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入学試験 2

「それでは皆さん、改めて当学園の入学をご志望いただきありがとうございます」


 教室でピンク色のロングヘアーが目立つ女性教師が丁寧に挨拶をした。

 この人の名前は不破 不和利(ふわ ふわり)。教師にして上の位の退魔師らしい。

 年齢は二十台前半くらいでかなり若いな。

 上ということはあの久里間より強いのか。


「保護者の方々には皆さんの試験が終わったタイミングで来ていただきます。寂しいでしょうが、がんばりましょうねー」


 保護者は一度家に帰って迎えにくるか、別の場所で時間を潰すのが常らしい。

 オレの保護者達はどうしたかというと――


「なぜ私達が立ち入り禁止なのだ! 隣の教室で待機するくらい問題ないだろう!」

「ですから退魔術で不正の手助けをされても困りますのでどうかお引き取りくださいねぇ」

「いくら陽夜が天文学的にかわいいからといってそんなことするわけないだろう!」

「その愛が逆に不安なんですよ、宗司さん。というか、ご卒業生ですよね?」


 激しい押し問答の末、特別に別の教室で待機する形に落ち着いた。

 こんな保護者は前代未聞だろうな。

 もちろん恥ずかしくて他人の振りをした。


「ではさっそく第一次試験を始めましょう。皆さんにやっていただくのはこちらです」


 不和利さんが前の座席にテスト用紙を配り始めた。

 それを前の席の子が受け取って後ろに回していく。


「はい、では制限時間は一時間です。では初めてくださーい」

「なんだ、簡単じゃないか」

「これなら楽勝だぜ!」


 受験生達の明るい声が教室中から聞こえてきた。

 確かにテスト用紙にはあまりに簡単な問題が書かれている。

 だけどオレはそんなものを無視してエンピツを走らせた。

 そしてビシッと不和利さんにテスト用紙を差し出す。


「不和利先生、できました」

「え? もう?」


 教室内がざわついている。

 不和利先生はオレからプリントを受け取ると顔をしかめた。


「は、はい……合格、です……」

「なんでーー!?」

「やっぱり神の子は頭いいなぁー!」


 皆、オレが普通に問題を解いたと思っている。

 違うんだ。これにはカラクリがあるんだ。


「ヨーヤ、もう……?」

「あり得ませんわ……わたくしなんてまだまだかかりそうですのに……」


 リーエルと華恋はまだ苦戦中か?

 でも一応仕掛けに気づいているな。

 そう、これはただの筆記試験じゃない。

 これは――


「大変だぁ!」

「早く保健室へ運べ!」


 廊下が急に騒然となった。

 誰もがその騒ぎに興味を持つ。


「はいはーい、試験中なのでよそ見はダメですよー」


 不和利さんが手を叩いて注意を促す。

 オレは合格しているから遠慮なくそちらに視線を移した。

 すると泡を吹いて倒れている女の子が担架で運ばれていくのが見える。


「あれは去年入学した子ですねぇ。今は入学試験なので一般の生徒はいないのですが、あの子は花壇のお世話をしに登校していたみたいです」


 不和利さんが語り始めた。


「この学校ではたまに怖いことが起こるんです。皆さんが入学しようとしているこの学園はそういうところなんですよぉ」


 不和利さんが実に楽しそうにそう話す。

 父さんから聞いていた通りだ。

 この退魔師養成学園は昔、病院として使われていたらしい。


 そんな場所なだけに不可思議な現象が起こって度々生徒が被害に遭う。

 といっても命にかかわるようなことは起こっていないらしいけど。

 さっきの女の子もきっと死にはしないと思う。


「別名、呪霊学園。退魔師の卵である皆さんが学ぶのに最適な場所ですねぇー」


 試験中だけど受験生の中から小さな悲鳴が上がる。

 どうやら初見の子も多いみたいだ。そりゃびびるよな。

 なんで安全なはずの学校がそんなことになっているんだって話だ。


 一見してひどい話だけど、父さんがいうには退魔師としてやっていくなら必要な試練らしい。

 この学園で起こる程度の現象にやられていたら将来退魔師としてやっていくなんて夢のまた夢だ。

 子どものうちから振るいにかけて原石を見つけ出す。

 ここは退魔師養成学園なんて名前だけど、実質試練の場でもある。


「や、やっぱりやめようかな」

「私も怖い!」

「不和利先生! 帰りたい!」


 何人かの受験生が手を上げて辞退を申し出た。

 不和利さんは皮肉を言うことなく速やかに他の教員を呼んで受験生達を連れていかせる。

 こういうことも想定して人員を配置しているんだろうな。

 こうして教室内から受験生の数名が辞退していなくなった。


「はーい、そろそろ時間ですよー」


 不和利さんが筆記試験の終了を宣言した。

 テスト用紙が集められて不和利さんが軽くパラパラと流すように見ていく。


「ふんふん、これはこれはなかなかのなかなかねぇ。ふぅん」


 不和利さんがテスト用紙を机で揃えたと思ったらその場で仕分けを始めた。

 これには受験生達も驚きを隠せない。


「え! 点数つけないの?」

「私、解けてたよ?」


 どよめく教室内で一部だけが静観していた。

 オレとリーエル、華恋、その他半数ってところか。


「では一次試験の合格者を発表します。受験番号156、158、160……」


 不和利さんが淡々と読み上げて、受験生達が緊張した面持ちで結果を待つ。

 オレは直々に合格を言い渡されたから気楽に構えていた。


「……以上です。皆さん、お疲れ様でした」


 教室内から歓喜の声が上がった。

 リーエルは無表情で恋華は当然といった態度だな。

 

「なんで! 問題を解いたじゃん!」

「おかしいよ!」


 当然のごとく一部からは抗議の嵐だ。

 ただこれもふるい落としってやつなんだと思う。


「テスト用紙には霊力感知をして探れば別の問題が書かれていることがわかります。そちらに正解した子が一次通過となりまーす」


 かなり意地悪いとは思うけど、ここは普通の学校じゃない。

 この程度の仕掛けすら見抜けずに心をかき乱されるような奴はいらないってことだろう。

 何せ退魔師が戦う相手は狡猾な呪霊、騙し打ちくらい平然とやってくる。


 オレが祓ったペアレントは真正面から来ただけまだマシな部類らしいな。

 DVDの呪霊は久里間の策略ありきとはいえ、父さん達すら無力化したほどだ。

 あのレベルの呪霊がいるんだからプロでさえ油断ならない。


「では合格者の答案をお見せします。テスト用紙にはこう書かれていました。『もっとも尊敬する人物は?』、伍神陽夜君が書いた答えは『家族』……」

「はい! 世界一尊敬してます!」


 そう、これは筆記試験というより霊力の感知試験といったほうが正しい。

 つまり普通に書かれている問題はフェイクだ。

 不合格者はそれを見抜けずに表の問題を解いてしまったんだ。


「それにしても陽夜君、ずば抜けた霊力感知ね……」

「はい、あのくらいなら見た瞬間にわかります」

「見た瞬間に……上の位の退魔師でもそうはいかないわ。いや、匠でも……」

「不和利先生、次の試験にいきましょう」


 オレが軽快にそう提案すると不和利さんがそうね、と無理に笑みを作った。

面白そうと思っていただけたら

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