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近くて遠い四十センチ 〜それでも二人は恋したい〜  作者: しょぼん(´・ω・`)
前編/第三章:困るのはお互い様

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13/30

第一話:困惑する陽翔

 美桜からデートに誘われた……っていうのは、ちょっと違うか。

 だけど、あいつと二人っきりで出かけられるんだよな……。


 翌日の放課後。

 美桜は仲の良い友達連中とさっさと教室を出て行き、俺はいつものように、一人教室を後にし、駅まで一人歩き出した。

 昨晩から抱える悩みに悶々としながら。


 本屋で偶然会って、スーパーに付き合ってもらい。

 そこで桂さんの勘違いがあって、恋人に間違われた事に責任を感じて。

 あいつが落ち込んで、慰めてたらこうなった。


 正直、誘いを受けた時はドキッとしたし、頬が緩みそうになるのが抑えられなくって、慌ててそっぽを向いてごまかしたくらいには嬉しかった。

 実際あの後、何食わぬ顔して家の前で別れたけど、玄関から家に入った瞬間、思わずガッツポーズしたくらいだ。


 ただなぁ……。


「はぁ……」


 鞄を持ってない手で頭をぐしゃぐしゃっと掻き、大きなため息を漏らした俺は、意味なく夕焼け空に目をやった。


 ──美桜の申し出を受け入れた今、俺はひとつ大きなの問題を抱えている。

 それは。当日()()()()()だ。


 私服に関しては、中学に入ってすぐに問題になり始めた。

 というのも、百四十五センチしか身長がないと、普通の男子の服じゃサイズがないんだ。

 Sより下のサイズがそもそもレアだけど、男子用でもそれだって百五十五センチくらいが適正。つまり、俺が普通に来たらダボダボってわけ。


 勿論小学生の頃は、まだ子供服も選びようがあった。

 だけど、中学に入れば子供服を卒業していくし、俺だって小学校の頃の服のままってわけにもいかない。

 とはいえ、中学時代は休みでも制服って友達も多かったし、俺も制服やジャージはサイズに合ったものを作ってもらってたから、それで何とかごまかしてきた。


 ちなみにここ数年。美桜と一緒に行動したのは、主に学校の登下校と家族同士の交流。

 登下校は制服で問題ないし、家族が一緒の時も勝手知ったる仲だったから、制服やジャージで全然良かった。

 実際美桜も、同じような理由でそういう格好が多かったし。


 例外は二人で行く毎年の初詣くらい。

 だけど、それだって真冬ならコートでごまかせるから、お互いに制服にダッフルコートなんかを着て過ごしてた。


 勿論、今回も同じように、制服で出掛ける事もできなくはない。

 だけど、できればそれは避けて、きちっとした格好をしたいってのが今の本音だ。


 考えてもみろ。久々に、美桜と二人っきりで出掛けるんだぞ?

 こんな機会は滅多にないんだ。せめて俺が隣にいても、あいつが恥をかかないようにしたいし。あわよくば、格好良いって思ってもらいたいけど……まあ、それは身長の事もあるし高望みか。

 とはいえ、美桜の前で少しはまともな格好をしたいってのはやっぱり本音だ。


 ここだけは何とか頑張りたいんだけど……やっぱりハードルが高すぎるんだよなぁ……。

 っていうのも、この身長だとどうしても、ちゃんとした服はオーダーメイドになるからだ。

 自分でそういう店で服を作ったことはないけど、学生服やジャージの支払いで、両親がちょっとしょんぼりしていたのを見てたから、間違いなく値段が高いに違いないだろ。となると、お年玉や小遣いを貯めてるとはいえ、足りるかは未知数。


 あと、そもそも家の近所にそういう店がないんだよ。

 一応、ネット通販だとオーダーメイドの店もあるけど、試着とか採寸なしに高価な服を買うのはやっぱり不安だし、避けたいのが本音だ。

 店頭で服を見てささっと買えるっていうのが、どれだけ便利で素晴らしいことか。

 ほんと。この身長にはつくづく悩まされるな……。


 もやもやした気持ちのまま歩いている内に、在校生から『地獄階段』と名付けられていたらしい、あの長い階段にたどり着く。

 そこをゆっくりと下りながら、俺は憂鬱な気持ちになりため息を漏らす。


 ……はぁ。ったく。

 何をそんなにがっかりしてるんだよ。

 諦めて制服でいいだろ、もう。


 そう思い込もうとするものの、どうしても未練があって諦めきれない自分が嫌になる。


 ……そうだ。この近辺でオーダーメイドの服屋を探してみたらどうだ?

 そう思いつき、長い階段を下りた後、スマホで調べてみる。

 だけど、学校から駅までの帰宅ルート上にも、男子向けのオーダーメイド店なんてやっぱりない。


 うーん。やっぱり男子向けって、そういう需要は少ないんだろうな。

 女子向けなら全然ありそうなんだけど。


 他に良いアイデアはないか?

 顎に手を当て俯きながら、頭を悩ませるけど、やっぱり妙案が浮かばない。

 参ったなぁ……。思わず頭を掻いた、その時。


「あれー? ハル君じゃーん」

「ほんとだ」


 ん? ハル君?

 突然あだ名を呼ばれ、思わず顔を上げる。

 あ。気づいたらもう駅前か。全然気づかなかったな……って、そうじゃない。

 俺を呼んだのは誰だ?


 あまり聞き覚えのない声に、キョロキョロを周囲を見回すけど、それらしい人影はいないよな──っ!?

 突然ぽんっと肩を叩かれ、思わずビクッとした俺の脇を抜け、左右から回り込んできたのは、学校の制服を着た女子二人組みだった。


「やっほー!」

「お久しぶり」


 見上げると、屈託のない笑顔を見せる、互いに短髪をした快活そうな美少女二人組。

 あれから二週間。声を忘れていたとはいえ、流石にまだ彼女達の事は覚えてる。


「西原先輩に東野先輩。お久しぶりです」

「うっそーっ!? ちゃんと名前覚えてるの!?」

「あ、はい。まあ」


 口に手を当てオーバーに驚く東野先輩の予想外の反応に、ちょっと戸惑いながら返事をすると、西原先輩も顎に手を当て納得した顔をする。


「ほんと。あの時もそうだったけど、やっぱりしっかりしてるのね」

「ほんとにねー」


 名前を覚えてるだけで、そんなに感心される事か?

 ちょっと首を傾げた俺に、彼女達は会って二度目とは思えないほど、自然に話を続ける。


「それより、今日は小杉さんと一緒じゃないのね」

「え? はい。そうですけど」

「ふむふむ。恋人の小杉さんは、友達に取られちゃったー、って感じ?」

「……へ?」


 こ、恋人?


「あ、あの。あいつは別に、恋人じゃないですから」

「そうなの? 何時も並んで歩いてるし、もう付き合ってるのかと思ってたけど」

「そ、そんな事ないです! 幼馴染で家が近いんで、一緒に帰ってるだけで」

「へー。じゃーあー、ハル君って今フリーって事?」


 既に顔が真っ赤になっている俺を煽るように、にんまりと目を細めながら、こっちを覗き込んでくる東野先輩。

 恋人がいるかいないかでいえば……。


「えっと、まあ、そうですけど……」

「ほー。つまりー、私が彼女に立候補してもいいってことかなー」


 俯き目を泳がせた俺に、東野先輩が追い打ちをかけてくる。

 っていうか、急に何言ってるんだこの人!?


「せせせ、先輩! こ、心にもない事を言わないでください!」

「えーっ! だってー、彼氏があれくらい自分を守ってくれる人だったらー、やっぱ最高じゃん? ね? 雫?」

「まあ、雨音の言うことも一理あるわね。幼馴染を庇う為に、あそこまではっきり言えるんだもの」

「でしょでしょー?」


 焦る俺なんて関係なしに、感心したかのように微笑む西原先輩。

 彼女の意見により笑顔を輝かせた東野先輩が、少し前屈みになりずいっと俺に顔を近づける。


「ね? あたしと付き合わない? 悪いようにはしないよ?」


 突然笑顔を消し、真剣さをアピールする東野先輩。

 綺麗な金髪より少し暗い色の瞳が、じーっと俺の瞳を捉えている。

 こうやって近くで見ると、美桜とはまた違う可愛さがあってちょっとヤバいな……じゃないって!


 俺が好きなのは美桜。

 いくら可愛い先輩が相手でも、その想いだけは譲れない。

 正直、どう返すのが正しいかわからないけど。


「えっと、その……すいません」


 俺は、困り顔を隠せないまま、短い断りの言葉と共に、ペコリと頭を下げた。

 それを聞いた瞬間。東野先輩がまたにやにやとしだす。


「ふーん。このあたしの誘いを断りますか。って事はー、やっぱあの子の事、好きなんでしょー」

「えっと、あ、その……」


 い、いや。そりゃ好きだ。

 好きだけど、わざわざ口にすべきなのか!?

 しどろもどろになり、ただただ困っていると。


「雨音。彼を困らせちゃ駄目でしょ」


 呆れ顔をした西原先輩が、彼女にそう苦言を呈してくれた。


「だってー、ハル君って真面目で可愛いしさー」

「否定はしないけど、流石に感心しないわ。ごめんね。ハル君」

「えへへっ。ごめんねー」


 悪びれた感じもなく、軽い感じで顔の前に手をやり謝罪した東野先輩の顔が離れたのを見て、俺はほっと胸を撫で下ろす。


 さ、流石に冗談だろとは思ってたし、最後にからかわれたのも正直気恥ずかしかった。

 それに、女子に顔を近づけられるのなんて、小さい頃の美桜くらいしかなかったし、そっちの恥ずかしさも相まって、緊張どころかパニック起こしそうだったし。


 でも東野先輩、この間より可愛くなってないか?

 ……あ、そういうことか。

 よく見れば、まつ毛を盛って目がぱっちりしてるように見える。

 確か今日は、水曜で部活のない日。だから、ちゃんと化粧までしてるのか。

 西原先輩も、爪にネイルしてるみたいだし。


 やっぱりこういう所は、流石女子って感じがする。

 二人とも制服も多少着崩して、可愛らしさを出してるもんな。

 きっと、私服姿もめちゃくちゃセンスがあるんだろうな──ん? センスがある?

 そこまで考えた瞬間、俺の頭にあるアイデアが閃く。


 もしかして、先輩達だったら……。

 望み薄かもしれないと思いつつ、俺は二人にある事を尋ねてみる事にした。

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