第36話『揺れる街、燃える覚悟』
1,炎の中心
魔導都市レゼル=ファーレを覆う黒煙。
混じる魔力は、街全体をざわつかせていた。
シンたちは研究所を飛び出し、炎の中心―
魔導商店街へと急ぐ。
スイ:「くそっ……っ、思ったより燃えてる!」
ルナリス:「あそこ、まだ人がいる……!」
瓦礫の崩れる音、破裂音、そして―
かすかに聞こえる悲鳴。
ゼルグ:「あの魔力、間違いない。ルクシオの一人……いや、複数いるかもしれん」 走りながら、シンの胸中に複雑な感情が渦巻く。
街の人々を救いたい。
でも―ルクシオ三兄妹が仕掛けてきた「試練」にも、向き合わねばならない。
そして、ついに広場に出た瞬間―
三人の“影”が、ゆらりと立ちはだかる。
ネクロ=ルクシオ。
クリナ=ルクシオ。
そして―グラヴィ=ルクシオ。
ネクロ:「ようこそ。“試験会場”へ」
クリナ:「あれ? こんなに早く来ちゃったの? もっと壊したかったのに〜」
グラヴィ:「選べよ、シン。誰を守る? そして―誰を失う?」
その言葉に、スイとレイの背筋が凍る。
だが、シンの足取りは止まらない。
シン:「選ばない。全部守る。それが……俺の戦いだ」
その瞬間―
三兄妹の背後で、死神魔法が展開される。
空間が歪み、影のような“何か”が出現する。
ゼルグ:「―来るぞ、構えろ!」
2,開戦
―戦場は、一瞬にして“地獄”へと変わった。
爆風。火柱。重力の歪み。
ネクロの“骨魔法”、クリナの“血液魔法”、グラヴィの“重力魔法”が交錯する。
シン:「やるぞ!!ゼルグ、カイラ!!行くぞ!!」
ゼルグ&カイラ:「「おう!!」」
レイ:「来るぞ、スイ!アークネス、レグルス!やるよ!!」
アークネス&レグルス:「「任せろ!!」」
スイ:「 ルナリス、セリファ、やるよ!!」
ルナリス&セリファ:「「了解っ!!」」
シンの斬撃は、魂まで行き渡り、切り裂く。
スイの水・風魔法が空気を裂き、レイの雷撃が空間を超え、影を貫く。
だが、それすらもグラヴィは、軽く手を上げるだけで弾き返す。
グラヴィ:「軽いな……お前らの意志も、力も」
レイ:「……っ!?」
ネクロ:「だが、それでこそ試す意味がある。生き延びろよ、“選ばれし者”」
その時だった。
ラヴィが手をかざすと、空間が震え、**“死神魔法”**が展開される。
面がひび割れ、黒い霧が吹き出したかと思えば―
そこに現れたのは、一人の男。
???:「............シン....」
黒衣に包まれ、顔にはかつての面影。
だが、目は―冷たく、何も映っていない。
シン:「……父さん……?」
グラヴィ:「フッ……お前の精神を“試す”には、最適な素材だったろう?」
死神魔法―《幻魂の使役》。
かつて亡くなった人間の“魂の残響”を、魔力で再構築する。死に近い魔法。
ゼルグ:「くっそ……まずい、シン!!あれは本物じゃない!!早く!!斬るんだ!!」
シンの剣が震える。
父との記憶が、脳裏を駆け巡る。
グラヴィ:「斬れよ、シン。過去を超えてみろ」
スイ:「やめろグラヴィ!! それは……あまりに残酷すぎる!!」
だが―シンは動けなかった。
その一瞬の“迷い”。
それこそが、グラヴィの狙いだった。
グラヴィ:「―終わりだ」
重力が一気に収束し、黒の閃光がシンの胸を貫いた。
シン:「ぐ……あっ……!!」
レイ:「シン!!」
スイ:「だめっ……!」
グラヴィ:「お前は...........”弱い”...」
爆発的な力がシンを包み込み、彼の身体は空間ごと“ねじ曲げられ”、どこかへと飛ばされていった。
グラヴィ:「今の彼では……まだ届かん。だからこそ、“試す”意味がある」
クリナ:「どこに飛ばしちゃったの〜? ねえ、ねえ」
グラヴィ:「“彼”の原点だ。過去を知り、運命を知る場所へ」
ネクロは黙って空を見上げた。
闇の向こう、シンの運命がまた動き出すことを、感じながら。
―シン、消息不明。
残された仲間たちは、燃える都市に立ち尽くしていた。
グラヴィ:「今回はここまでにしよう。またどこかで。世界の崩壊を止めれるといいな.........」
グラヴィたちは、一瞬で消えた。
スイ:「……シン……どこに行っちゃったの……?」
レイ:「あの一撃……止められなかった……っ」
瓦礫の中、カイラたち精霊も肩を落とし、ゼルグの気配もどこかで途切れていた。
だが―その頃。
遥か遠く、霧と竹林に包まれた異国の地に、二つの影が倒れていた。
その一人、シン=アークライドは、重いまぶたをゆっくりと開ける。
シン:「……ここは……?」
湿った土の匂い。静謐な空気。
そして、木造の屋敷のようなものが、目の前に広がっていた。
傍らでは、ゼルグが呻きながら立ち上がる。
ゼルグ:「……クソ、あのグラヴィとかいう野郎……とんでもない魔法だ……」
その時。
屋敷の縁側から、静かに一人の男が現れる。
???:「起きたか。お前たちが来ることは―わかっていた」
シン:「誰だ……?」
男はゆっくりと階段を降り、月明かりの下でその顔を晒した。
落ち着いた眼差しと、どこか懐かしい雰囲気―
???:「俺は、リョウガ=アークライド。アランの……弟だ」
シン:「父さんの……弟?」
リョウガは、目を細めて微笑む。
リョウガ:「ここは、“ヤオ=セイ”と呼ばれる国。お前の父が若き日に修めた、“古の力”が眠 る地だ。そして今、その血を継ぐお前に……伝える時が来た」
静かな竹林の中、風が揺れ、笹の葉がこすれ合う。
リョウガ:「さあ、立て。ここから先は―お前自身が、自分の道を選ぶんだ」
燃える都市と対になるように、異国の地にて、新たな稽古が始まろうとしていた。
次回―
異国の地について。




