第43話『進化するもの』
1,火花と爆煙
クリナ配下の刺客が、ユイナに迫る。
魔法が発動され、紅い魔弾が放たれる―
そのとき。
???:「……そこまでだ」
風が、爆炎を裂いた。
ユイナの前に現れたその影は、ボロボロのコートを羽織り、腕から血を滴らせていた。
ユイナ:「シ……ン……!?」
シンは視線も逸らさず、敵を睨みつけたまま言う。
シン:「悪い。遅れた……けど、もう大丈夫だ」
ユイナは言葉を失った。
その姿は、どこか……“異質”だった。
その瞬間、シンの右手が静かに胸元へと動く。
1,E細胞発動
シン:「……これ以上、手加減してたら死ぬな….」
静かに呟き、瞳を閉じる。
そして、次の言葉が空間を震わせた。
シン:「... 進化魔法......《E細胞》起動...!!」
魔力が、爆発的に拡散する。
世界が一瞬、無音になった。
まるで時間が凍ったかのように、全てのものが動きを止める中―
“それ”は目覚めた。
2,E細胞(Evolution Cell)とは
かつて失われた超古代魔法の一種。
生物の遺伝的限界を打ち破り、外部環境や戦闘状況に応じて、持ち主を“適応・進化”させる。
だが、それは同時に“人の形”を捨てる魔法でもある。
E細胞は、シンの魔力核の奥深くに潜んでいた。
いつ植え付けられたのか、なぜ彼だけがそれを持つのか―未だ謎に包まれている。ただ、確かなのは............
この細胞は、“生き残ること”だけに特化している
3,姿の変化
爆発音と共に、シンの身体が変化していく。
黒銀の鱗が首元から腕へ、胸元へと広がっていく。
両手は鋭い鉤爪状となり、指先が“獣”のように変化する。
背中からはしなやかでしなる、**三節の尾が伸びる。
口元はわずかに裂け、牙が見えた。
瞳は鮮やかなエメラルドグリーンに輝き、縦長の爬虫類のような虹彩が浮かぶ。 全身からは濃厚な魔力と、“適応圧”**と呼ばれる圧力波が放たれる。
ユイナ:「本で見たことある……まるで、宇獣みたい……」
彼女はそう呟いた。
だが、恐怖ではなく、目に映るのは“圧倒的な安心”だった。
4,戦闘開始
敵が動く―が、もはや視えない。
シンの鉤爪が一閃し、空間を断つ。
シン:「進化魔法....牙迅裂....!!」
その一撃で、空気が砕け、刺客の身体は裂かれた。
後方から襲いかかるもう一体の魔法士へ、シンは尾を回転させて叩きつける。
シン:「進化魔法.....尾撃・斬尾螺旋........!!」
一瞬のうねり。
回転と同時に閃光が走り、尾の切先が爆発を起こした。
残党が震える中、シンの身体からはさらに魔力が吹き上がる。
その手のひらに、緑色のビーム状のエネルギーが集中する。
シン:「進化魔法......ビオスブレイザー....!!」
放たれた緑の砲撃が、周囲をなぎ払い、森の木々を消し飛ばす。
5,感情と静寂
戦いが終わる。
ユイナは駆け寄るが、すぐそばで止まる。
なぜなら、彼の背には“獣のような影”が宿っていたから。
ユイナ:「……戻って、シン!!」
シンは一歩、踏み出す。
鱗がゆっくりと剥がれ、爪が人の形へと戻っていく。
だが―その目は、どこか“遠く”を見ていた。
6,終幕の会話
ユイナ:「ありがとう……助けてくれて。でも、もう無茶はしないで」
シン:「……無茶じゃないさ。俺は、そういうふうに造られてる」
ユイナ:「……?」
彼女には、その言葉の意味は分からなかった。
けれど―
胸の奥が、ざわめくのを感じていた。
まるで、“彼が遠くへ行ってしまう”ような感覚。
そして、彼女の心の―
小さな感情が、名前を持ち始める。
それが、“恋”という名だと気づくには、もう少しだけ時間が必要だった。
次回―
進化の代償とは。




