第113話『侵蝕ノ福音』
1,静けさの前に
場所:エクリプス第4演習フィールド(軌道上中距離衛星帯)
各部隊が合同で行う模擬戦演習―だが、それは静かなる嵐の前触れだった。
アネモネ:「あーあ。レヴィス中尉まで演習に付き合ってくれるとか、最近のうちら贅沢よね」
カリナ:「演習ってレベルじゃないよ、これは……“制御訓練”。第1因子の封印と解放のため」
ミゼル:「でも、こうして何人かの“適合者予備”と組むのも悪くない。レヴィス中尉、何度か一緒に出撃してるし」
レヴィス(通信):「フン、演習でも命懸けなのが“因子持ち”の宿命ってことだろ? いいさ。俺は俺のやるべきことをやる」
そこへ、新たな警報―
漆黒の宇宙。
静寂の中、軌道上を漂う旧時代の人工衛星「エクリプス03」が、突如動き出す。
システムログ:
【警告】外部アクセス検出。識別不能データ侵入
【自己起動】開始
【構造再構成】進行中……
その衛星の表面が、徐々に蠢き、“呼吸するようにうねる”漆黒の膜で包まれていく。 それは、眠っていた**第10因子《ルクス=ガド》**が、AI機構に侵食し始めた瞬間だった―。
2,エクリプス本部・司令室
緊急アラートが鳴り響く中、巨大モニターに転送される衛星の変異映像。
司令:「……あの因子か。過去最大の機械系侵蝕因子、ルクス=ガド」
技術士官:「ですが、以前の観測記録では完全に沈黙していたはずです……!」
司令:「“目を覚ました”んだよ。シンの因子制御が進みすぎてな……それに、奴の狙いは、 今回、“機械”だけじゃない」
そのとき、モニターに映る衛星が突然地球に向かって落下を開始。
その大気圏突入コースの延長線上には、訓練中のシンたち第4部隊の演習区域。
3,地表・演習区域
シンたちは訓練中。アネモネや仲間たちは因子制御や連携訓練を行っていた。
アネモネ:「最近のあんた、調子いいわね」
シン:「……まあな。でも正直、全部使いこなせてるとは言えない」
その瞬間、空が裂け、“光の筋”が落ちてくる。
衛星だったモノは、落下しながら変形し、旧型の立体戦装のような形を模倣し始めていた。
そして、不時着の衝撃波で演習場が吹き飛ばされ、シンたちは戦闘態勢へ。
4,戦闘開始
衛星に擬態していた**第10因子《ルクス=ガド》**は、**巨大な“黒い兵器の影”**となり現れる。
アネモネ:「これ……AIでも立体戦装でもない。中身がない“殻”が動いてる……因子 だ!!」
シンは、ラゼミルのブルーアーマーとケルアスの槍で戦うが、何度倒しても再構成される。
仲間たちも次第に追い詰められていく。
シン:「レヴィス中尉、退避を―!」
だが遅かった。
イロヴェルの触手が、レヴィスの因子適合値の“断片”に反応し、“半融合”を引き起こす。
レヴィス:「ぐ……があああああああっ!!」
彼の機体が黒い装甲に覆われて異形化し、味方を襲い始める。
戦装の一部が“黒い神経”のようにうねり、彼女の体と融合していく―。
レヴィス:「……これが、ワタシ。ワタシは、ワタシじゃない」
5,仲間を討てない葛藤
シン:「やめろ!お前はレヴィスだろ!? 目を覚ませよ!!」
暴走したレヴィスは、シンに猛攻を仕掛けてくる。攻撃の合間、彼女の“心”がかすかに漏れ出す。
レヴィス:「……たすけて……」
シンが過去にアネモネに言われたことを思いだす。
アネモネ:【あんた、今まで取り込んできた因子、ただの力だと思ってるんでしょ。でも、それって―きっと“誰かを守るための鍵”なんだよ!!】
シンは叫ぶ。
シン:「俺は、力をただ振るうために因子を集めたんじゃない!!“自分を超える”ってことは、こういう時のためだろ―!!」
6,初の因子封印モード
全身の因子が呼応する。
ニヴル、ケルアス、ラゼエル、シャークエル、ラゼミルの結晶が胸部・腕部・頭部・脊髄に浮かび上がる。
シン:「因子制御術式・封印結晶《コード:インバース》、展開!!」
すると、空間に円環の封印魔法陣が展開され、暴走したレヴィスとルクス=ガドが拘束されていく。
巨大な結晶となり、因子結晶状態で封印完了。
7,不穏
封印直後、結晶が不気味な揺らぎを見せる。
ルクス=ガド:「次は……神経に……潜む……内から……壊す……」
司令(通信):「ルクス=ガドは、AIや兵器のみにあらず。 “人間の精神”にも侵蝕できるようになっているとすれば……シンの器にも、例外はない」
シンは崩れ落ちたレヴィスを抱きしめながら、心に誓う。
シン:「俺がこの力を制御して、世界を取り戻す。アダムもイブも、超えてやる……」
次回―
地球圏・南部半壊都市跡地編




