第20話『戦う理由、拳を握る意味』
1,終わりなき闇の空間
そこには地平も光もなく、ただ静寂と重圧だけが支配していた。
その中に、レイは立っていた。
少女のような細い体躯。だがその瞳は、炎のように揺るがぬ意志を宿していた。
レイ:「ここが……私の試練の場、か」
不意に足元の空間が波紋のように揺れる。
目の前に、幻影のようにもう一人の自分―過去の姿が現れた。
それは、まだ拳を握ることさえ怖がっていた頃の自分。
怯え、泣き、誰かの背中に隠れることしかできなかった“幼きレイ”。
幻影のレイ:「やめようよ……こんな場所、意味なんてないよ。誰かを守るなんて、私たちにはできないよ……。拳を握ったって、誰かを救えるわけじゃない……」
その声は優しく、しかし逃避へと誘う甘い毒。
レイは一歩、踏み出す。
レイ:「……確かに、私は弱かった。ずっと誰かに守られて、守る覚悟もなかった。でも、もう 違う。私は―“戦士”として、ここにいる」
幻影のレイが、少しだけ寂しそうに微笑んだ。
幻影のレイ「じゃあ、乗り越えてみなよ。私―“過去のお前”を」
空間が歪み、闇が裂ける。
現れたのは、巨大な黒い影。
武器も鎧もないが、その拳には圧倒的な“存在の重み”が宿っていた。
それは「負の感情」―恐怖、後悔、無力、そして怒り。
それらを凝縮したような存在。“黒影のレイ”。
黒影のレイ:「お前はまだ、自分を許していない。守れなかったあの日のことを、ずっと引きずっている」
レイ:「……それでもいい。私の拳は、その痛みと共にある。だからこそ、私は強くなれる」
レイが拳を構える。
型も流派もない。ただ、自分の信じる力だけを貫く拳。
―ゴッ!
衝突する拳と拳。
大地がない空間で、肉と骨が激突する音だけが響く。
黒影のレイは驚異的な力で攻めてくる。
スピード、パワー、すべてが上回っている。
だが、レイは倒れない。
その一撃一撃を受け止め、耐え、反撃する。
レイ:《私はまだ、誰一人、救えていない。だから立ち止まるわけにはいかない。倒れるわけにはいかない!》
一瞬の隙を突いて、レイの拳が黒影の腹にめり込む!
―ドン!!
黒影が後退する。しかしその顔に、恐怖も怒りもない。ただ―“覚悟”が浮かんでいた。
黒影のレイ:「なら証明しろ。その拳が、本当に未来を変えられるか」
再びぶつかり合う。
拳と拳。信念と迷い。希望と絶望。
どちらかが折れるまで終わらない、魂の試練。
やがてレイは、黒影の懐に踏み込み、拳を振り上げる。
レイ:「これは、私の決意……! 誰かの背中を守る拳だ!!」
―“破心衝”!!!
雷のような衝撃音と共に、レイの拳が黒影の心臓に突き刺さる。
黒影が霧のように崩れ、その残響だけが空間に残った
呼吸は荒く、膝は震えていた。
だがその顔には、恐怖も迷いもなかった。
レイ:「……私はもう、後悔しない。拳を握ることは、傷つく覚悟。でもそれが、誰かの未来に つながるなら、私は―何度でも戦う」
静寂の中、闇が晴れていく。
そして、その奥から響く声がひとつ。
???:「見事だ、レイ」
次なる存在が、静かにその姿を現す。
その眼光は鋭く、しかしどこか、慈愛すら宿していた。
レイの魂の試練は、まだ終わらない。
次回―
“過去”を乗り越え、“信念”を証明し、今―
“拳の意味”を問う、新たな試練が始まる。




