第18話『水風の誓い』
1,最終試練
霧が晴れ、スイの前に現れたのは一枚の扉。
それは、水と風の力を合わせた先にしか進めない。
“精霊同化”最終段階 への門だった。
スイは静かに手をかざす。
スイ:「……行こう。私の“全部”で、超えるんだ」
扉が軋むように開き、眩い光とともに彼女の意識は別の空間へと導かれていく。
幻想の世界。そこは、空も大地も水のように揺らぎ、風が命を吹き込む空間だった。 スイは宙に浮いていた。目の前には二つの光―
水の精霊・ルナリスと、風の精霊・セリファ。
ルナリス:「スイ。ここが、お前の“魂”の中枢だ。真なる融合はここで試される」
セリファ:「私たちは“力”ではない。お前が何を“選び”、どう“在る”か。それを見極める試練だ」
スイの身体を、風と水の魔力が渦巻く。
その中心に、黒い靄が揺らぎはじめる。
スイ:「……これは?」
ルナリス:「お前自身の“迷い”と“恐れ”が形になったもの。避けることはできない。向き合い、受け 入れ、超えるしかない」
靄が集まり、スイそっくりの姿をした幻影となって立ちはだかる。
だがその目は―
何も映していなかった。
影のスイ:「本当に守れると思ってるの? あの子たちを、世界を、あのときの自分すら……救えなかったくせに」
スイ:「……そうだよ。私は、何もできなかった。臆病で、弱くて……ただ泣いてた」
影のスイ:「なら、何で立ってるの?」
スイ:「……誰かに“笑ってほしい”って思えたから。誰かの“願い”を、叶えたいと思えたから。だから私は、戦う。恐れがあっても……それごと抱えて、前に進む!!」
風が唸り、水が輝き、スイの身体に光が宿る。
ルナリス:「“恐れ”を否定するのではなく、認めたか……」
セリファ:「それがお前の“本質”―“優しさ”だ」
二体の精霊が同時にスイの背へと飛び込み、魔力と精神が一体化していく。 ルナリス&シルフィル:「―今こそ、“精霊同化・最終段階”を授けよう」
光が炸裂し、スイの背に蒼き風と水の翼が顕現する。
彼女の髪は淡く揺れ、瞳は澄んだ蒼へと染まる。
スイ:「これが……私の“答え”。《蒼双精翼》……!」
その瞬間、幻影が襲いかかるが、スイは静かに構える。
スイ:「風の加護、流れの導き……風+水精霊魔法....................蒼閃風刃・流水ノ舞(そうせんふ うじん・りゅうすいのまい)........!!!」
風と水が一つの刃となり、幻影を切り裂く!
静けさが戻り、空間は光に包まれた。
ルナリス:「よくぞここまで来たな、我が契約者よ」
セリファ:「もはや迷いなし。お前は真なる“精霊の導き手”だ」
扉が再び現れ、ゆっくりと開いていく。
スイ:「ありがとう、ルナリス。セリファ……私、もう迷わない。
“この力”で、絶対にみんなを守る」
そう誓いながら、スイは試練の扉を超えていく。
その瞬間、彼女の周囲の空気がふっと震える。
魂の修行空間の一角が、静かに新たな“領域”へと姿を変えた。
ゼルグが感じる。
ゼルグ:「……次は、“影を歩く者”の番か」
そこにいたのは、静かに闇を見つめるひとりの少女―レイ。
漆黒の霧が立ち込める世界で、彼 女は一歩を踏み出そうとしていた。
レイ:「私が守りたかったもの、私が選んだ道……全部、あの時の私が捨てたのよね。だから…… 取り戻す」
彼女の足元に現れるのは、過去に背を向けた自分自身。
かつて逃げた“痛み”と“孤独”が、今、試練となって迫ってくる。
彼女の物語が、ここから始まる―。
次回―
レイの試練が今始まる!!