第18話 『魔女たる運命、二人の想い』
メオントでの『預言』を終え、改めてヨメンへと向かう事になった。
「………」
道中の休憩で、バーリは眼を瞑り黙り込む。
「ねえねえ、お姉さん。バーリさんは何をしているの?」
それを見ていたヨルンが、ミハルにそう聞く。
「最近、瞑想しているっぽいけどさ」
それを聞いたミハルは、「ああ……」と呟く。
「自己回復術と言うらしい。魔力を回復するためにやっているそうだ」
ヨルンはミハルを見つめる。
「バーリさん、僕たちが思っている以上に疲れているのかな」
「そう、かもしれないな」
ミハルは頭をかきながら返す。
それは、前から思っていたことだ。
―――特に最近は、闘いがメインになっている。
「魔力面はバーリ殿の回復術を使えばよいだろうが、それ以外だと私らでなんとかするしかないな」
「……と言うと、僕たちはどうすればいい?」
ミハルは少し考える。
そして、何か思いつきヨルンに耳打ちをする。
「……分かったよ、お姉さん!僕たちなりに頑張ろうね」
ヨルンの言葉に、ミハルは頷いた。
▫▫▫
(……ふう)
自己回復術を終え、バーリは眼を開ける。
これで、少し回復しただろう。
気力、体力の他に『魔力』を要するのが魔女だ。
二人と共に旅をするようになってから、魔力の消費が激しい。
(魔女って、本当に厄介よね……)
『私自身、魔女で無かったら』
その想いは未だに拭いきれない。
ただ、今は身の上に従うしかない。
―――ヨルンと共にする、という宿命が生まれたからだ。
ふと、ヨシドラの言葉を思い出す。
『いずれは運命の歯車の下、『忘れ去られた島』に行くこととなる』
(運命の歯車の下、か)
胸に手をあてる。
今、魔女に生まれたことを憎むのは後回しだ。
「バーリ殿、そろそろ行きましょうか」
ミハルの言葉で、我に返る。
「……あ、はい。分かりました」
バーリは立ち上がり、二人の後に着いていった。
▪▪▪
何事も無く、ヨメンへと着いた。
今日はここで一泊する予定だ。
「バーリ殿」
宿の手続きを終わらせた後、ミハルが話しかける。
「本日の夕飯は、私とヨルンに任せていただきませんか?」
思いがけない言葉に、バーリは目を見開く。
「……え、良いんですか」
「ええ。宿のお部屋で待っててくれますか」
「分かりました。楽しみにしていますね」
バーリは会釈をすると、部屋の方へ向かっていった。
それを二人は見届ける。
「さてと、街中へ出掛けますぞ。ヨルン殿」
「うん!」
▫▫▫
「……はあ」
バーリはベッドの上に横たわる。
(何を作ってくれるのかしら)
目を閉じ、考える。
あんな風に言ってくれるのは初めてだった為に、何の料理を提供してくれるのか検討がつかない。
「深くは、考えない方がいいかしら」
その方が、楽しみが増えるかも。
(疲れた、な……)
そう思った瞬間、バーリは眠りについた。
▪▪▪
「バーリ殿」
ミハルにそう言われ、バーリは目が覚めた。
「いけない、寝ちゃったわ」
そう言いつつ、身体を起こす。
その時、料理のいい香りがしてきた。
「お疲れの様でしたから、仮眠の間に料理を作っておきました」
ミハルがそう言う。
「それじゃあ、ご飯にしましょうか」
「はい」
部屋の居間に出ると、ヨルンが席に座って待っていた。
テーブルには、色々な料理が置いてある。
「お姉さんと、頑張って作ったんだよっ!」
そう、ヨルンが言う。
「さて、料理が冷めないうちに食べましょう」
二人も席に着き、「いただきます」と夕飯を食べ始めた。
▫▫▫
「これでも、駐在所の舎屋 (剣士隊の宿舎) で料理を振る舞っていたので……少しは自信があるのですが」
そう、ミハルが言う。
「あの、これは?」
メインのお肉を見ながら、バーリが聞く。
「それはモヨロと言って、私の故郷食です」
「そうなの」と言いながら、バーリは口に入れる。
「……お、美味しいっ」
バーリがそう言うと、二人は笑顔になった。
「いやはや、そう言っていただけて幸いです。私らでは、料理を作ってバーリ殿の回復に繋げればと思いましてな」
「そう、なのね……」
ミハルの言葉を聞いた途端、バーリは目から涙が出るのが分かった。
「だ、大丈夫!?」
ヨルンが聞く。
「ご、ごめんなさい……二人の気持ちが、伝わったから」
―――私は『独り』ではない。魔女という概念に囚われず、支えている人が居る。
改めて、二人が側に居てくれて良かったと思う。
「……さあ、ご飯……食べよっか」
バーリがそう言うと、二人は頷いた。




