第21話『雷鳴の心臓』
1,静寂の空間
黒い大地に雷光だけが走る世界―そこが、レイの“心の試練”の舞台だった。
空は常に雷雲に覆われ、足元には影のような悪意が渦巻いている。
レイはその中心で、静かに目を閉じていた。
レイ:「……この“怒り”と“焦燥”は……あたしの中にある感情。消せないし、否定もしない。けど、それに支配される気もない」
その言葉に呼応するように、体内で“何か”が蠢き出す。
レグルス:「……フン、少しはマシな顔になってきたな」
レイ:「……レグルス。黙って見てるだけじゃ、退屈だったでしょ?」
雷の悪魔―レグルス。
彼はすでにレイの中に宿り、常に彼女の魂を試し、見極めていた。
レグルス:「お前の“拳”は、まだ弱い。怒りに振り回されてるうちは、“力”にはならん」
レイ:「…それでもいい。最初から全部うまくいくなんて思ってない。ただ―」
拳を強く握るレイ。
その拳が放つ気配が、雷のように空間を震わせる。
レイ:「この拳で、全部ぶち破って進む。それが、あたしの“道”だ!」
突然、空から巨大な雷の柱が落ちる―!
その中心から現れたのは、巨大な黒き獣のような影。
レグルス:「……来たな。これは、お前の“心の檻”だ。乗り越えなきゃ、雷の力も、悪魔の名 も名乗れねぇ」
レイ:「上等。試練だろうが幻だろうが……全部ブチのめす!」
黒き影は、レイの姿を模した“もう一人のレイ”。
だが、その表情は無表情で冷酷。すべての感情を切り捨てた、もう一つの可能性。
影レイ:「お前は弱い。“絆”だの“仲間”だの……そんなもんに縋るから、迷う」
レイ:「うるさい……それがあたしの弱さだってんなら―」
ゴオオオオ……ッ!!
その瞬間、雷の魔紋がレイの両腕に浮かび上がる。
髪が逆立ち、瞳が雷光に染まる。
レグルス:「“精霊同化”じゃねぇ。“悪魔憑き(デビル•ダイブ)”だ。俺の力を、全開で使ってみろ ―!」
雷光のごとく、レイは疾風の勢いで影のレイに突進!
激しい拳と拳のぶつかり合い、雷がはじけ飛ぶたび、空間が割れるような衝撃が走る。
影レイ:「感情など足枷だ。捨てろ」
レイ:「……あたしは、怒ってるんだよ。過去にも、自分にも、世界の理不尽さにも!だから こそ―進むしかないんだよ!!」
一発。そしてもう一発。
怒りも悲しみも、すべてを乗せた拳が、影のレイの顔面を貫く!
―ドォン!!
影が砕ける。黒い空が、雷鳴とともに晴れていく。
レグルス:「……よくやったな。雷は、破壊の象徴じゃねぇ。“始まり”を告げる鳴動だ。お前の中で、それが鳴った」
レイ:「……ありがと、レグルス。お前の声があったから、立てた」
そのとき、空間に別の二つの気配が現れる。
???:「おめでとう、レイ」
???:「ようやく“選ばれた”わけか。炎が疼くぜ……次は、俺たちとの約束を果たしてもらうぜ」
そこに現れたのは、他の二体の悪魔―
“炎の悪魔・フレ”と、“影の悪魔・シャドウ”。
レイ:「アンタたちも、まだあたしに試練を課すつもり?」
フレ:「試練というより“選択”さ。誰の力を、どう使うか……決めるのはあんた自身だよ」
シャドウ:「レグルスは合格を出したようだが、俺はまだ、お前の“心の底”を見てない」
レイは、一瞬黙り込んだ後、にやりと笑った。
レイ:「だったら、全部見せてやるよ。“あたし”ってやつをな!」
雷鳴が再び走る。
次回―
炎と影の悪魔との向き合いが、レイを待っていた。




