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隣の君(きみ)と そばの夢(後編)
「いざ」
私は、おもちゃ箱からいつもの遊び道具の紐を取り出す。
「それっ」
ひゅうっと、紐が宙を舞う。
んなっ。
キッジが紐めがけて飛び上がる。空中で見事にキャッチしながら着地、
けりけりけり
彼の猫キックが紐に炸裂する。
「なんの!」
私は紐をするりと抜き取る。それをまたキッジが追いかける。
ソファの程近くでは、「そば」という名の犬が、自分専用のベッドに大きな体を横たえて、半分眠そうにしながら二人のやり取りを見ている。
あぁ、風が気持ちいい。
網戸をすり抜けて入ってきたそよ風が、彼の名前の由来となった蕎麦色の柔らかな毛を、そっと撫でて通り過ぎていく。
このベッドの寝心地は最高だ。これはキッジもお気に入りで、よく先に寝ているなぁ。でもキッジっていいやつだ。見かけよりずっと優しいし、あれでも気を遣っている。一日の終わりには、いつもああして紐を追いかけて……。
スー、フー、スー
そばが安らかな寝息をたて始めた。それを合図のように、ゼエゼエと息のあがった人間と、遊びに飽きた猫はそれそれの時間に戻っていった。
終わり