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第10話 『探り人を探せ』

駐在所で出会った、ナツメの家へと着いた。

三人は中へと入っていく。


「こちらへ」

居間に案内され、座椅子に座るよう手招きされる。


「それでだが、先ほどの話を詳しく聞かせて欲しい」

開口一番に、ミハルが聞く。


「あれは、昨日の事で―――」


昨日の夕方、街の大きな市場に米粉を買いに行くよう、息子のメロに頼んだ。

しかし、夜になっても帰ってこない。

心配になって、市場の商人に話を聞いてみたのたが、買いにいく姿を見たがその後の姿を見ていない。

付近の住人にも話をして探してみたのだが、手掛かりは何も掴めなかった―――


という話らしい。


「……難しい話ですね」

ミハルはバーリを見て、言う。


「メロ君がいつも使っている物はありますか。彼の波長(なみ)を私の術で読んでみます」


バーリがそう言うと、奥から小さな木の食器を取り出してきた。

それをバーリは受け取る。


そのまま、眼を瞑り

彼の居場所を(バル・バーレ) 教えて欲しい(バーバレア)

と唱えた。


脳内に、ネメントリーの市場が現れる。

粉屋(こなや)らしき店の奥に、男の子が縄に絞められている姿が見えた。

それも一人ではない、数人の子供たちが居るのだ。


「……嘘、なんて事を」

術を解いた途端、バーリは呟く。


「何か分かったの?」

ヨルンが聞く。


「驚かないでください……犯人は、市場の人間です」

その場に居た皆が、驚く様子を見せた。


「一つ、ナツメさんに伺いたいのですが……ここ最近、近所の子供が居なくなった話を聞きますか」


バーリが聞くと、ナツメは何かを思い出した様子を見せた。

「そう言えば、私の近所でもそう言う話を聞いたことがあります。子供が居なくなっても、剣士隊が動いてくれないって」


「一種の軟禁か。犯人の狙いと、剣士隊が動かん理由はなんだ?」

ミハルは頭をかきむしる。


「狙いは分かりませんが、剣士の方が動かないのは『裏で繋がっている』としか言えません」

バーリがそう返す。


「これは、直々に剣士隊の隊長うえに話を通さないといけないな」

ミハルが言うと、バーリは頷く。


「……あ、あの。息子を、子供たちを助けてください」

ナツメが頭を下げる。


「分かりました。私達が助けてあげます」


▫▫▫


市場に向かう前に、役人が居る『役舎(やくしゃ)』へと向かう。

(ちなみに、ヨルンは安全のためにナツメの家に居る)

剣士隊の隊長もそこに勤めているからだ。


ミハルから、門番に話をする。

彼女自身、元剣士隊だと伝えるとすぐに門を開いた。


そのまま、隊長の部屋へ通された。


「これはこれは、ミハル殿が来られるとは」


隊長がそう言う。

どうやら、他国の剣士隊でもミハルの名は知られているらしい。


「実は、だが」


ミハルから、先ほどの話をする。

……それを聞いた隊長は、顔を曇らせた。


「どうか、したんですか」

バーリが口を開く。


「過去に一度、あの市場で人さらいに近いカタチの子供の労働が問題になりましてな。一旦は剣士隊(わたくしら)で排除をしたのですが、それがまた行われているかもしれません」


「それだったら、なぜ剣士隊の下っ端が動かない」

ミハルが、更に深い事を聞く。


「その当時、賄賂を受け取って見て見ぬ振りをした不届きな剣士が少なからず居ました。彼らも除籍をしましたが、もしかしたら軽い罪に問われた残党が話を持ち掛けた可能性がある」


「……くそ、なんて奴だ」

ミハルは歯を喰いしばる。


「私も出ましょう。事件(これ)は、きちんと精算をしないといけないですな」

そう、隊長が言った。


▪▪▪


その日の夕方。

バーリとミハル、そして剣士隊の隊長が市場へと赴いた。

粉屋の方へ、そのまま向かう。


「ガバラ、少しいいか」

隊長が、粉屋の店主にそう話しかける。


「……な、なな、なんすか。俺は何にもやってねえですよ」

そう返すが、明らかに動揺している。


「建物の奥を調べさせてもらう。上からの許可は得ている」

『簡易型建物内探索書』と呼ばれる紙を見せると、三人は中へと入っていく。


「ちょ、ちょっと。本当に何も……」

店主は慌てて前へ立って、入らせないようにする。


「……そこから、動かないで。動いたら、容赦はしないから」

バーリが店主の首に手をかける。


ミハルと隊長は、内部へと入る。

そこには、バーリの言う通り何人かの子供たちが縄で縛られていた。


▫▫▫


その場で店主に事情を少し聞くと、やはり労働の件で子供を拐ったとの事だ。


「後でじっくりと聞かせろよ」

隊長が言うと、店主は諦めた様子で頷いた。


ちょうどその時だ。

駐在所で見かけた剣士が、私服の姿で現れた。


大事(おおごと)になっている様子を見た彼は、(きびす)を返して帰ろうとする。


「待て!!」


ミハルが間一髪で、手を取る。

そして、彼の胸ぐらを掴む。


「……何故、ここに居るのだ」

ミハルが言う。


「か、買い物だよ」

彼はそう返す。


「なら、どうしてこの様子を見て戻ろうとした」


ミハルの気迫な様子を見て、彼はお手上げという感じに手を上げる。

「隊長も居て、子供たちが出てきたっつーなら事情を知っているだろう」


その瞬間、ミハルは彼の頬を思いっきり叩いた。

そして、剣を取り出す。


「ミハルさん!自分がされたことを、この場でしてもいいんですか!?」

バーリの言葉で、ミハルは動きを止める。


「……後は、法で裁かれろ」

そうミハルは呟き、剣を戻した。


▪▪▪


子供たちは無事に家へ帰った。

そして、店主や駐在所に居る剣士の何人かが事情を聞いているとのことだ。


「解決してよかったぁ!」

宿に向かう途中、ヨルンが言う。


「そうね」

そうバーリが返す。


「バーリ殿」


ミハルが話しかける。

「……すいませんでした。貴女にあのように言っておいて、その……」


「気にしないで、ミハルさん。誰にでも、一つや二つ、怒る要素はあるもの。それを止めるのも、お互いの役目だと思っているから」


バーリの言葉に、ミハルは頭を下げた。

こうして、事件は解決した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 人身売買の組織かな? 解決して良かったです。 ミハルさん大活躍でした。 みこと
[良い点] 相変わらず呪文がカッケエのと 分かりやすいのと 設定がしっかりしてるのが("・∀・)イイ!! てーか、 まさかのまさかや んなとこにお使いなんてやったら…… それにしても細かくきち…
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