第2話『孤高の戦士!古利根沼平八郎という生き方』の巻
前回のやれやれな作者インタビューは無視してとうとあの男が帰って参りました!スクリーン再デビューならぬネット小説再登場の影の主役、『湖沼』きってのアジシオ・コショー的味のある、それでいて正にお料理にはもって来い的調味料存在の彼!(←「そういう意味でタイトルを付けたわけじゃありません!単なる思い付き?失礼な…これでも作者が夜も寝ないで考えたらしいですよ、ハイ!え?作者の“好きな食べ物は何か”ですって?そりゃもちろん、あ―た!野菜炒めに決まってるじゃないっスか!って…ハ?シマッタ、バレた!)とにかく今回も明るく爽やかに楽しくふざけましょうや、皆の衆!
うわぁ!ちょっとちょっと誰よ、アンタ達?物騒な格好して…え?“ここは鉄板ネタや下ネタネギお断り!”ってどういうこと?おフザケあっての虎穴ざんしょ?え?字が違うって?『湖沼血風録』略して虎穴で何が悪い!ってか、いつからシリアス路線になったのよ?「ちょっと来い!」って一体どこ連れてくの?ナレーターのツッコミ無いと閲覧者さん達から苦情来るよ!ちっ苦情-!なんてね!痛い、痛い、放せ!この野郎!お前ら作者が100円で雇った自警団だな!せめて洒落ぐらい分かれよ!しゃれくらい???(←「だからツッコめ!って言ってのにもう…!」)
平八郎は耳を疑った。
「ウソだ!ウソに決まってる!そんなわけなどあり得る筈が無い!きっと何かの間違いだ!誰かが憂さ晴らしに流した単なる誤報の類であって欲しい!」
と…突然その場で語気を荒げる彼。だが悲しいかな、彼の悲痛な願いも空しくそれは十中八九紛れもない事実であり、変えようにも変えられない運命の悪戯に翻弄され、狼狽えるしかできない古利根沼平八郎。
“『椿海』がこの地から消える?消えて干拓地化され、田園地帯へと生まれ変わる?”
彼は生まれも育ちも生粋の千葉県我孫子市と茨城県取手市との県境に位置する古利根沼にルーツを持つ魚人で在りながらこの湖、そう『椿海』を人一倍、常に意識して生きて来たと言っても過言ではない。一体何を、そしてまたどんなことを思い、彼は万感の願いを込めてこの事実と向き合いつつも彼らしからぬ冷静さを失い、どうしようもない現実を目前に悲しみの涙を流したのか?
「平八郎、そこに座って父さんの話を聞きなさい!」
時に平八郎、御年14歳を迎える早朝卯の刻、午前6時。両親の寝室がある8畳の居間にて無言のまま静かに入室を許され、眠い目を擦り乍もただならぬ異様な気配に何かを悟る彼。
「お前には血肉を分けた2人の姉が居る。いやこの場合、居たと言った方が正しいかも知れぬ。長女の名は『百合花』といい、次女は『紫鶴』という古利根家きっての掛け替えのない娘たちだった。そして更にお前を将来跡取りとしてまた一人の長男坊として分け隔てなく育てて来たことも紛れもない事実であり、今更過去を振り返るためにこの話を始めたわけではない。実のところ、この話だけはお前には絶対話すまいと心に決めて今日まで過ごして来たが、お前が14歳の元服を迎えるに当り、とてもじゃないが隠しきれるほど器の小さい事実ではないと分かり、父さんも悩みに悩んだことは事実だ。そんな矢先に母さんを病で亡くし、男手一つで育て上げたこの私にもやがて死期が迫っているのも持って生まれた宿命故今更どうすることもできない。先日枕元に立った母さんから“真実を闇に葬ることはご先祖様の意思に反します”とのお叱りを受け、意を決して決断するに至ったのだ。」
平八郎にとっては正に衝撃的事実を告げられ、当然の如く身動きすらままならないないくらいの動揺が走り、それにも関わらず母同様病に伏した父親の話は尚も続く。
「あれはまだお前が生まれる遥か昔のこと、私たち夫婦が娘二人と生き別れたのは、2019年人間界で言うところの平成31年9月頃に起きた利根川大洪水のあの日、私たちの乗った水中船が渦に飲まれ、水中深く濁流とともに遠く遠く流され、辿り着いた所がこの古利根沼だった。私も母さんも運良く近くの漁場で助かったものの、娘二人の姿が見当たらず、三日三晩二人して死に物狂いで探すも行方は分からず仕舞い。それでも諦め切れずに日々二人を探すもあてどなく毎日寂しさに苛まれ、夜通し泣き明かした激動の1年を耐え、嬉しくも“お前”と言う宝を再び授かり、父さんたちにとってどれだけ勇気づけられたこか?お前の名前の“平八郎”の由来は“平穏無事な毎日が送れますようにの『平』と未来永劫幸せが続きますようにとの願いを込めて末広がりの『八』を合わせてそう名付けたのだ。父さんも母さんも娘たち二人のことを決して忘れることはできない。いや忘れてはいけないからこそお前にだけは二人以上に分け隔てなく存分に深い愛情を注いで来た。お前にだけは二度とこんな目に遭わせないように時に厳しく躾けることで私たち以上に世の中の苦しみや悲しみを背負う人たちを勇気や正義感を持ってどんな時も救っていける存在になって欲しいとの一念で育てて来た。そしてお前は今私たちの期待以上に立派な若者へと成長しつつある。きっと亡くなった母さんも草葉の陰からお前の成長ぶりを喜びの眼差しで見守ってくれている筈だ。だが平八郎よ、これだけはお前に言ってお…。」
そう言い終わらぬ内に持病の発作が悪化し、言葉に詰まる父の上半身をしっかり両手で支えた平八郎は、透かさず薬を飲ませ、やがて発作が治まると再び掠れた声で父親は最後の力を振り絞りこう、話し始めた。
「平八郎、父さんの最後の願いを聞いてくれ。今後如何なることがあっても決して姉たちの行方を探そうなど思ってはならぬ。いや絶対二人の行方を探してはいけない。これだけは親と言えど同意はできないのだ。それをやれば必ず世の、“幸、不幸のバランス”が崩れ、下手をすれば歴史さえも動かしかねない出来事がきっと起こるだろう!歴史が変われば必ずこの世界を滅ぼそうとする悪夢の惨劇が訪れ、きっとお前やお前の友人関係各位に多大なる影響を及ぼし、全ての魚人の命すら奪う結果が目に見えて来る。二人の我が子の生まれ変わりがお前である以上、もう父とて悲しい犠牲の涙は流しとうない。お前は姉たちの分までずっとずっと長生きして欲しい。ならぬ、ならぬぞ、平八郎!許せ、父の勝手な言い分を…。」
その言葉を残し、平八郎の父は三日後に息を引き取り、48年という魚人にしては大変短か過ぎる生涯を終えた。
やがて二十歳を過ぎ、一人前の大人として立派に成長した平八郎は、以前から頭の中では理解できても父親が最期に残した、不吉極まりない予兆めいた言葉に強い違和感を覚え始めていた。
「父さんが言っていた、“実の姉さんたちの行方を探してはならぬ!”って一体どういう意味なんだ?どうしてもこの俺にはその真意が掴めないと言うか、全く理解できない。父さんの言う通り、例え姉さんたちがあのまま息絶えていたとしても家族である、この俺が弔いをやらずして一体誰が2人の供養をしてあげられるんだ?」
平八郎は常に自問自答しては悩み、傷つき自己嫌悪に陥ると必ず涙が零れた。生前父は一般魚人で在りながら、家族だけが知る並外れた予知能力を兼ね備えていたことも事実であり、彼自身、百発百中の的中率を誇るもそのことを家族に自慢することは一度も無かった。無かったからこそ、そう言った部分が息子にある種良い影響を与え、彼自身も多くを語らない孤高の人柄を育んだと言える。幼くして母を亡くし、その上信頼する父をも病で失った古利根平八郎が昨年の2021年4月に故郷の古利根沼を離れ、手賀沼議員会館の技術要員としてテガヌウマとは2年遅れで前回(第一章/シーズン1)の印旛沼新人研修会に参加する運びとなったのを皆さん覚えているだろうか?その彼が研修期間中に鯉アヤメが働いてた議員宿舎の中年風の厨房調理員の男性から得た情報がこれだった。
“千葉県東部の『椿海』なる湖沼に幼い頃、両親と逸れた二人の姉妹が居るらしい!”
という一見不確かで単なる噂話にしては妙に信憑性の高い情報に平八郎は、殊の外驚きつつもこれ以上ない歓喜の雄叫びを上げ、手賀沼とは全く逆方向にある銚子港行きの水中フェリーに乗船し一路放浪の旅へ向かった古利根沼平八郎。彼にとって目的達成のために手に入れた技術員としての仕事も今後の未来も全て放り投げ、独り真実を確かめるべく旅に出た彼。例えそれが事実無根の徒労の旅に終わろうともしても今の彼にとっては悔いなど微塵も無い。とにかく現状打破の口火を切るべき時の訪れに迷うことなく行動を移した動機はただ一つ。
“俺は俺の意志に従ってただすら後退することなく立ち向かい、生きてゆくだけで
誰もそれを止められないし、止めさせない。今の俺にはそれしか選べないのだ。”
そんな運命を背負ってあの日ヌウマやアヤメと別れた彼の心情を果たして誰が汲み取れたであろう?あともう一息で真相を突き止められると安心しきった矢先、船内で乗客らが大騒ぎしてた衝撃的ニュースは彼にとって計り知れないくらい大きな痛手となった。
次回もお楽しみに のがみつかさでした!
また明日からツライ日常の始まりですね!“くそオミクロンバカ野郎株”に負けず、早期ワクチン接種(第三回)に向け徹底的防疫手段に専念して行きましょう!人間は負けません、ウイルス如き新参者に!