こっそり桃花
アスカ「なるほど、性癖を隠して過ごすのはキツいってことか」
アスカと翼がふたりで街へ出るのはいつもの休日だ。すれ違う人々は中学生男女のカップルに間違えることが多いだろうが、どうでもいいだろう。
広い道路がキャパいっぱいに使われるほど交通量が多い街はそれだけ発展している証である、現代の静かで排気も少なく燃費の良い自動車はたくさん走ってもそんなに問題じゃないだろうし。
そんな車たちにも個性的な物がある、一台の車はエンジンがやたらと大きな唸り声をあげている。
「ブオンブオンと激しい音だねえ」
「自動車マニアはエンジンの音が魅力らしい」
「あははーわかる気がするなー」
とりあえず肯定するクセがある翼。
「男の子は車が好きだよねー」
男心を他人事みたいにいう翼に、お前も男だろと言いたくなるのは日常的なできごと。
「この自動車の行儀良い行進にきちんと合わせられるのは大したもんだ」
「だよねー、車道だけじゃなくて歩道にも人がたくさんいるからその波に揉まれるのも大変だよ」
「桃花のやつはこういう人混みが苦手そうだ」
「……あら、ウワサをすればだ」
人だかりから知り合いを見つける翼。
「こんにちは、アスカくんと翼くん」
「はろー、桃花ちゃん。チョーカーがお洒落だね」
「……それはお洒落ではない首輪だな」
「そうですよ。羞恥で周知に挑んだんですけど誰も興味を持ってくれません」
「あはは……桃花ちゃん、自分の趣味を知ってほしいからね」
「カバンの中にはリードもありますよ。アスカくん、わたしに装備して握ってみませんか?」
「断る」
「ロープもあるんですが、これはさすがに自宅用にしておきます」
「リードもだろうが」
「え? 犬のお散歩ってよく見ますよね」
翼「ノクターン方面の作者さんを見抜いた人は天才だよー、桃花ちゃんのキャラだけが手がかりだし?」