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防衛ゲーム 2

「アッハッハッハッ! 気持ちぃ~~!」


 森の中で鬼姫(きき)は存分に戦っている。

 鬼姫(きき)は誰が襲いかかってこようと、全然問題ない。

 クラスの皆には拠点を守っておけっててきとーに言ってある。


 だってこんなゲーム、鬼姫(きき)一人でらくしょーでしょ?

 防衛ゲームなんていうけど結局は全員を倒せばいいだけ。

 神の子もなんでこんなゲームをやろうなんて言い出したんだか。


鬼姫(きき)ちゃん! 覚悟ッ!」


 さっそく男子が地面を蹴ってかかってきた。

 悪くないけど鬼姫(きき)に挑むにはまーだ早い。


「いけぇっ!」

「ぎゃっ……!」


 男子に回し蹴りを入れると色がパッと消えた。

 おりょ? でも蹴ったのに吹っ飛んでいかない?

 これがせんせーが言ってた退魔術の効果?


 そうじゃなきゃ鬼姫(きき)の蹴りを受けてへーぜんとしてるなんてあり得ないからね。

 でもこれであいつはたいじょーでしょ。


「はーい、ヨワヨワ君はとっととたいじょー!」

「……ハッ」

「んりゅ?」


 こいつ、今笑った?

 負けたくせにすごいメンタル、と思ったら後ろから二人飛び出してくる気配が!


「……ッ! あっぶなぁい!」


 追加で茂みから二人が攻撃してきた。

 それぞれ霊力で練り上げた棒と霊力をまとわせた拳!

 でもちょーっと距離が足りないんじゃないかなぁ!


「まとめていっけぇ!」

「きゃっ!」

「わぁっ!」


 棒をしゃがんで回避、そのまま両手を地面についてからの両足飛び蹴りで二人同時に撃破!

 どんな態勢からでもカウンターできるのが鬼姫(きき)の強さでもある!

 そしてこの感触!


「きっもちいぃーーーーー!」


 やっぱりこんなゲーム、鬼姫(きき)一人でらくしょー!

 さーて、次はどこに何が隠れてるかな?

 どれどれ、鬼姫(きき)が残らず全滅させちゃうよ?

 どこかな、どこかな?


 そういえばいつもの戦いと違って一発でもくらうとアウトだからね。

 つまりいくら鬼姫(きき)がつよかろーと、一発を入れるのに必死ってわけだぁ。

 なーるほどねー。敵も考えるねー。


 そうなると、まさか最初の奴は囮で今の二人が本命?

 しょぼい作戦立てちゃってさぁ。

 大体、戦いってのはそんな甘いもんじゃないの。


 相手がなんであろうと全力勝負、獅子はウサギを狩るのに全力を尽くすってとーちゃんが言ってた。

 そうしないと肝心な時に全力の出し方を忘れて死ぬ。

 だから鬼姫(きき)は修行も一生懸命やった。


「神の子もヤキが回ったかなー? こんなゲームでごまかしたってだーれも強くなれないよぉ」


 草木を分けて、木の枝に飛び乗って上から探してみる。

 だけど誰も戦ってない。

 せっかくのゲームなのに皆、何をしてるんだろ?


「なんか全然見つからないなぁ?」


 本当に急に誰も見つからなくなった。

 その辺の茂みに隠れてるかと思ったのに、どこにもいない。

 それなのにどこからか見られている気がする。


「んむーーー! どぉーーこだぁーーー!」


――ガサッ!


 茂みが揺れて何かが飛び出してきた。

 あそこにいるのはヒリカのクラスの男子!

 くるか、と思ったら背中を見せて逃げ始めた。


「逃げるとかおくびょーだねぇー! 逃がさないよッ!」


 あんなノロマで逃げ切れるわけないんだよねぇ。

 しかもここは山の中、こういう場所でも鬼姫(きき)はちゃんと動き回れる。

 神の子には耐えられちゃったけど、鬼姫(きき)の運動能力は学年でもトップだかんねー!


「ほらぁ! 追いついた! いく? いっちゃう!?」


 男子の後ろに飛び蹴りを入れた。


「うあっ!」


 男子の色が消えてまた一人、退場!

 戦いから逃げるような奴に鬼姫(きき)は倒せない!


――ドンッ!


「え……」


 鬼姫(きき)の体に何かが当たった。

 同時に鬼姫(きき)の色が消えて、地面に落ちたのは矢だ。


「え、え? なんでぇ? ウソ! ウソウソウソォ!」


 鬼姫(きき)の色が消えたということは失格?

 誰が、なんで。


「獲物を見ると目の色を変えて襲いかかる。獣と同じ要領で仕留められるとはな」


 遠くにいるのは弓矢を構えたヒリカだ。

 あいつ、あいつが鬼姫(きき)に矢を当てたの?

 あんなところから?


「悪いとは思ったが最初、お前に襲いかかったクラスメイトは囮だ。彼らではお前は倒せん、が……。お前は彼らを倒したことで必ず油断する。こんなものかとな」

「まさか鬼姫(きき)を油断させるためにクラスメイトを襲わせたってこと!? なにそれぇ!」

「油断したお前は逃げる相手を見れば必ず追いかける。すべては最大の隙を生むための布石だった。言ってしまえばそうまでしなければお前を仕留めることはできなかった」

鬼姫(きき)は……」

「ん?」


 鬼姫(きき)はヒリカに拳を向けて構えた。

 鬼姫(きき)はまだ倒れてない。

 鬼姫(きき)はまだ生きている。


鬼姫(きき)、こんなの認めない! こんなゲームでズルして勝ったって鬼姫(きき)が負けたわけじゃない!」

「お前は負けた。ルールだろう」

「そんなのどーでもいい! 鬼姫(きき)は負けてないもんねぇー!」

「チッ……!」


 ヒリカの弓矢なんて鬼姫(きき)には当たらない。

 普通に勝負したら鬼姫(きき)が絶対に勝つ。


「ヒリカァーー! いっちゃえぇ!」

「そこまでだ!」


 突然、鬼姫(きき)の体が誰かに抱き抱えられた。

 ウソ、全然気配を感じなかった!? 誰!


鬼姫(きき)、ルール違反は見過ごせんぞ!」

「ご、豪せんせー! 離してよぉ!」


 豪先生に抱き抱えられた上に、すごい力で鬼姫(きき)でも引き離せない!

 鬼人族なのにこの豪先生、どんな力してるの!


鬼姫(きき)、ヒリカが言っている通りだ。お前は負けたんだ」

「でも鬼姫(きき)、生きてるもん! 生きた奴が勝ちだってとーちゃんが言ってたのぉ!」


 そう、鬼姫(きき)はこーして生きている。

 こんなゲームで鬼姫(きき)が負けたなんて思われたくない。


「お前は私の矢で射ぬかれた。ゲームだから助かった。自然界なら狩られていた」


 ヒリカにそう言われた途端、鬼姫(きき)の体から力が抜けていった。

 ヒリカの言う通りだ。

 ゲームじゃなかったら鬼姫(きき)はヒリカに狩られていた。

 そう考えた時、ヒリカがすごく怖く見える。


鬼姫(きき)、お前の動きは獲物そのものだ。おいしいものがいれば迷わず追いかける。罠や策略の存在など考えもしない」

「う、うぅ……き、鬼姫(きき)は、どーぶつと、同じ……」

「私達は古来からずっと強い獣に挑んできた。そんな獣をどうすれば狩れるか、自衛できるか知恵を振り絞った。だからこそ、お前が相手となると全力で挑まなければならない。お前はそれほどの相手なのだからな」

「う、うっ、ふえぇぇ……」


 どうしようもなく悲しくなってきた。

 腹立つのに、ムカつくのに。

 でも今は涙が出てきた。


「ふぇぇぇーーーん! うわぁぁぁーーん! くやじいよぉーーー! とうちゃーん!」

鬼姫(きき)、宿舎に帰ろう」

「豪せんせー……」


 豪先生がフッと笑った。

 豪先生だけは鬼姫(きき)のことを――


「宿舎に帰ったらおしりペンペンだ」

「おしり……ペンペン?」

「ルール違反についてたっぷりとおしおきしなければな」

「いやぁぁーーだぁーーーーー!」


 豪先生は鬼姫(きき)を抱きかかえたまま宿舎まで歩いていった。

 鬼姫(きき)はこれからおしりペンペンをされる。

 おしおきだなんていうけど、おしりペンペンってなに?

 鬼姫(きき)、わかんない。

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