死にまつわる噂
「神の施しは信じるものには誰にでも与えられるんです。ただそれに気づかなかったり、その恩恵に感謝しなければ呪いとなるのです」
「ゴホッゴホッ。びっくりしてイモが詰まりそうになったぞ」
「嚥下機能落ちたんじゃないですか?」
「栄養士みたいなこと言うな。話が急にうさん臭くなったからだよ。それっぽい事だけ言い出して――いや、むしろ正しいのか?」
「そんな訳ないでしょ。ただの口からのでまかせです」
「お前はいつも適当な話をする」
「でも神様かどうかはともかく、考え方次第っていうか、それを受けてどうするかじゃないですか? 新しい世の中に適応できるか。人によってはうまく利用してくでしょうし」
「そんな事できるのか? というかしていいのかって躊躇しそうなものだけど……、人によるか。それこそ命を粗末にしてるのかと言いたくなるような人間はいくらでもいたか」
「今もそうですけど、これからさらに色々変わっていくんでしょうね」
「世界は絶えず変化し続けていきます。激動の時代、寄る辺となる導きが必要となります。信じる者は救われますよ」
「何ですかそれ。先輩が言い出すとうさん臭さが半端ないですね。壺とか絵とか買わされそうで」
「うるさいな」
翌週、今度は若手俳優の内野と言う人が撮影中の現場で亡くなった。死因は触れられていない。報道の内容から推測するに二回目だ。
今の所訃報と言うセンシティブな性質のせいか、報道では一回目とか二回目とか言った表現は避けられている。これは今回の件だけではない。注意してニュースを見てると分かるが報道番組のコメンテーターとかならともかく、アナウンサーがそう言った発言をしている場面は見た事がない。
僕は良く知らなかったが内野は去年から色んなドラマや映画に出ていて10代を中心にかなり人気が出ていたそうで、短期的ではあるけどその死の注目度は高かった。
ネットでもその名前を見かける事が多かったが、その注目のされ方はテレビとは様子が違っていた。
その性質の通り憶測ばかりだが、曰くつい最近内野は一回目の死亡にあったが、それが問題の多い現場で起きており、蘇ったから口外される事なくそのまま撮影は続行されていた。曰くすでに一度プライベートで死んでいた、または自殺していたが撮影現場には伝えられていなかった。曰く内野は小さい頃に一度死んでいたので、今回の一度の死亡だけでもう蘇らなかった。――それでは理屈が合わない。命が二つになったのはこの一年でだ。
そして特に多かった噂が、内野が事故にあった場所はセットが崩落して救出困難な状態になり、その場で内野が生き返ったにもかかわらずその後の救助が間に合わず再度絶命した、と。