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鬼姫クラスの襲撃

「リーエルさん、これのどこが面白いんですの?」


 放課後、ヨーヤと華恋(かれん)と一緒に裏山に行く前に花壇の水やりをするのが日課だ。

 私、リーエルはじょうろで丁寧にお花に水をあげていた。

 それを華恋(かれん)がジーッと見てくる。


「お世話をするとお花が育つ。綺麗になって嬉しい」

「ねー、リーエルちゃん。華恋(かれん)さんもお世話をするとわかるよ」


 正直に言うと私も最初は何が面白いのかわからなかった。

 でも舞ちゃんは入学式でほとんど誰も学園にいかなくても、花壇のお世話は欠かさなかったみたい。

 私は舞ちゃんとお友達になりたいから試しにやってみたんだけど、最近はとても楽しみになってきた。


「がんばってお世話をすると綺麗に咲いてくれるんだよ」

「お花なんてその辺にいくらでも生えてますわ」

「野生のお花と違ってまたすごく綺麗なんだよー」


 華恋(かれん)、お花を出す退魔術を使うのにお花は好きじゃないのかな?

 お友達がほしかったら人が喜ぶことをやる。

 ヨーヤから教えてもらったことだ。


 お花が綺麗に咲けば舞が喜ぶ。

 そのためにお世話をしていたんだけど、気がついたら私まで嬉しくなっている。

 このつぼみ、まだ開かないのかな?


「まったく……こんなものに構っている暇があったら、陽夜さんと一緒に裏山に行きましょう」

「ヨーヤは先生とお話をしてる」

「ヒリカさんと鬼姫(きき)さんのこと? 陽夜さんもお人好しですのね。あんな子達、放っておけばよくってよ」

「陽夜は優しいからほうっておけない」


 ヒリカと鬼姫(きき)のクラスは今、すごく仲が悪い。

 鬼姫(きき)のクラスメイトがヒリカのクラスメイトをいじめたのが始まりだ。

 それでヒリカが怒ってやり返したら、鬼姫(きき)がまた怒る。


 陽夜はそれを先生達に止めてとお願いしにいったのかな?

 皆が仲良くしてほしいけど、どうすればいいのかわからない。

 だからヨーヤがなんとかしてくれると信じている。


「おや、こんなところにいたのですか」

「お花屋さんごっこでもしてるってかぁ? これがあのエーテルハイト家と花条家ってかぁ?」


 数人の男子達が私達のところに現れた。

 もみあげがきゅるんとなって丸いメガネをかけた子と、髪が短い子。

 その二人を中心として数人の男子達が取り巻いている。


「わたくし達に何か用かしら?」

「単刀直入に言いましょう。ここで私達にボコボコにされてください」

「帰りなさい。センスのない冗談に付き合ってる暇はなくてよ」


 華恋(かれん)がシッシッと手で追い払う。

 ところが私達のすぐ脇を何かが通過した。

 これは糸?


「当然ここに来たからには我を通す所存です。誰一人として逃がすつもりはないので、ご了承ください」


 糸がすごい伸びて、私達の後ろの地面に張られている。

 蜘蛛なのかな?


鬼姫(きき)さんは神の子とお付き合いをしたがっている。しかし神の子はあなた達とずいぶん親密な様子……。そこで考えました。そちらのクラスで神の子を除けばあなた達がツートップの実力者なのは明白、それならあなた達をボコせばいい」

「あの野蛮な女が陽夜さんと? それであなた達はあんな女に従って情けない醜態を晒していると?」

華恋(かれん)さん、合理性なくして世の中は渡れませんよ」


 きゅるんもみあげが指でメガネをいじった。

 きゅるんもみあげ、セリフが長い。

 でも人の話はちゃんと聞いたほうがいいってヨーヤが言ってたから、がんばる。


「私が調べたところ、あの鬼ヶ島家は影響力こそ低いですがポテンシャルは日本でもトップクラスです。それならば今のうちに尽くしておけば、将来何かしらの恩恵に預かれる。損得を考えた上での行動です」

「はぁ……情けなさすぎて返す言葉がほとんど見つかりませんわ。話は終わりですの?」

「はい。すでにあなた達をぶちのめす下準備は整いました」


 気がついたら他の男子達が散って囲むようにして襲ってくる。

 急いで倒そうと思ったけど、二人の男子が花壇に向かっているのが見えた。


「か、花壇はやめてぇ!」


 舞ちゃんが男子達の前に立つ。

 襲ってくる男子、舞ちゃんの前にいる男子。とても間に合わない。


「危ないですわね」


 蔓が舞ちゃんを巻き取って高い位置に避難させていた。

 同時に蔓が鞭になって二人の男子達を弾き飛ばす。


「ぎゃっ!」

「いでぇッ!」


 二人が吹っ飛んで気絶しちゃった。

 それでもまだ大勢いる。


「さすがですね。しかし、その二人はクラスの中でもほぼ最下位のザコです。そしてこちらにはまだまだこれだけの人数がいる」


 男子達が私達と舞ちゃん、花壇を取り囲む。

 やっときゅるんもみあげの狙いに気づいて私は頭がカッとなった。


「……お花を攻撃しようとした」

「はい、このタイミングを狙ったのもそのためです。花壇を荒らせば先生達から叱責を受けるでしょうが、あなた達をボコせば目的は達成できます。鬼姫(きき)さんは邪魔が入らずに神の子と添い遂げることができるのです」


 花壇には結界が張ってあるから簡単には荒らせない。

 だけど防げるのは霊力や呪力を帯びたものだけだ。

 踏んだりされたら、お花は潰れちゃう。


「ようやく気付いても遅いのです。ここにはクラスでナンバー2の私、ナクモとナンバー3のガローさんがいます」


 きゅるんもみあげ、ナクモの糸が掃除機のコードみたいに戻った。


「私の長く執念深い蜘蛛スティッキースパイダーと……」

白く見えざる爪(イマジンファング)が相手じゃ分が悪いってかぁ?」


 ナクモが口から糸を吐き出して、ガローが爪を振るう。

 更に周囲からはまた襲いかかってくる男子達。


(舞ちゃんの畑……舞ちゃんも傷つけようとした……)


 お友達がほしかったら喜ばれることをしよう。

 ヨーヤが言っていたことだけど、あいつらは誰に喜ばれようとしているんだろう?

 鬼姫(きき)ちゃん?


「諦めたようですね! 私の長く執念深い蜘蛛スティッキースパイダーの糸からは絶対に逃げられない!」


 糸が私達目がけて放たれた。

 それで鬼姫(きき)ちゃんが喜べばいいの?

 じゃあ他の子達は?

 ヨーヤは? 舞いちゃんは?


「もうやめてぇーーー!」


 舞ちゃんが叫んだと同時に全員が何かに弾かれて吹っ飛んだ。

 地面からは無数の蔓と花が生えている。

 糸も蔓に絡めとられていた。


華恋(かれん)……」

「リーエルさん。大切な花壇とお友達が危機ですわ」


 華恋(かれん)が凛として立っている。

 痛みを堪えながら立ち上がったナクモとガロー、他の男子達。


「なかなかやりますね……しかし、この程度ならば問題はありません」

「あぁ、オレの白く見えざる爪(イマジンファング)ならあんな蔓なんざぶった斬れるってかぁ?」


 皆、ダメージはあるけどまだまだ元気だ。

 あいつらはまだ花壇を荒らそうとしている。

 そして――


「リ、リーエルさん。私はいいから……花壇だってまた作り直せばいいから……」

「許せない」

「え?」


 舞ちゃんが大切な花壇を犠牲にしようとしている。

 それだけ怖がっている。私のことも心配してくれている。

 それはきっと私のことを大切だと思っているから。


「許せない、許せない、許せない」


 私の体の中がすごく熱くなってきた。

 こんなの初めてだ。

 呪霊と戦った時だってこんなことにならなかった。

 頭がかーっと熱くなって、男子達に対してすごく腹立っている。


「おや、リーエルさんがどうもやる気のようですね」

「問題ねぇだろ。さっきの蔓だって耐えられたんだ。花条家もエーテルハイト家も噂ほどじゃねぇってかぁ?」


 華恋(かれん)は二人に対してなぜか笑っている。

 なぜかはわからないけど、私もやるぞって気持ちになった。

 私はお友達と花壇を守る。

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