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消えた歌声と足踏みオルガン

作者: 若松ユウ

修理の依頼を受けたのは

かつては黒いダイヤで潤った村

山合いに建つ古い分校の

音楽室に眠る年代物のオルガン


白亜の学び舎は緑の蔦に覆われ

校庭には板の朽ちた逆上がり台

用務員が刻を知らせた鐘は青く錆び

観察池には藻が茂っている


昇降口でスリッパに履き替え

桜材の長い廊下の突き当り

木工室や宿直室を通り過ぎた先に

ピアノ型の部屋札が下がっていた


蓄積した埃を丁寧に拭ったり

ストップと鍵盤を取り出したり

ペダルやふいごの状態を確かめたり

パーツが多くなかなか骨が折れる


幸い大きな故障は無かったが

作業が終わる頃には陽が傾いていた

息を吹き返したオルガンで

譜面台に置き忘れられた曲を弾いてみる


みどりのそよかぜ

みかんのはなさくおか

たなばたさま

われはうみのこ


ちいさいあきみつけた

じゅうごやおつきさん

うれしいひなまつり

あおげばとうとし


かつてこの地で育った少年少女たちは

やがて職を求めて都会を目指し

そのまま帰って来ないという

歌声は消え、あとに残るはオルガンのみ


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― 新着の感想 ―
[良い点]  そこにあった歓声や音。  遊び回る人達や集う大人など……。  情景が浮かんでくるようです。 [一言]    少し大人になって、寂れて行ってしまうモノを見ると少し悲しくなったりしますが、そ…
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