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二つだから、二つでも

 父が癌になったと知らせが来た。

 母から知らされた。まだ母は連絡を取っていたのだ。

 少なからず動揺した。金井の死を知った時と同じ様に。


「命や死に関わるニュースは増えて来たけどね、日常みたいなものだと捉えられて来てるね」

 うちの病院の薬局長の、独り言の様な持論の様なしゃべりは『ダブル』後に多くなった印象だ。

「病院で働いててもさ、関わりの少ない診療科の死はデータとして流れているように感じてしまうよね。そもそも世界中の紛争地帯や貧困とかさ、飢餓の話題はもとから途切れる事はないし、一部しか報道されてないだろう不幸な境遇や悲劇もさ、想像して心を痛めたりするけど、それって人間の一生の中で極わずかだよね。

だからさ、時に二つあるからと軽んじたり、時にあと一つしかないと狼狽するようなさ、極端な反応も目にしたり耳にしてきたけどね、前と特別変わりはしないんだよ。自分にとって関わりがあるかどうかでさ」


 ろくな根拠も示されていないデマの可能性が高いが、こういった噂話が流れてきている。『命が二つに増えたんじゃなくて数年間の猶予が与えられただけだ。一度死んだ人は何もなくても数年以内に動かなくなる』と。

 「嘘だろ? 俺はゾンビになったのか?」、「命を粗末にする人が損をした」、「神の慈悲だ。大事にすればかけがえのない時間を得られるのだ」――。


          *


二年後、昼過ぎ、食堂、金井の不安の吐露の後。


「でも、まあ割と大丈夫ですよ」

「……それだったらいいけど」

「心配かけてすんませんね、旦那」

「それは誰が誰に言ってる想定のセリフだ」

「そう言えば先輩、あれの最終回見ました? 今シーズン一番人気あったドラマの」

「【ふたつ】だろ? 見たよ。話題にもなってたな。たしかクライマックスで子供の方が、一度死んでしまった親を抱きしめて『私の分を一つあげたい』、『そっちに移らないかな』って言う」

「一緒に見てて感動した彼女がね、それしてくれました」

「……のろけか」

「へへっ、すみません」


 二人とも、笑った。


           終わり

設定ミスで完結にできていなかったので上げ直しました。

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