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『湖沼血風録』番外-流離の1匹狼編  作者: のがみつかさ
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第10話『聞きなれぬ名前の主(ぬし)とは一体…?』の巻

「ども!のがみつかさでーす!“流離の一匹狼”こと、古利根沼平八郎の向かうところ必ず何某かのトラブルと申しましょうか、(わざわい)がわざわざ(←「プーッ!ウケた?」)やって来て一触即発の事態が起きちゃう所が正に彼らしいというか、彼ならではの妙技ではないかと思う今日この頃です、ハイ!それと前回まで海猫だったのが今回から海鳥ってどゆこと?それってもしかしてド忘れかいな?こりやあきまへんな!こんなええ加減な描写してからにホンマ…!」「ハイハイ!作者には作者にしか分からない大人の事情ってもんがあるってこと、アンタ知らないの?…ったくグタグタ言ってないでさっさとこの場から退出しましょうね、のがみモドキさん!」「ちょっと待ってよ!警備員さん!私この物語の作者ですよ!や、止めて!首根っこ掴んで…猫じゃあるまいし…!」「出入り禁止ってなってたでしょ前回?モドキのがみさん!」「た、助けてヌウマ!え?今休刊中だって?バカ野郎!早く連載再開しろッつーの!」(←「それよっか名字と名前が逆さになっていることに早く気づけよ!』)

 「オイオイ!ちょっと待ちなって…歓迎されるのに悪い気はしねえけど、ちと大袈裟過ぎねぇか?俺はただその昔生き別れとなった姉さんの居所を探しているだけでアンタら海鳥たちとは何の関わり合いも無いはず…?」

…と平八郎が言い切らぬうちにその男は慌てふためいたように口を挟んで来た。

「有りますとも!…有って当然…無かろう筈など御座いません!遭うべきしてお会いできたと私どもは強く認識しております。それにあなた様こそが私の息子と紫鶴様を探す手がかりとなり得るとお見受けして…」

 すると今度は平八郎の方がすかさず言葉を挟み…

「息子…ってアンタには子供が居たのかい?海鳥の…?」

と訊けば男もその問いに応じて

「ええ、おっしゃる通り…確かに以前“用心棒”として常に行動を共にし、またペット並みに紫鶴様から計り知れない程の寵愛を受け、お世話して頂いてた私の息子が1人…いえ1羽居りました…!」

「姉さんと常に行動を共にしていた?…っていうと正か姉さんの右肩に止まって寄り添ってた1羽の海鳥のことかい?」

 男は平八郎の言葉にゆっくりと頭を縦に振ると同時に終始無言のまま下を向いていた。

 一方の平八郎はこの時心中(しんちゅう)でこう呟いていた。

『そうか、そうだったのか?あの時の海鳥がその後の俺と百合姉ぇとの再会を作ってくれていたとは夢にも思わなかった!』

「有難う、海鳥さん!大分状況が掴めて来た気がするよ!急な申し出で悪いがその息子さんとやらに今すぐこの俺を会わせてくれねぇか?どうしても紫鶴姉さんの居所を突き止めたいんだ!なぁ頼む!協力してくれよ!」

 すると男はすぐさま首を横に振って黙っていた。

「え?どうしてだよ?さっき言ってたじゃないか?この俺に忠誠を誓うって…何で協力できないんだよ?」

「勿論我々皆命を投げうってでもあなた様に協力を惜しまない気持ちで一杯なのですが…実は…?」

「実は…?ってどういうことだい?」

男はまた黙って口を噤み、そしてポロポロと大粒の涙を流し始めた。

「オイ!どうしたんだい?一体何があったんだよ?何でもいいからサ、この俺にその訳を話してくれよ?」

 それでも男は声を押し殺し俯いたまま泣き続け、一切平八郎の質問に答えようとしないが故にその態度に苛立ちを感じ始めた彼は男を責め立てるようについ荒い口調で…ヒートアップ。

「泣いてばかり居たんじゃ何もかも解決しないじゃねぇか?アンタが言った“息子が居た”ってことは、つまりもうこの世には…?」

「平八郎様!後生ですからもうこれ以上父君様を苦しめになるのはお止め下さいませ!ご子息様は追手が紫鶴様を攫おうとした現場でひとり勇敢に敵へと立ち向かいボロボロになり乍らも只管奴らを追ってこの地を離れ行方知れずになられたのです!」

 そう答えたのはリーダー格の男の傍に居た、もう一人の家来と思しき精悍な顔付きの人物であった。

 ただ紫鶴の行方が知りたくて焦燥感に苛まれた平八郎は即座に声を荒げるのを止め、優しく静かな声でこう語り始める。

「悪かった。すまない。そんなつもりじゃなかったんだ!許してくれ!俺にはアンタらを責める気持ちも無ければ咎める資格さえ無いと思っている。言葉が過ぎてしまったこと、感情的になってしまったこと、心から謝りたい。ごめんなさい!」

 この時妖魔化した海鳥たちは誰一人として平八郎を睨む者は居なかった。つまり海鳥たちも平八郎にしてもお互い同じ境遇を背負って生きてきただけにそこは不思議と通じ会える何かが深く介在していたからに過ぎず、その場で即共に手を取り合って姉と息子の海鳥を探したい気持ちで嘘偽りなく双方とも和解が出来た証と言えよう。

 だが一つだけ平八郎にはある疑問が湧いた。それでまた再び海鳥たちに

「追手の正体というか奴らの名前は分かっているのかい?もし分かれば包み隠さず全てこの俺に教えて欲しい!俺は今すぐそいつらを探しにこれから旅を続けていく!また会えるかどうか分からないが、もし奴らに遭えたならアンタの息子さんも含めて必ず救い出してみせる」…と。

 そう伝えるとリーダー格の男と他の海鳥連中は皆申し訳なさそうに固く口を閉ざすものの、唯一1人男性が名乗り出て来た。そう先程リーダーの気持ちを汲み取って庇った若者の姿が…。

「平八郎様!奴らの素性は分かり兼ねますが、ただ1つ気になることが…?実は奴らがここに初めて来た時こう叫んでいたのを私はしっかり覚えています。」

 すると平八郎は、

「どんな小さなことでも良い。包み隠さず全てこの俺に話してくれないか?」

「はい。それは『“ミナカミ ハヤテ ツジカゼ”をここに連れて来い!さもなくばお前ら全て容赦なく攻撃を仕掛ける!』と…

「“ミナカミ ハヤテ ツジカゼ”?誰だよ、それは?今初めて聞いた名前でさっぱり見当もつかねぇや!」

 実の姉紫鶴を探す過酷な旅はここにきて奇しくも暗礁に乗り上げてしまったかの如く幕を閉じることに…ただ1つ救いの手が有るとするならばそれはつまり…

“ミナカミ ハヤテ ツジカゼ”なる人物を死に物狂いで探し出すこと、だだそれだけに尽きる。そう心に決めた平八郎は、擬人化した海鳥たちと固く握手を交わし、ひとり静かにこの地(九十九里浜)を去っていくことに。また海鳥たちもその場で即元の姿に戻り水平線の彼方へと力強く飛び去って行った。       (つづく)


 余談ですが、海猫と海鳥の違いはネット検索情報に因りますとくちばしに違いがあると書いてありました。それと海猫の鳴き声がミャーミャーと猫に似ている所もその違いですし、大きさたるや海猫の方が一回り大きいとの事!ホント知ったかぶりでモノ書いちゃいけませんね!大いに反省してよく調べてから書きたいものです!それとたまに過去の投稿作品にも目を通すようにしたいです!(←「たまにかい?常にやらんか―い!」)

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