ハラスメント・差別
「まったくもう……」
「何なんですかね、あれ。山本さんの言い分としては一回死んだことがあるか分からないと怖くて十分な看護できないとからしいですけどね」
「いやいや今までずっと、それこそ山本さんなら何十年もそれでやってきたはずなのに。どうしてそんなこだわる」
「知りませんよ。あの人の場合文句が言いたいだけじゃないんですか? で、目についたと言うか気になったのがたまたまそれとか」
「困るなぁ。どうせ『法律違反じゃないでしょ』とかまた言ってるんじゃない?」
「でもハラスメントとして問題になっていますし」
「就職差別とかも聞くしね。さっきの志望者が増えたとは逆で、えり好みというか『当社の求める人材は、一度も亡くなられたことがない方です』とか何とか」
「よくそんな事言いますよね。その時点で逃げた方がいいっすよ、そんなブラック会社。真っ黒ですよ」
「いくら二つあったって、粗末に扱えば結局同じなんだって。ありえないだろ。どれだけあるよ? 同僚が亡くなるなんて経験」
「……ほんとですよね」
「親御さんとか家族じゃなくてさ。そんな職場環境滅茶苦茶だよ保険があるから大切にしなくても大丈夫な訳じゃないんだよ」
「――それでですね、このまま行ったら山本さんの件、倫理委員会で協議するとか言う感じになるんじゃないですか? 知りませんけど」