第8話『紫鶴(シズル)姉さんとの思い出』の巻
平八郎も流石の姪っ子には頭が上がらずと言うか、どっちが年上か分からなくなり…形勢逆転!“孤高の戦士”の名が泣くぞ!君はどんな時もクールで強く逞しく現代を生きる魚人族の男じゃないか?たかが姪っ子の1人や2人手玉に取れないようで、どうする?美恵子ちゃんだって、やがて生まれて来る新しい生命に胸躍らせ、優しいお姉さんにきっとなると思うよ!弟ちゃんの頼れる存在として!頑張ってね、美恵子ちゃん!え?平八郎もま、それなりにテキトーに弄ばれて卓袱台!“あっしには関わり無ぇことでごさんす!”っていう昭和の名セリフを知ってたら凄いです!昭和通ですね!♪ど~かで、誰かが~♪うひゃ~!懐かしのドラマでござんす!すいません、いつも長口上で!
“ガシャーン!”
百合花は、平八郎の言葉に反応してしまい、思わず洗い物の皿を1枚を床に落としてしまった。
「ね、姉さん!一体どうしたんだよ?いきなり皿を落とすなんて…俺も美恵子ちゃんもびっくりして静止画像のままなんだけど…」(←「ウケ狙いが外れる平八郎!残念!」)
「いえ、大丈夫よ!何でもないわ!心配しないで!」
弟の言葉にハッと我に返った姉の百合花は一瞬取り乱した様子を取り繕うよう平然を装うも何故か挙動不審さを隠しきれず、平八郎の問いかけにも只管「あ!うん!」を繰り返すばかり。さっきまで自分と楽しそうに会話していた姉の別人振りに弟の平八郎はある異変を察知するも美恵子という手強い姪の質問攻めに振り回され…どっちかと言うと姪っ子に弄ばれていると言った方が早いか?
「もぉ―お兄ちゃん!ミータンにも早く…早く紙飛行機を作ってよぉ―!ねぇ、早く…ったら早く…ったら!早くちてぇ!」
「あ…うん、うん!ごめん、ごめん!ついボーっとなっちまって…姉さん、とにかく怪我しなかったかい?皿なんてさ、我て当然!形あるもの、いつか…って言うじゃない!1枚、2枚なんてものの数じゃないでしょ?」
「お兄ちゃんッ!早く、早くちてぇ!早く作ってよ!お願い…ちまつ!」と姪の美恵子の催促に姉の百合花が動揺して…彼女の頭の中で同じ響きが何度も何度も繰り返されることに…。
“ハヤ…ク…ハヤク…チテ!ハヤ…テ?「ハ?ハヤテ!ハヤテ一族?」
ついに姉の百合花は心の動揺を抑えきれず、平八郎と娘が居る部屋へと台所から血相を変えて飛び込んで来る。
「ハチロー!アンタ、さっき確か“ハヤテ”と口走った一人の女性と出くわした!って言ってたよね?」
「あぁ、そうだよ!此処に来る前に千葉県房総半島にある九十九里海岸の浜辺で…何やら物憂げで寂しそうな感じのする女の人でさ。でもそれでいて上品な言葉遣いだったかな?この俺の妖怪変術を見破ったというか、阻止してくれた女性が居たんだよ、確かにそこにね!そして彼女曰く『バカな真似はお止めなさい!』ってね!」
「そ、それで…?」
姉の鋭い眼差しと執拗にこの俺へと鬼気迫って来る問いかけ、表情に「まるでさっきの美恵子ちゃんそのものだなぁ!」って思いつつ、平八郎は言葉を選び乍らあの日の出来事を事細かく全て詳細に話し始めることに…。
「それがさ、その女の人ね!確か百合姉ぇと同じくらいか、もう少し彼女の方が年上だったかな?その辺があやふやで申し訳ないんだけど…彼女も以前この俺と同じく魚人族だって言ってた。百合姉ぇもそうだと思うんだけど魚人族の女性は確か陸上の人間と結婚すると…人間には無い特殊な能力が全て消失するって死んだ父さんに教わったことがあって…でもあれでしょ?離婚とは別に死別して未亡人になると…え~っと…あ、あれ?何だっけ?その続きをすっかり忘れちゃったよ!え~っと確か死別すると魚人政府から補助金が下りて…ん?それって確か寡婦年金ってやつ?それと家族埋葬費が支給される…?ち、違う、全然違うって!何でこの俺がそんな難しいこと、知ってんだろ?」
「あのね、ハチロー!もう一遍だけ、よ~くそこんところを思い出してくれない?とっても大事なところなのよ!私達、姉弟にとっても!その女の人、どっか変わったとこ無かった?変わった行動とか?例えば彼女にぴったりとくっ付いているペットとか動物が居たとか?」
「ぺ、ペット?動物?そんなの1匹も…1匹も…居た!居た!一羽だけ居たよ、そんな奴!思い出したぞ!その女性が飼っていたのかどうかは知らないけどさ!変な…と言うか、かなり凶暴な海猫野郎が居てさ、そいつがこの俺に度々ちょっかいを出してくんだよ!しかもそいつが彼女の命令通りに動くペットでさ!そいつのことを確かこう呼んでたんだよなぁ!茅ヶ崎?SAS?違う、違う!あれは確か“ぬまみなみ”と書いて…ぬまなん?ちげぇよ!いやいやあれは忘れもしない…確か?」(←「“忘れとるやないか―い!”って突っ込んで欲しいのかい、平八っつぁんよぉ?」)
「ショーナン!」
何と不思議な!と言うか、打ち合わせ通り!と申しましょうか、平八郎も百合花もお互い顔を見合わせて破顔一笑!もろハモネプ状態?(←「ちと例えが古過ぎて分かんないか?」)とにかく二人とも揃って同じ名前を発していたなんて何とも…わざとらしい?いや奇跡でしょ、このバヤイ?『ショーナンですよ、川崎さん!』ってギャグは原始時代級的古さで笑えませんね、ネット検索ヨロシクゥ!
「あれ?何でこの俺まで海猫の名前まで憶えているんだ?ショーナン…ショーナン…そうなんですよ、川崎さん!…ってもうイイか!クドイにも程がアリストテレスですかね?」
「や、やっぱりそうだったのね、ハチロー!」
「えっ?何が一体どうしたんだって言うんだい、姉さん!“そうなんですよ!”の部分で何かまだ引っ掛かるものが有ったのかい?」(←「まだ言ってる。しつこい!」)
「…じゃなくってさ!その海猫を操る、摩訶不思議な女性って間違いなく紫鶴姉さんだと思うのよ!一番年が上で…そう古利根沼家の長女の…!」
「えーーーーーーーーーっ?と、と言うことは、つ、つまり百合花姉さんは、間違いなく古利根沼家の次女ってことになるよね、この場合!」(←「当たり前のこと、言ってど―すんの?百合姉さん、全然聞いていないみたいなんだけど…。」)
「し、紫鶴姉さん…生きていたんだ!…姉さん、生きていたのね!わ、私…嬉しい!嬉しいわ!本当に…今日までホントに生きていて良かったぁ!何て素敵な奇跡なんでしょう!」
「だ、だとすると百合姉ぇは実際、妹に当たるわけだから、この場合確か次女になるんだよねぇ?統計学上から見てもさ!」(←「まだ言ってんのかよ?さっさと話を進めんかーい!それにさ、クドイようだけど百合姉、全然その話にノッて来ないぜ!」)
「姉さ―ん!お姉さん!百合花はどんなにお姉さんに会いたかったか?私がこうして幸せに暮らせているのも全て紫鶴姉さんのお陰なのよ!あの日、あの時…あの大事件が起きた際に姉さんはこの私を庇って…って言うか、私の身代わりになって…この私を奴らから逃がしてくれたの!それなのに…私ったら…私と来たらこんな所でしょうもない家族構成ばかりに拘っている変な弟と(「えっ?」By平八郎)幸せに甘え過ぎて…何てバカなんだろ、私って…!お姉さん会わせる顔が無いわ!うっ…うっ…!」
そう言うと百合花は両手で顔を覆ったまま、暫くは無言のまま、半ば咽び泣くかのようにしきり『うっ!』を繰り返していた。
「え?あれ?泣いているのかい、姉さん!一体二人の間で何があったのか俺、全く分かんないつーか、想像も付かないんだけど…お、恐らく紫鶴姉さんだってきっと何か事情があったんだと思うよ、百合姉さんにも言えないような…!そう、事情、事情?じじょう…次女?次女ぉ―っ!」(←「どーしてまたそこに戻るかなぁ?さっきスルーされてしまったこと、覚えてないのかよ?」)
百合花は、半ば放心状態でさっきからずーっと小部屋の窓から一点ばかりを見つめては深い溜息をついていた。
「それにしても、あの摩訶不思議な女性が長女の紫鶴姉さんだったとは俺、思いも寄らなかったよ。その上、百合姉が次…!失礼!何で俺って、こうもまぁ“家族構成”ばっかり拘っちゃうのかね!ま、とにかくあれだね!紫鶴姉さんが無事生きていたことが判明しただけでも良しなんじゃない?“収穫有り”ってことじゃないのかな?俺、そう思うけどね!」
「よ、良かな―いッ!良かないのよ!それじゃ私の気が済まないって言うか、申し訳立たないのよ!わ…私があの時、あの時1対100人相手にド派手な喧嘩しなければ…あんなことにはならなかったハズ!せめて1対99ぐらいにしておけばこんな事には…!」(←「それって何か意味あります?“五十歩百歩”より分かり易い例えですけど…!」)
「えーーーーーーーーーっ???」
平八郎は百合花の衝撃的告白と言うか、カミングアウトに度肝を抜かれ、2つの疑問が…?1つは“そんな大勢相手にたった一人で立ち向かったの?”って疑問と、もう1つは“姉さんって元○ンだったの?デニーズ出身?”って話。(←「それってファミレスだよ!レディースの間違いじゃないかな?シリアスな場面でよくボケれるな、平八郎って?ヌウマ、ここ読んでるかい?」)
「あの日の出来事は決して忘れない!イヤ忘れてなるものですか、絶対!姉さんと房総半島に一緒に住んでた時、ほんのちょっとだけヤンチャしちゃって…よせば良いのについ、カッとなって“ハヤテ一族”と名乗る魚人暴歩族の連中と派手にチョメチョメして…!(←「そこ隠すと余計気になるんですけどね!」)終いには千葉県警椿海署の水中警察官数名がやって来て私達全員一網打尽と言うか、敢無く御用!供述調書も一杯書かされたけど、妹だけは『ただその場に居ただけでこの件とは一切無関係です!』って庇ってくれたお陰で私一人だけ何故か埼玉県警深谷ネギ署管内へ強制連行されて…今の主人に紹介され、“お見合い結婚成立”っておかしな展開になってね!小説にしちゃ出来過ぎでしょ?でも姉さんとしては“妹だけは絶対幸せになって欲しい!”って姉さんの方から提案したんだって分かって…ヤダ!私また涙溢れて来ちゃったぁ!ご、ごめんなさい、ハチロー!今は思いっきり泣かせて…!」と言おうとした途端…
「うわーーーーーーーん!」と一際大きな泣き声が部屋内に木霊した!
「もう、美恵子ったらこんな時に泣くなんてお母さん、逆に泣けなくなっちゃったじゃないの!み、美恵子?あれ…?さっきからずーっとおとなしく眠ってたのね!そっか、そっか!…ってことは?」
百合花は自分の事のように泣いてくれた弟の頭を優しく撫で乍ら、彼女自身も零れる涙を一切拭おうともせず、いつまでも膝の上で泣く弟を優しくそして愛おしく見守っていた。
次回もお楽しみに のがみつかさでした!
今日は午前10時より第3回ワクチン接種に行って参ります!多分明日の投稿には支障はないかと思うのですが、もしやらかしたら御免なさい!先に謝っときます!なんかこう緊張しますね!あと10時間後かぁ~!とにかく頑張って覚悟して来ま~す!よく分かりませんが、皆さんも感染には十分気を付けて下さいね!注射こわ~い!