表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/32

第14話 『海の最恐竜、現れる』

ノントモーゼ国への船旅はまだ続き、夜になった。

皆が寝静まった、その時だった。


船が大きく揺れ、バーリ達は飛び起きた。


「……何か、あったのでしょうか」

ミハルがバーリに聞く。


「分からないわ」


そう返した瞬間、また大きく揺れる。


「だ、大丈夫かなぁ」

寝惚けながらに、ヨルンが言う。


「ミハルさん、ヨルンを頼めますか。甲板に出てみます」


バーリの言葉に、ミハルは頷いた。


▪▪▪


バーリは、甲板に出た。

船乗りも出ていて、様子を見ている。


「何か分かりましたか」

「すいません、何も……」


その時、光が見え雷が鳴るのが分かった。

皆がその方向を見る。


「ライトを照らしてくれますか!」


バーリの言葉に船乗りは頷き、甲板のライトを照らす。

そこには、大きな竜が見えてきた。


「……あれは、モンゼロン!」


モンゼロンは、『海の最恐竜』と呼ばれる厄介な(ヤツ)だ。

何でまた、こちらの船を狙うのか―――


(まさか、私達の事を狙っているかも?)


忘れ去られた島(バテ・ネンネーゼ)』に住む竜は確か、モンゼロンと双竜として扱っている書物があるのを思い出した。

つい先日、その竜を退治したのは私達だから、それを狙っているのかもしれない。


モンゼロンが海から飛び出してきたかと思うと、こちらに向かってくる。


『ゴガバーニゲラ!!』


手を差し出し、モンゼロンを止める。

(ヤツ)は、弾かれたように跳ね返る。


それを見たバーリは、指を海へ指しながら術を唱える。

危害を加えず(ベロンドロ) 還りなさい(ゾボレンド)!』


モンゼロンは、大きな雄叫びをしながら海へ帰っていった。


「……た、助かった」

様子を見ていた、船乗りが言った。


「ええ、大きな被害が無くて良かったです。……ライトを照らしてくれて、ありがとうございました」


バーリが返すと、船乗りは頷いた。


▪▪▪


バーリはそのまま、部屋へ戻った。

ミハルはまだ起きており、ヨルンは再び眠っているようだ。


「大丈夫でしたか?」

バーリに気が付き、ミハルがそう聞いてきた。


「ええ、何とか」


そして、バーリは船の揺れの原因はモンゼロンの事を話した。

ミハルは髪の毛を手でむしる。


「ヨルン殿の『預言』が無かったとは言え、これはまた厄介なヤツが現れましたな」

「……それはそう、だけれど……ヨルンの『預言』が無かったのは、何故かしら」


ミハルの言葉で、疑問に思った。

これもまた『預言』として出てきてもおかしくはない、そう思ったからだ。


「バーリ殿の手持ちにある書物には何か、書いてありませんか」


ミハルがそう言われ、バーリは手持ちの書物を出して読みだす。

そして、『原理』を説いた書物に気になる文言を見つけた。


「『運命ノ子(ヴァルディ)を狙う命が現れる時、守るべき者であることも魔女の役目であろう』……と、書かれています」


「つまりは、モンゼロンという竜が現れたのも……()()()()、原理に乗っ取った話だと?」

ミハルの言葉に、「そうね」とバーリが返す。


「はあ、さらに気を引き締めないといけないのか」

ミハルは頬を触る。


「こればかりは、原理に乗っ取っているものだから……仕方がない。だけど、無事だったのは良かった事ですから」

「そう、ですね」


一通りの確認を終え、二人は再び眠りについた。


▫▫▫


ヨシドラは嫌な胸騒ぎを覚えて、寝床から起きた。

家の外に、誰かが居るのを察する。


「メオドーリエか」

「はい」


メオドーリエは扉を開け、入る。


精霊(モヴェ)達によると、モンゼロンがバーリ様方の船に襲来したとの事です」

「ヴェンゼロンが現れたちゅう話で大体は察していたが、まさかのう」


ヨシドラは眼を閉じる。


「魔女は『運命ノ子(ヴァルディ)』を守るべき使命たるゆえ、何事もなく治まったと読む」


「ヨシドラ様の言う通りでございます。術で追い払った模様です」

ヨシドラは、メオドーリエの言葉に頷く。


「分かり申した、メオドーリエ。下がってもよろしいぞ」

メオドーリエは頷き、家を出た。


「……流石でしたぞ、バーリ様」


▪▪▪


こうして、一時は危なかったが……ノントモーゼへの船旅は終わりを告げる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >「『運命ノ子ヴァルディを狙う命が現れる時、守るべき者であることも魔女の役目であろう』……と、書かれています」 バーリさん、治癒系の魔法使えたり、竜を追い返したり、凄いですね。 >「つまり…
[良い点] 魔女強し! [一言] そして見守ってる兄ちゃん千里眼っ 精霊を使ってってのがファンタジ王道ですねぃ ("・∀・)イイ!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ