第26話 『最後の旅立ち』
バーリ達は、急いで船を出してくれる船長を探しに港へと向かっていた。
港には何隻か船があり、船長達も不安そうに『島』の方を見ている。
「……あの、少し良いですか」
バーリが話しかけると、何人か振り返る。
「どうかしましたか」
その中の一人が言う。
「無理を承知で伺います。私達を『忘れ去られた島』に行かせて貰えませんか」
そうバーリが言うと、ざわつき始める。
それもそう、とバーリは思った。
不穏な空気に包まれているおり、『そんな所には行きたくはない』と。
「やはり、無理でしょうか」
ミハルがそう言った時だ。
「……なぁ、姉ちゃん」
比較的、若い船長が話しかける。
「姉ちゃんがあそこに行きてえ訳は何だ」
「貴方、言い方ってものが……」
ミハルが言い掛けたのを、バーリは止める。
「分かりました、お話しします」
バーリは、事情を簡潔に話す。
―――今あの『島』の不穏さを無くすには、魔女である自分と『預言ノ子』のヨルンしか居ない、と。
「……分かった。それならば、俺が船を出してやろう。あそこは前から気になっていたから、近付けるキッカケになる」
「おい、ボーニャ。それで何かあったらどうするんだ!」
ボーニャと呼ばれた船長は、そう言った仲間の一人を睨む。
「お前、姉ちゃんが言ったこと聞こえてねぇのかよ。今の状況を打破出来るのは、二人しか居ねえってのを……手助けすんのが、人ってモンだろ」
そう言われ、皆は黙りこんだ。
「……あ、ありがとうございます!」
「そんじゃ、早く乗りな」
三人はボーニャの後を着いていった。
▫▫▫
「ヨシドラ様」
船に乗り込む前に、メオドーリエが言う。
「お三方も、船へ乗り込んだと精霊達が言っております」
「ほうか……それで、『島』へはどれくらいで着くと申しておる」
「船長様によりますと、早くても半刻で着くと言っております」
ヨシドラはその言葉に頷いた。
「それならば、十分に間に合うであろう」
「船、出港します!」
船員の言葉で、船が動き始めた。
▫▫▫
「あの」
『島』へ向かう途中、バーリはボーニャに話しかける。
「なんだ、姉ちゃん」
「その、どうして乗せてくれたのかな……と」
ボーニャはバーリに、少し目線を合わせる。
「昔、船乗りの事を教えて貰った義理の父さんから言われたんさ。『船を使わせてくれと懇願されたら、如何なる理由でも乗せてやれ』って。魚を釣るだけ、人を運ぶため……それ以外にも使い道があるからだ、と」
「……そうだったんですね」
「それに、正直な人が好きでな。姉ちゃんは包み隠さず事情を話してくれた姉ちゃんの為なら、と思ったのさ」
その言葉を聞いて、目に涙が溜まるのが分かった。
私は、決して一人じゃない。支えられているんだと。
「そろそろ着きます!」
無線で船員が、そう言う。
その言葉で、バーリの気持ちが引き締まった。
―――もうすぐ最後の闘いが始まる、と。
▪▪▪
ようやく、『忘れ去られた島』へと着いた。
『島』の入り口は木々で覆われており、如何にも人を寄せ付けない雰囲気をかもし出している。
「お三方!」
聞き覚えのある声がして、バーリ達は振り向く。
そこには、ヨシドラとメオドーリエの姿があった。
「ヨシドラ殿、一体どうして?」
ミハルが聞く。
ヨシドラは目を開く。
「二つ理由がありましてな。一つは、この先起こる事を『島』の付近で見届けること。そしてもう一つは、今現在この先は魔女と『預言ノ子』しか入れぬ為に、ミハル様を止める為でございます」
「成る程、ね」
バーリは静かに言う。
ミハルは溜め息を漏らす。
「そう言うことなら、仕方がありませんね」
「ヨルン、行けそうかい」
バーリはヨルンに聞く。
ヨルンは手をぎゅっと結ぶ。
「……うん、行こう!」
二人は、『島』の方を向いて歩き始める。
「お二人」
ミハルがそう言うと、二人は振り返る。
「どうか、生きて帰ってきてください!」
「ありがとう、ミハルさん。きっと、いえ……必ず帰ってきます」
そう言い残し、二人は木々の中へと入っていった。




