何故二つ
「最近のですね、蘇りがあるからと一回目の死を隠したり、色々ややこしいからってそれに触れないようにする風潮に異を唱えたいとか言ってましたね」
「律儀な人だね。大怪我とか病気でもあえて言わなかったり、今みたいになる前でもさ、亡くなられてすぐには公表せずに期間空けてからニュースになったりしてたのに」
「それだけメッセージ伝えたかったんでしょうかね? 相変わらず会見の時、目力強かったですよ」
「そう言えば死因は? 回数だけ先に聞いちゃったな」
「あー、変ですよね。改めて考えてみると。心臓発作とか言ってましたけど……、それこそ一回ぐらいならまだセーフみたいな感覚になってきてますよね」
「俺はそこまでではないけど……、いや言いたいことは分かるよ。『これから気をつけなければいけないな』みたいに一瞬考えてしまう時が。次があるからと」
「なんでこうなっちゃったんですかねぇ」
「自然現象とかゾンビウイルスみたいなものとか言うけど、結局信頼できる説が何もないままなんだよ。そういう特性を持つ人達が産まれ出したとかじゃないのは、世代に関係なく起こっているから否定されてるな。個体差とかもなく恐らくほぼ一斉にそうなってる」
「不思議ですね」
「最初の頃は勘違いとか事実誤認とかよく言われてたけど、今でも集団幻覚とかみたいに言う人はいるね。命が二つある――『ダブル』とか言う人もいるみたいだけどそういう思い込みが認知を歪めるから、死にかけただけを死んだと勘違いしたとか。結局何も分かっていない」
「じゃあ神様の祝福とかですかねー」
「そんな軽い感じで言う言葉か?」