蘇りなのか
「ああ、最初から順番に説明すると、霊安室あるだろ? 本館の」
「三嶋先輩が帰りが遅い時とか夜勤の時は近くに行きたくない、ってビビってた場所ですね」
「お前もビビってただろ」
「だって怖いですから」
「……それで昨日の夜帰る前にたまたま霊安室の近くを通ったら、後ろから声をかけられて」
「青沼さんに?」
「違う。まあそれだったらいかにも怪談でよくありそうな展開だけど。軽く悲鳴は上げてしまったし」
「軽くで済んだんですか?」
「自分でも思ったよりは軽くだったよ。というかあの人結構前から歩けなくなっていたはずだ」
「蘇ったら全快、って訳にはいかないんですね、確か。そりゃそうですよねえ、それだったら都合良すぎますし」
「それで、声かけてきたのが青山さんのお孫さん――ひ孫だったかな? 「なんか生きてるみたいです」と」
「結局、青山さんは死んで無かった、って訳ではないんですよね?」
「ちゃんと呼吸も瞳孔も確認してたってご家族の方も認識してたし、そこは多分もめてはいないみたいだったな。まああの段階ならそれどころじゃなかったかも」
「もし生きてるのに死んだって誤診してたら大問題ですけど……、ドクターの領分ですからその辺りの感じは良く分かんないですけど、最近の感じだったらそれよりも先に蘇りの方が疑われるんでしょうね」
「うん。今から考えてたら割と落ち着いてたね、その子も、他のご家族さんも。本当に蘇りなのか確認取りに来たようなレベルで」
「それで青山さんの薬が今日も出てたんですよね」
「ああ。死亡処理してたのに、システムで青山さんのデータ復活させるの普通にできるとは知らなかった」
「そりゃそうでしょうね。ケアレスミスだってあるに決まってますし」
「だよなあ」
「それで――、着信来てますよPHS」
「ん? 沢口さんからだ」
「看護師の沢口さんですか? 病棟の。ご指名ですね」
「はいはい。あ、お疲れ様です。薬の中止ですね。時間は全然大丈夫ですよ。どなたですか? あ、電カルの方にも指示飛んでますね。――青山さん?」
「え?」
「亡くなられた? 昨日の話じゃなくて今日? ……つまりもう一度、と」