第132話『未来、きみへ』
1,消えた英雄
世界は静かだった。
騒音も砲火も因子も、もうどこにもなかった。
シン=アダムス。
世界を救い、神をも超えた“第18因子・ニンゲン”。
その名前だけが、いまなお、世界に残っていた。
でも――
彼の姿を見た者はいない。
2,残された者たち
第4部隊の面々は、それぞれの場所へ戻っていた。
ミゼルは、魔法研究局で新しい魔法理論を立ち上げる。
アネモネは、再建された部隊の教官となり、新兵たちを育てる。
カリナは、因子の影響で崩壊した土地の回復に奔走し、癒しの魔術を伝える。
だが皆、それぞれの部屋の片隅に、同じものを持っていた。
――あの日、シンから届いた、未開封の封筒。
3,“手紙”の開封
時は流れ、ある満月の夜。
彼女たちは一堂に会し、シンの手紙を開く。
中には、手書きのメッセージと、因子の結晶が一つずつ。
シンの手紙
「よぉ。元気にしてるか? 俺は、今、世界の外にいる。 ここには魔法もないし、因子も感じられない。
けど――世界の声は、聞こえるんだ。
風が泣いてる。
空が笑ってる。
海が祈ってる。
それは、お前たちが残してくれた“命”の声だと思う。 ありがとう。 俺が生きて、戦って、ここまでこれたのは、 全部、お前たちがいたからだ。 ……返事が遅くなってごめん。
ミゼル。
お前の痛み、ずっと見てた。
お前が笑うたび、俺は救われてた。
アネモネ。
お前の怒りも優しさも、全部が俺の背中を押してくれた。
カリナ。
泣き虫なお前に、何度も助けられたよ。
俺の答えは、これだ。
俺は、お前たち......全員が好きだ。 どれかを選ぶなんて、できなかった。
でも、だからこそ……
みんなの未来を守るって、決めた。 世界が元に戻ったなら、それでいい。
俺のことは、忘れてもいい。
でも――
お前たちが、笑って生きてくれるなら。 それが、俺のいちばんの願いだ。
最後まで、ワガママでごめんな。 シンより。」
4,夜明けの祈り
手紙を読み終えた3人は、しばらく沈黙していた。 やがて、ミゼルが言う。
ミゼル:「……バカ。絶対、許さない」
アネモネ:「……全部、聞こえてたくせに」
カリナ:「大好きだよ……シン……」
そして――
3人が同時に笑う。
それは涙に濡れた微笑みだった。
5,未来、きみへ
「速報です!!世界魔法再構築法案、可決しました!! 「“シン・アダムス記念日”」が制定!」
「誰かのために、強くなれますように」
時は過ぎても、シンの名は語り継がれる。
だけど、誰もが知っている。
次回――
それは物語の終わりじゃない。
それは、“未来”の始まり。




