二つの魂の捉え方
「ゴールデンウィークは帰るのか?」
「別に大して休みないですよね今年は。そんなんでいちいち帰らないですよ」
「ふーん。相変わらずご両親と仲悪いのか」
「そんなことないですよ別に、仲良くないだけで。――意外と嫌われてはなかったみたいですし」
「? それならまあよかった。ま、そんなもんじゃないか? 家族って」
「家庭も持っていない人が分かったような口ききますね」
「うっさいな」
「お盆は分からないですけどね」
「お、そうか。集まる人も多いだろうし、たまには顔だけでも出した方が」
「なんか意味あるんですかねえ? 顔を出すだけなんて」
「いや、それ言い出したらだいたいそうだろ。伝統とか地域の習慣とか」
「そういうふわっとしたものの為にやたらと私生活を詮索されたり、ただの嫌味でしかない説教聞かないといけないもんですかねえ」
「ずいぶんと居心地の悪そうな実家だな」
「まあ僕のせいもあるんでしょうね」
「今日はずいぶん殊勝だな」
「僕はいつもこうですよー。そもそもお盆って、亡くなった人とかご先祖様が返ってくるとか言いますよね」
「そだね」
「じゃあ一回だけ死んだ人の場合は、お盆に帰ってきます?」
「ええ? いやいや何言ってんだ」
「――ただの冗談ですよ」
「いや冗談って……。もしそう言う事主張するんなら――、そうだな、人間の中にスペア用の魂があるって概念持ってるという事になるのか。本体? とスペアの二つが。そしてスペアは生きてるのに元々の魂だけあの世に行っててお盆に再会と。うーん、普通の感覚なら『ダブル』は体から離れていこうとする魂が無理やり引き戻されて起きているような……、改めて考えるとどっちも良く分からない与太話だな」