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たった二つ

 『ダブル』から社会は大きく変わったとされるが、それでも根底にあるものは不変であるとの論調も増えてきている。社会の変革や世界的危機とされているものでも、多くの人間に直接的に関わる部分は限定的だ。『ダブル』も同様に。

 たとえ保険があるとされても自分の、そして他者の命を軽んじることができる人間は極少数しかいないのだ。事件や事故でセンセーショナルに報道されてインパクトがあっても、ニュースになるのはそれが普通ではないからだと。

「当たり前じゃない。そんな命を粗末にするなんて。たった二つしかないのに」

 母の様子を見に久しぶりに帰省した時、母は度々それらの話題についてこう口にしていた。金井君の懸念とは違い、一つでも二つでも関係なく、そんな事ができる方がおかしいと。

 それは自分のこれまでの体験からも頷けるものもあり、素直に賛同した。

 それまでの印象的な事は――命の問題は、ほとんどが当たり前じゃない人や集団、通常ではない状況によってもたらされたと。

 ただ、

「そういう人達は死んだ後に裁きを受けるのよ」

 宗教にはまっていた頃の父と似たような言葉を母が発しているのは気になった。


 そして、もう一つ。

 物置みたいにされている昔の自分の部屋で、横になる前に思い出した。


 「たった二つしか」、か――。

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