一つになって
「えっ? ……いやいや……。……えっ?」
「――言葉の通りですよ」
「冗談――ではないよな。そういう事まで冗談にするような奴じゃないよな、お前は」
「そう信じてくれるんならありがたいです」
「違和感はあったんだよ。なんで今日は飲みに誘ってきたのかとか、元気ない時が多いのにたまに変に明るいと言うか、無理してる感じもある」
「人の事よく見てますね」
「そうかな」
「観察されすぎて若干キモいですね。はは……」
「それで、なんで死んでしまったんだ?」
「二月にスノボに行った時に、コースから少し外れて崖から落ちてしまったんです。大した高さではなくて受け身取れれば骨折も無そうなぐらいだったんですが、そこに落ちてあったストックが首に刺さって」
「うわっ……。大丈夫、じゃなかったんだよな」
「――ええ。血が結構出ていって、割と意識は保ててたんですけどしばらくしたら目の前が真っ暗になって、数分か十分以上たったのか分からないんですけど気がついたら割と体調が良くなってたんです。体は少し重たいですけど普通に立ち上がれて。ただそこで雪一面に広がる血と、首筋に穴が塞がった後のような傷跡だけがあったので、そこで自分が死んだ事に気づきました」
「そうか」
「壮絶でしたね。救助の人が来るまでは、こんな光景見せられた人は悲惨だろうな、とか、これからどうしていこうか、とか色々考えました」
「……お前、泣いてるのか」
「あっ、涙が出てしまってたみたいですね。うん、大丈夫ですよ。切り替えれました」
「本当に大丈夫か? そうか。……皆には知らせたのか? いや知らせてない感じか」
「親とか一部の人にだけです。あと三嶋先輩は言いやすい距離感だったんで」
「ほめ言葉みたいなもんと受け取っとくよ」
「めんどくさい所ありますけど」
「おい」
「ただ、どうしても怖いです。聞いてはいましたがこんな気持ちになるのかと。おかしいですよね、次死んだら終わりなんだな、って。こんな気持ちでこれから生きていくんだなって――」
「知らず知らずの内に感覚がマヒしてたのかもしれないな。ダブルが当たり前だと」
「ちょっと前なら考えられ無いはずですね」
「でもさ、二つあってよかったんだよ。それはきっと間違いない」




