大丈夫だよ」
背から何かが浮かび上がろうとしている。
―第二の尻尾の“芽”。
それは、Ω細胞の覚醒前兆。
2,遠く離れて・スイの修行場
スイは、湖のほとりで魔力を集中させていた。
ルナリス:「スイ、今の君は揺れてる」
スイ:「……分かってる。心のどこかで、“あの子”のことを気にしてる自分がいる」
セリファ:「でも、彼女だけじゃない。“レイ”の心にも火がついてる」 スイは水面を見つめる。
スイ:「“選ばれる”とか、“競う”とかじゃない。私はただ……シンの隣にいたいだけ」
3,レイの鍛錬場・炎の剣と黒き面影
レイは炎の剣で虚空を斬り続けていた。
フレ:「炎が乱れている。感情が揺れている証拠だ」
レイ:「シンは強い……でも、私も、強くなりたいの。誰かに追いつくためじゃない。“選んで 欲しい”とかでもない。ただ……隣に立ちたいの」
黒い面影が彼女の背後に現れる。
シャドウ:「……お前の“心”が熱を持ちすぎると、影が生まれるぞ」
レイ:「……それでもいい。シンが戻ってきた時、笑って会えるように」
4, 不気味な儀式
場面は変わり、黒い祭壇。
グラヴィが魔法陣に手をかざしている。
グラヴィ:「“Ω細胞”が動き始めた……となれば、“鍵”もまた目覚めさせねばならんな」
ネクロ:「死肉は集めてある。足りないのは、“魂の起動式”だけだ」
クリナ:「あー、楽しみ〜。“新しいお友だち”、たくさん増えるかな♪」
グラヴィ:「次は……“あの都市”を狙う。次に奴らが向かうのは、《アーヴェリア》。」
ネクロ:「シンたちが“知ってしまう”前に、“奪う”のがこちらの流儀だ」
5,尾を引く進化と“記憶”
再びシンたちの夜。
ユイナは寝静まった後、シンの様子を見に行く。
そこに、ゼルグが立っていた。
ゼルグ:「進化には“代償”がある。お前の中にあるものは、“希望”と“災厄”だ。両方だぞ、シン」
シン:「ああ……知ってる。だけど、それでも、俺は進むしかない」
その時、ふいにゼルグが空を睨む。
ゼルグ:「……感じるな。“試し”の気配だ」
直後、夜空に紋章が浮かぶ。
未知の魔導陣―
そこから、数体の“魔法獣”が降りてくる。
ユイナ:「あれ……なに?」
シンは静かに立ち上がり、目を細めた。
シン:「どうやら……“狩り”の時間だ」
シンはゆっくりと立ち上がる。
ユイナ:「シン……来るよ!!」
ゼルグ:「……抑えられるのか、貴様の“それ”を」
シンの背中から煙のような魔力が噴き出す。
肌が黒く変色し、骨格が隆起し、尾が一層太く伸びていく。
そして、シンは呟いた。
シン:「上等だ!!」
目が緑に輝き、牙が覗く口元が裂けるように開かれる。
シン:「進化魔法……E細胞・ON……モード……獣型...!!」
全身が“変貌”する。
背中から隆起する甲殻状の鎧。
腕は鋭く伸びた鉤爪へと変化。
尾は長くしなり、先端が分裂し始める。
肩から生えたパルス状の突起が、空気を振動させている。
胸の中心には、“E細胞の核”が緑色に脈打って光る。
まるで神話の宇獣。
だが、その瞳には人間の意志が宿っていた。
ゼルグ:《この姿……もはや、戦士ではない。“獣”だ。だが……何という意志の強さ……!》
シン:「ユイナ、後ろに!」
ユイナ:「……っ! 」
魔法獣の一体が飛びかかってくる。
それと同時に―
シン:「進化魔法……クロウ・ブラスター...!!」
手のひらから爆発的に放たれる緑色のビーム。
さらに尾がしなって敵を貫き、追撃を叩き込む。
魔法獣は断末魔を上げ、爆発する。
ユイナ:「すご……」
シン:「“E細胞”は……進化の化身。俺の中の“何か”が、目を覚まし始めてる。だけど、これ を……絶対に制御する。俺は、俺でいるために―」
夜に咆哮が轟く。
まさに、“獣”が目覚めた夜だった―。
次回―
獣の遠吠




