第28話 『導かれし者の運命』
―――中へ入ってから、幾分経った頃。
困難を避けたバーリとヨルンは、開けた石畳の道を進んでいた。
「……あの、バーリさん」
ふと、後ろに着いていたヨルンが話しかける。
「どうしたの、ヨルン」
振り向き様にバーリが返すと、ヨルンは少しこちらを向く。
「僕たち、大丈夫だよ……ね」
ヨルンの表情は、今までで一番不安そうな顔をしている。
普段のような返し方だと、更に不安を煽りそうだ。
立ち止まって少し考えた後に、バーリは腰を落として目線を合わす。
「実はね―――」
過去の事、二人に出会った時の想い、今の出来事。
それを包み隠さず話した。
「私は、この世界の為なら生命を捧げてもいい……そう思っている。そう思うようになったのは、少なからず二人が側に居たお陰よ」
そして、ヨルンの頭を撫でる。
「あと少しの辛抱で、この事さえ終われば元の生活に戻れるわ。それまでは、この道を進みましょう」
それを聞いたヨルンは、小さく頷いた。
「う……ん、分かったよ。もう少し前を向いて頑張ってみる」
▫▫▫
それから、もう少し進むと神殿のような建物へ着いた。
「……立派な石造りの神殿ね。いつの時代の建物だろう」
巨大な建物を見ながら、バーリはそう言う。
「僕、この建物見たことある」
ふとヨルンが呟き、バーリは驚く。
「な、何ですって……?この建物の事、知っているの」
バーリの言葉に、少し困惑気味にヨルンは頷く。
「物心ついた頃、一度夢で見たことがある。中に大きな神様みたいな石像があって、『運命の歯車が回るときにここへ来るだろう』って声がした。すっかり忘れていたし、言葉もその時分からなかったけど、見て思い出したんだ」
バーリは口元を手で覆い被さる。
まさか、その時からこの事が降りかかると『預言』されていた事に驚きを隠せない。
だが、これから先はどうなるか分かるものではない。
足を踏み入れた時に、一気に歯車が回り始めるだろう。
「ヨルン、中へ入る覚悟はいい?」
「うん、分かった」
二人は同時に頷くと、中へ踏み入れていく。
中は大きな広間になっており、ヨルンの言う通り石像がポツンと立っている。
その姿に、バーリは見覚えがあった。
―――この世界の創造主である、グロラ・モノントスだ。
昔に、『神ノ書』でグロラ・モノントスの事を読んだことがある。
その書物に書かれていた神殿は、ここだったのは少し驚いた。
「もうちょっと近付いてみましょうか」
バーリがそう言うと、ヨルンが服の袖を引っ張る。
振り向くと、怯えた表情を見せる。
「これ以上近付いたら……」
ヨルンがそう言いかけた瞬間、鈍い音が聞こえ始めた。
その音のする方を向くと、像が動き始めたのだ。
それを見たバーリは、全身に力が入るのが分かった。
「ヨルン、入り口まで下がりなさい!ここは私が護るから!」
▪▪▪
その時、『島』に居たであろう小さき鳥が飛び立つのをミハル達は見ていた。
「……どうやら、『動き』始めたようじゃな」
目を少し開けながら、ヨシドラが言う。
「それは、一体どういう事です」
ミハルはヨシドラにそう聞く。
ヨシドラは、荷物の中にある一つの巻物を取り出す。
そこには、神の姿と思われる絵が載っている。
「この『島』には、世界の創造主であるグロラ・モノントス様の石像が納められているのじゃ。この書は『預言ノ子』が物心ついた時に見る夢を元にしておる」
ヨシドラは、絵の所を指でなぞる。
「……じゃが、どうして創造主様が居る島が『あのよう』になったのは、正直に分からぬところではある。こればっかりは、事が終わった後に調べるしかないのじゃ」
「何故、それを私らに言わなかったのです」
絵からヨシドラの方を向いて、ミハルが言う。
「これは、お分かりの事であろう。そこへ導かれるのは『預言』を言った『預言ノ子』と、対処が出来る魔女しか居らん事を」
ヨシドラは静かに返す。
……その言葉には、流石にミハルは何も言えなくなった。
「今は、あのお二方に賭けるしかありませぬぞ」
ヨシドラの言葉に、ミハルは頷いた。




