第38話『新たな魔印の目覚め』
1,それぞれの想い
静かな朝。異国の山里に、鳥のさえずりが響く。
シンは寺の縁側に腰掛け、カイラを膝に光らせながら静かに目を閉じていた。
カイラ:「昨日の傷、大丈夫……?」
シン:「ああ、もう平気さ」
視線の先では、木刀を振るうユイナの姿。
風に揺れる髪、まっすぐな眼差しに、少女らしい柔らかさと鋭さが同居する。
ユイナ:《……どうしてそんなに鈍感なのよ、ほんともう……バカ》
カイラはくすっと笑ってシンの肩にちょこんと乗った。
2,離れた地で
レゼル=ファーレ。
焦げた街路の上、スイとレイは離れた空を見つめていた。
スイ:「……シン、どこにいるのかな」
レイ:「信じてる。あの人は、まだ終わってない」
風に揺れる髪の中、フレとシャドウが小さな声でささやき合う。
フレ:「気配が……変わった。あの子、なにかを“越えた”」
シャドウ:「進化だ。魔力の系統が、次の段階に入った。異質な細胞が反応している……」
3,接触
異国の山村。霊峰の麓。
霧が立ち込める森から、紅い影がゆらりと現れる。
クリナ:「やっほ〜、シンくん♡ 見つけたよ〜」
ゼルグ:「……気配が腐ってやがる。間違いねぇ、“ルクシオ”だ」
シン:「ユイナ、下がってろ。こいつは……クリナ=ルクシオだ」
刹那、血液が地を這い、骨の刃が空間を貫く。
ゼルグが一歩前に出て防ぎ、シンは身構える。
4,魔印・目醒め ―そして、“進化”―
足元に這った血が、シンの足を貫こうとしたその瞬間―
カイラ:「シン!! その魔力、制御して!」
シンの胸に宿る魔印が、再び輝く。
だが今回は、明らかに“違う”。
その魔力は魔印から体中に広がり、シンの肌が淡い金光に染まる。
同時に、体内の何かがうねり、新たな細胞が目覚めるような感覚が走る。
ゼルグ:「これは……!? 魔印じゃない、“進化”だ!?」
カイラ:「E細胞……!? シンの体に眠ってた“進化因子”が……反応してる!でもなんでシンの中に!?」
シン:「これは……俺の中の“第三の魔法”……? 力が……溢れてくる」
雷のように奔る魔力が、血の刃を弾き飛ばす。
骨の鎖を断ち切り、空気がうねる。
クリナ:「……うわぁ、なにそれ。かっこい〜〜♡ ねぇもっと、壊していい?」
ユイナ:《なんで、私はただ見てるだけなんだろう……こんな時に》
ユイナはきゅっと口を結び、手の中の木刀を強く握る。
5,E細胞と“選ばれし進化”
攻防の合間、ゼルグが低くつぶやく。
ゼルグ:「E細胞……それは、極限環境に適応し続ける“未知の因子”……それがなぜ、お前に?」
カイラ:「……私も、そこまでは分からない。でも、それが“選ばれし魂”の証なのかも」
シン:「……だったら、俺はそれを“戦い”に使う。誰も傷つけさせないために」
そして再び、右手が進化するように輝き、**“魔印”と“E細胞”**の力が融合していく。
6,崩れる戦局
クリナの魔法が形を変えていく。
空中に滞空する血の斧、爪、槍。地面を這う刃が絡みつく。
クリナ:「ふふふっ……ねぇ、“壊す”のって楽しいよね♪」
その魔力の矛先が、ユイナに向いた―!
クリナ:「さっきからチラチラ見てたでしょ? その目、気に入らないなぁ……♡」
ユイナ:「っ……!」
血の刃が四方から一斉に迫る。
木刀では到底受けきれない。
ユイナ:《逃げなきゃ……でも、足が……!》
シンの瞳が一瞬で獣のように鋭くなった。
シン:「やめろ……それ以上、手を出すな……!!」
だが、届かない―そう思われた瞬間、
“ゴォッッ!!!”
彼の体が、**“進化”**した。
肉体が一瞬で魔力を圧縮し、爆発的に跳躍する。
風を割ってユイナのもとへ―
シン:「間に合えぇぇぇぇぇッッ!!!」
迫る血刃を―
全て、砕いた。
爆ぜる紅の霧の中、ユイナをしっかりと抱きかかえながら着地する。
ユイナ:「……シン……?」
シン:「ケガ、ないか?」
ユイナ:「う、うん……でも、なんで……そんなに、ボロボロなのに……」
彼女の目には、血を流しながらも自分を庇うその姿が焼き付いていた。
胸が高鳴る。
何かが、張り裂けそうだった。
7,進化魔法・第二段階《アダプト=モード》
その時―
シンの体に異変が走る。
魔印が再び光り、“E細胞”が反応を強める。
ゼルグ:「第二段階だと……? 進化魔法が……さらに適応してやがる……!」
風を読むように、空気の流れが見える。
血の流れを感じ、骨の動きを先読みする。
シン:「これが……“未来を生きる力”―!」
シンの瞳が紅に染まり、進化した魔力が全身を走る。
8,クリナの微笑
一方、戦況が逆転しても、クリナは笑っていた。
クリナ:「あはっ♡ やっぱり壊す前の方が、一番綺麗ね……シンくん」
彼女は一歩下がり、霧の中に溶けるように姿を消す。
クリナ:「また遊びましょ。次は……“もっと深く”までね」
その声だけが、風に残った。
9,静かな夜と少女の揺れ
戦いが終わり、ユイナは焚き火のそばで、じっとシンを見つめていた。
シン:「ユイナ、大丈夫か?顔赤いぞ?」
ユイナ:「べ、べつに!? なにもっ……!!」
精霊のいたずらに、少女の心はまた揺れる。
だが、彼女の決意は揺らがなかった。
ユイナ:《次は、私が……あなたを守る》
次回―
それぞれの覚悟へ




