良い事
前話、一部修正しています。(7/27修正)
(前話の5行目、分かりにくいので大まかな日時を追加しました。)
「この手の新しい話っていうのはそうなりがちです」
「特にこれは検証不可能なのをいいことに滅茶苦茶言ってるんだろうな」
「でも、本当ならいい事だと思いますけどね」
「いい事?」
「メリットが大きいでしょ? 生きたくても生きられない人にチャンスが生まれるんですよ」
「辛い人生の終わりが伸びてしまう場合もあるだろうけどな」
「言い出したら切りないですよ。長生きして後悔することもあるでしょうけど、一般的にはそれこそいい事でしょ」
「そう……だな。命が二つあるようなものなら損はしないはず」
*
約九か月半前、15時、休憩室。
「疲れた……」
「なんか老けましたね」
「お前……、いやもういいわ。もう年だから疲れが顔に出るんですよ」
「そんな卑屈にならないで下さいよ。おじさんがすねても可愛くないですよ」
「言っとくが、四つ下のお前も十分おじさん予備軍だぞ」
「うっ。嫌な現実を思い出せないで下さいよ」
「現実は現実だ。見ない振りした所で数字は増えていく」
「はー、勤続28年でこんなに絶望したのは初めてですよ」
「大げさな。……勤続28年?」
「……あっ、間違えました」
「それだと金井君は産まれて即働いていることになるぞ」
「すみません。適当に返事していたので、つい」
「おい」
「ははは。ちょっと元気出ました?」
「余計疲れたから早退したい」
「それで青沼さんの件って、何があったんですか? うちの病院で初めて蘇りが起きたって噂は回ってきてますけど、三嶋先輩が関わってるんですよ?」
「ああ、それでその第一発見者なのが――少なくともここの職員では俺が初めてそれを見たと言うかその場に居合わせたと言うか、巻き込まれたというのは違うか」
「回りくどいんで要点まとめてもらっていいですか?」
「……青沼さんの蘇りを俺が教えてもらった、以上!」
「すみません、僕が知りたかったのは要点よりも詳細だったようです。――教えてもらった?」