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人形マニアからの挑戦 前編

「さー! ご主人ちゃま! ぷるるんお化けに一泡吹かせるのです!」

「ワコ、駄々こねるからそのままにしてるけど発言次第では戻すよ?」


 ノヅチ戦の時にワコを出して以来、自分も参加すると言って聞かない。

 さすがに強引に戻そうとしたけど、生徒達に囲まれてあっという間に人気者になってしまった。


「ワコちゃん、神の子のまねーじゃーなんだって?」

「うむ! ご主人ちゃまへの申し立てはワコを通すのです!」

「申し立てだって! かぁわいい! リーエルちゃんみたいに陽夜君に抱き着きたい!」

「許可するのです!」


 何してんだ、あのポンコツマネージャー。

 女子がとんでもないことを言い出してるんだぞ。

 ただでさえおっかない顔をした女子がオレの周囲に複数人いるってのに。


「へぇ、鬼姫(きき)には頭突きしたのにねぇー?」

「だからキスしようとしたからだろ」

「陽夜、許可があればそうしていいと解釈していいのか?」

「ダメだからね、ヒリカ」


 ここ最近になって鬼姫(きき)とヒリカまで追加されたくらいだ。

 リーエルはオレの右手を、華恋(かれん)はオレの左手を抱き込んで確保してくる。

 いいからとっとと訓練が始まるぞ。


「陽夜君! いちゃついてる場合じゃないですよー! そろそろ始めますからね! ワコちゃんは森から出てくださいね!」

「ご主人ちゃまに変なことしたら許さんのです」


 変なことってなんだよ。

 まぁ複数の日本人形で襲わせる行為は確実に変態だけどさ。

 というわけでオレ達は森の中でそれぞれ分散して配備、対して日本人形達総勢五十体が待ち構えている。

 いや、五十体って。


「さぁー! 始めちゃってくださーい!」


 なんであんなに楽しそうなんだよ、あの先生は。

 開戦と同時にオレは即霊力感知を広げた。

 森の至る所に点々と日本人形らしき反応がある。

 ところが――


「は……?」


 複数人の生徒達の霊力反応がいきなりその場から動かなくなった。

 これはつまり開幕で数人がやられたということだ。


「きゃあぁーーー!」

「は、はやっ……」

「ちょ、無理だって……」


 遠くからすでに悲鳴が上がっている。

 遠目に見ると日本人形がひゅんひゅんと跳ねて生徒達を攻撃していた。

 なんだ、これ。高熱でうなされた時に見る悪夢か。


 不和利先生の言う通り、あの動きは入学試験の時とは比べ物にならない。

 機敏な動作で生徒達の攻撃を回避して、カウンターまでくらわせていた。


「おいおい、このままじゃ数分で全滅コースだぞ」

「ヨソミシテルヨユウハ、アルノカ」


 と、上から奇襲してきた日本人形に対してアッパーをくらわせた。

 動きを止めた日本人形が転がるも、続けてもう一体が向かってくる。

 いい機会だから気絶のカラクリを解明しよう。


「さぁこい!」

「ヨユウカマスナ。ブチコロスゾ」


 なんでこんなに口が悪いんだよ。

 日本人形の拳がオレの腹に直撃、すると身体の内側から何かが膨れ上がる感覚を覚えた。


(こ、これは……!)


 頭が白塗りに上書きされていって、意識が刈り取られつつある。

 その刹那、オレは理解した。


「……はぁあぁぁッ!」


 体内から霊力を発した。

 パッと霧状に分散した霊力は一時的に空中へ漂ってやがて消えていく。

 なるほど、なるほど。すべてを理解した。


「ナンダト」

「ていやぁっ!」


 日本人形に蹴りを入れて黙らせた。

 これで二体、まだまだ敵は多いだろうな。

 だけどこれはすごく面白い。


 あの日本人形は瞬間的に相手に霊力を大量に注ぎ込む。

 霊力を注ぎ込まれたほうは許容量をオーバーして耐えきれずに気絶してしまうんだ。

 確か専門用語で霊力飽和(ライフバーン)という。


 前に一度だけ父さんから教わったことがある。

 霊力が少なすぎても同じ状態になって、こっちは霊力枯渇(ライフロスト)という。

 霊力は多すぎても少なすぎてもよくないということだな。


 そこでオレは霊力飽和(ライフバーン)の直前に注ぎ込まれた霊力を発散した。

 とはいえあんな芸当、退魔師でもできる人間はなかなかいないんじゃないか?

 霊力操作の極致ともいえる神業だろう。


「さすが不和利先生、上の位ってだけあるなぁ」

「ヨーヤ、見て」

「リーエル?」


 リーエルがやってきて大量の日本人形を抱えていた。

 要するにこれだけの日本人形を倒したと言いたいんだろう。


「オレでさえ二体しか倒せていないのにすごいなぁ」

「終わったら抱いて?」

「いや、それは色々と誤解があるから……」


 リーエルが日本人形をボトボトと落として両手を広げてきた。

 ひとまず戦闘中ということで説得して、オレは再び撃退に動く。

 ところが日本人形達が寄ってこなくなった。


「おかしいな。まさか不和利先生、ターゲットを変えたか?」

「あ、華恋(かれん)


 遠くで華恋(かれん)美しい雪月花(ディアアプロディ)で日本人形を機能停止していた。

 ところが残った日本人形がすたこらさっさとばかりに逃げていく。

 逃げるなんてありか?


「陽夜、調子はどうだ?」

「ヒリカ、何体か倒したんだけど寄ってこなくなったよ。どうも逃げたみたいだ」

「逃げただと……。不破先生、それでは訓練にならないではないか」

「いや、なんか嫌な予感がするんだよな」


 オレは霊力感知に集中した。

 日本人形達が明らかに生徒達から離れていくのがわかる。

 しかもそれだけじゃない。

 日本人形はオレ達から距離を取った後、一ヶ所に集まっていた。


「リーエル、ヒリカ。急いであっちにいくよ。不和利先生が何かする気だ」


 オレにヒリカとリーエルが続く。

 森の中を走り抜けると開けた場所に出た。

 木々が少なくて、山の風景を一望できるいい場所だ。


 そこの一角に日本人形達が集まっていた。

 まるで組体操のピラミッドみたいに積み重なっている。


「おい、絶対やばい。あれを止め――」


 止めようとした直後、日本人形達が一塊になった。

 ボフンとばかりに煙を立てて登場したのは――


「な、なんだ、これは……」

「マジかよ……」


 日本人形がオレ達を見下ろしている。

 そう、つまり合体して巨大化しているってことだ。

 退魔術の凄さよりもオレは先に呆れてしまった。

 キングスライムかよ。


「不和利先生、これ何がしたいんだ?」

「ガキドモ、コレデオワリダ」


 日本人形が地面に向けてパンチを放った。

 ピシッと地盤に亀裂が入る。


「いやいやいやいや! なんだよ、この化け物!? 不和利先生、これどういうこと!」

「ビックリさせちゃいましたねぇ。だから言ったでしょう。少しだけ本気を出します、と」

「少しってレベルじゃないだろ! あんなのくらったら無事じゃすまない!」

「大丈夫ですよー。皆さんの実力に合わせてギリギリに調整してますからー」

「やってることがアウトなんだよなぁ!」


 日本人形がまた腕をググッと動かした。


「クッソ! 危ない!」


 ドゴン、と拳が地面にめり込む。

 なんだ、これ。バカじゃねえのか。


「皆さんには協力してこの巨松ちゃんを倒していただきますー! 昨日の敵は今日の友! ケンカしている場合ではありませんよ! ファイトォッ!」


 いや、冷静に考えろ。

 こいつはでかいだけでスピードは大したことない。

 だとしたら後は総攻撃を浴びせるだけだ。


「なんだこれ! で、でかい!」

「せんせー! こんなの倒せっこないよ!」


 集まってきた生徒達もさすがに驚いている。

 不和利先生のやりたいことはなんとなくわかった。

 さすがにやりすぎじゃないのかと思わなくもないけど、わかった。

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