第11話『代償と前進』
1,決着
巨大な魔力の塊―“反魔獣”最終形態は、
まるで世界そのものの拒絶の意思が具現化したかのようだった。 空間を裂くほどの圧倒的な咆哮。
空は赤黒く染まり、大地は次々と崩れ落ちていく。
ゼルグ:「これは、“試練”なんて甘いもんじゃねぇ……!」
異形の巨体が腕を振るい、
周囲の空気すら重く変化していく。
シン:「っぐ……!」
“悪魔同化(デビル•ダイブ)”を発動したシンは、確かに反魔獣に一撃を与えた。 だがその代償として、彼の身体は限界に近づいていた。
筋肉が軋み、視界は二重にぶれる。
身体に刻まれた黒い魔紋が、脈動しながら体力を蝕む。
ゼルグ:《今の状態じゃ……保ってあと数分。だが、こいつはまだ立ってやがる……》
反魔獣が、異形の口から禍々しいエネルギー波を放つ。
ゼルグ:「避けろシンッ!!」
シンはすんでのところで避け、跳び上がり―
シン:「霊魂+反魔法...........断魔・双極........!!!」
霊魂魔法の光と、反魔法の闇が2つの斬撃を生む。
キィィィィン!!!
シン:「……ハァッ、ハァッ……くそっ……化け物め……」
頭の中に、これまでの記憶が断片のように蘇る。
父との最後の会話。
スイとレイと笑い合った日々。
「守りたい」と願った、たった一つの想い。
―それだけは、失いたくない。
シン:「これが……俺の限界なら…… 限界ごと、ぶっ壊すしかねぇだろ……!」
刀を握る手に、さらに力を込める。
ゼルグの魔力が黒い稲妻となって再び刀を包み込む。
ゼルグ:「おい……本気か。お前、その身体でもう一発打てると思ってんのか?」
シン:「関係ねぇ。――これは、俺の“意志”だ!!」
魔紋が暴走し、全身を走る激痛。
だが、それでも立ち止まらない。
シン:「霊魂+反魔法........断魔・終式.....!!!”」
黒き雷光が天空を裂き、
反魔獣の全身を貫く巨大な斬撃が炸裂!
反魔獣:「ギアアァァァァアアアアア!!!!!」
その咆哮が響いたのを最後に―
反魔獣の身体が音もなく、崩れ落ちていった。
2,静寂
焼け焦げた空間に、シンだけが立ち尽くしていた。
シン:「ハッ……はぁっ……はぁぁぁ……」
だが、すぐに膝をつく。
口元から血が滴り、身体を蝕む魔紋が暴走を始めていた。
ゼルグ:「言ったろ……これが“代償”だ。悪魔の力は、そんな簡単に借りられるもんじゃ ねぇ」
シンは苦しみながらも、歯を食いしばる。
シン:「でも、俺は……これを超えなきゃ、前に進めないんだ……!」
ゼルグ:「……チッ。クソ真面目なガキめ。だが、そういう奴が……一番強ぇのかもな」
ゼルグは、初めてどこか優しい目をした。
ゼルグ:「俺は人間だった頃、父親を……“力”で救えなかった。だから今でも後悔してる。お前の目には、そのときの俺と同じ“決意”があった」
シン:「ゼルグ……」
ゼルグ:「これから先、お前はもっとデカい敵に出会う。もっと強い“絶望”が来る。 だが、忘 れるな。“守りたいもの”がある奴は、絶対に折れねぇ」
霧が晴れ、試練の空間がゆっくりと消え始める。
ゼルグ:「修行は、まだ続く。次は、“心”の奥にある闇との戦いだ」
シンはゆっくりと立ち上がり、拳を握りしめた。
シン:「俺は、負けねぇ。力にも、過去にも、そして……自分自身にも」
シンは、誓った。もう誰にも負けないと。
次回―
反魔法を完全に使えるようになったシン。
新たな試練が幕を開ける!