第21話 『第六の預言、紡ぐ』
三人は、キード手前まで来ていた。
「それじゃあ、キードでお昼でも」
二人は頷いたが、その直後にヨルンが預言を受け取る仕草をする。
それを見たバーリとミハルの顔が強張る。
『第六の預言、導かれし者は成すすべもない』
(成すすべも無いって、どういう)
バーリがそう思ったその時だ。
「……ッ!?」
ミハルがお腹に手を当てて倒れ込む。
「ミハルさん、大丈夫ですか!」
「す、すまない……だ、誰かに殴られたようで」
『誰か』、と言って居るが誰も見当たらない。
(見えない人に、殴られたっていうけど……)
『預言』と現実が解離していて、理解が追い付かない。
「い、痛い……離してっ!!」
ヨルンの悲鳴が聞こえ、バーリはヨルンの方を見る。
誰かに髪を掴まれているように見える。
「助けなきゃ」
バーリは立ち上がりヨルンの掴まれている『手』を払おうとするが、一向に治まらない。
それを見て、焦りだす。
(……どうしたら、どうしたら……)
「バーリ殿、持ち歩いている書物に何か書いているのでは?」
そうミハルの声がした。
「そう、だわ」
その言葉で我に返り、書物を読み出す。
(見えない者……見えない者……)
いくつかページをめくった後、『影ノ人々』について言及している箇所を見つけた。
『影ノ人々』は、『忘れ去られた島』の霊だと書かれている。
術を一通り読み、書物をしまう。
そして、バーリは膝立ちをして胸の前に手を合わせる。
『いずれ貴殿方に 逢いに行きます だから 御下がりください』
その術を唱えると、ヨルンの髪を掴んでいた『手』の気配は無くなった。
▫▫▫
そのままキードへ入り、宿をとって部屋に入る。
そして、『影ノ人々』の事を二人に話した。
「……それでは、『忘れ去られた島』に向かう日も近い、もいう事ですか」
ミハルが言うと、バーリは頷く。
その言葉で、思い出したかのように『原理』を説いた書物を取り出す。
後半部分に書かれている事を、読み出す。
『「島」へは、魔女と預言ノ子しか入れない』
「島」は、『忘れ去られた島』の事を指していて、事の終焉が近付いている―――
「……これで、完全に繋がりましたね」
ミハルが言うと、バーリは頷く。
「僕達は、一体どうなるんだろう」
不安な顔をしながら、ヨルンが呟く。
「刻が来なければ分からないわ……でもね」
バーリはヨルンの手を握る。
「何があっても、私はヨルンを守る。これは分かって貰えるかしら」
▪▪▪
家の扉を叩く音が聞こえた。
「メオドーリエか」
ヨシドラが言うと、「はい」と声がした。
「入りなさい」
そう言われ、メオドーリエが扉を開けて入る。
「精霊達によると、『影ノ人々』が御三方を襲ったようで」
メオドーリエは、そう伝える。
その言葉を聞いて、ヨシドラは眼を閉じる
「……もう、その刻まで迫っておったか」
メオドーリエは、ヨシドラに聞く。
「私は、どう動けばよろしいでしょうか」
ヨシドラは眼を開け、メオドーリエの方を見る。
「まだその刻が来た訳ではない。もし、『次の預言』を精霊から聞いた時、我らも動くとしましょう」
その言葉には、メオドーリエも頷くしかなかった。
「それでは、私はこれで。『預言』を聞いた後、もう一度伺います」
「……ああ頼んだぞ、メオドーリエ」
メオドーリエを見届けたヨシドラは、書物を一冊取り出す。
紐栞で閉じられているページを開く。
そこには、『預言を十まで紡ぐとき 終焉を迎えるであろう』と書かれている。
(……これで、六つ目。そうなると……)
次の預言で、大方『忘れ去られた島』に向かうと思われる。
……が、これはあくまでも過去の書物が書いてあるだけであって、確かな情報ではない。
だからこそ、メオドーリエに頼んだ訳ではあるが。
「あとは、御二人の運命ですな」
書物を閉じながら、そうヨシドラは呟いた。
▪▪▪
こうして、『第六の預言』は終わった。




